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狐に嫁入り~恋愛成就を願ったら、神さまに求婚されました~  作者: 遠野まさみ


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神さまと交際!?(1)



翌日光月は、蒼依に呼ばれて、業後、社食の一角に居た。広々とした空間にライトイエローの椅子とライトグリーンのテーブルが配されたそこには、休憩をしている人も居るし、軽いミーティングをしている人もいた。蒼依が鞄からいくつものタッパーを取り出して、テーブルに並べていく。ふたを開けると、そこにはいろんなお菓子が入っていた。

「そもそも油揚げって揚げたてはぱりぱりしてるでしょ? そこから想像して、パイシートみたいに使えばいいかなって」

まず、最初のタッパーから出てきたのは、お土産でも有名な、パイのようなお菓子だった。油揚げを二等分し、トースターで焼き上げた後にザラメをトッピングしたという。油揚げで作ったとは、一見思えない出来栄えで、光月は蒼依のお菓子作りへの熱量に感心する。蒼依は休日に遊びに行ってカフェに入っても、メニューを見て直ぐに別の調理方法を考えたりする、本当に料理好きな女性だった。

「やっぱり蒼依に聞いて正解だわ~。これ、細長く切って、スティック状にしても食べやすいよね」

「そうね。トッピングはザラメだけじゃなくって、ゴマとか振っても良いし」

「ああ~、あるある!」

一気に村祭りでのイメージが膨らむ。でも、『映え』という意味では、パイだけでは色味が足りない。

「じゃあ、パイに賽の目切りの苺を乗せるのは? カスタードクリームを絞れば接着にもなるし、別で作ったピンクのメレンゲのハートでも載せれば、すごくかわいいと思うんだけど」

「成程~! イイネ!」

次々飛び出す蒼依の発案に、光月はグッと親指を立てて、ただただメモを取るだけである。

「家で作ってみよ。おばあちゃんびっくりしないかな」

「でも、光月のおばあちゃん、既にラスクを作ってるなら、このくらい思いつきそうよ?」

「いや~、こんなカラーリングのことは考えてないんじゃないかな。なんせ塩大福だったし」

光月の言葉に、蒼依はああ、と頷いた。

「その話を聞いて、ラスクを蜂蜜と岩塩で作ってもいいかもしれないと思ったのよ。岩塩使うと材料費高くなっちゃうけど、美味しいから」

次のタッパーからは、はちみつと岩塩の油揚げラスクが出てくる。勧められたので口に運ぶと、はちみつのやさしい甘みと、岩塩の塩気で、永遠にイケるやつだった。

「おいし~。パリパリが好まれるのはポテチが愛されることからも証明されてるし、いや、これもいいねえ……。パイで集客しておいて、甘塩っぽいラスクも売るっていう手か~」

「これだけだと映えないから、やっぱりデコレーションしたパイで集客だね。冷凍庫があるなら、いろんな味のアイスを詰めた、シューアイスも出来るけど……」

「うう~ん、それは屋台では無理だな~」

そうだよね、ボツ案ごめん、と蒼依は笑った。取り敢えず蒼依が負担にならない程度にアイディア出しをしてくれて助かっている。村祭り当日、蒼依に助力を得られるかどうかは分からないので、自分で作れる範囲でしか、メニューのピックアップが出来ない。

「蒼依ほど、うまく出来るかなあ……」

なにせ光月の作る料理は、味は及第点なのだが見栄えが良くなくて、蓮にも食べる気が失せると言われたことがある。お菓子に限って言うと、パウンドケーキの割れ目がきれいじゃなかったり、エッグタルトの焼き目が上手くつかなかったりと、見た目で失敗が多い。

「練習したらいいわ。きっとうまくなるから」

蒼依が励ましてくれるので、そうすることにした。見栄えだけで集客しなければいけないのだ、苦手だとか言ってる場合ではない。

「村祭りでバズらせるんだったら、失敗できないもんね……。頑張る!」

蒼依の励ましもあって、光月も前向きになる。ネットでレシピを探して一人でやるのとは違い、光月には蒼依という心強い味方がいる。ついでにいうと、光月はおだてに弱いので、ちょっと褒められたり、ノせられたりすると、すぐその気になる。だから昨日告白してくれた弧之善に対しても、結局前向きに検討する旨を伝えてしまったし。

(いや~、あれは卑怯! 大体、顔が良すぎる!)

弧之善の美しいかんばせを思い浮かべてしまって、あのイケメンが自分を真正面にとらえ、好きだとか言った現実に赤面する。光月は恋多き女だったが、実ったことがなかったので好意を伝えられただけで舞い上がってしまうのだ。

一方で、恋路を邪魔されてきた恨みは忘れていないから、村祭りで月湧が賑わうようになっていったら、彼にはお務めに励んでもらおうと思っている。

光月がそう思いながら、蒼依に謝意を伝えつつアイディアをメモし終え、帰り支度をする。そのままオフィスの入ったビルをエレベーターで一階まで降りると、ビルの出口にやけに人だかりがしていた。何事だろうと思いつつ玄関口を出ようとすると、その人だかりの中心にいた青年が、光月を呼んだ。

「光月殿。待っていた」

そこに居たのは弧之善たちで、弧之善は長く豊かな銀の髪を一つに結わえ、ラフなTシャツにデニム、という格好になっていた。しかし、服装がカジュアルだからと言って、彼の美貌は霞まない。それに、神秘的な雰囲気も漂わせる銀髪が、シンプルな服装を高級に見せている。(いや実際、高級なのかもしれないけど!)

えっ? 神さま、着替えたってこと? お金持ってたのかな? それに、別に弧之善と会った時にオフィスの場所までは言わなかったのに、なんでここが分かったの?

などという光月の疑問には答えずに、弧之善は迎えに来たのだ、と言って、ニコニコと人だかりから逃れて、光月の目の前に来る。光月は改めてぽっかーん、と背の高い弧之善を仰ぎ見た。

えええ、和装は雅な雰囲気醸し出してて、それはそれでよかったけど、カジュアルな格好も涼し気な面持ちと銀髪のおかげで、おしゃれ最先端に見える。こんなイケメンが目の前に居て、面食いの光月は、ちょっとだけ照れた。その横で、蒼依も驚いて弧之善のことを見ている。

「み、光月、この人はいったい……?」

「竹村さん、こんなイケメンと知り合いだったの!?」

若干弧之善に見とれている風の蒼依と、弧之善を取り巻いていたうちの同じ会社の女子社員が光月に問う。迎えに来た、なんて弧之善が言っちゃったから、それなりに交流のある関係だと思われたんだろう。昨日会ったばっかりだけど、ここは誤魔化す。

「ええと、近所に越してきた、おにーさんだよ」

嘘は言ってない。村の家々の中で光月の家から神社までが一番近いんだし、嘘じゃない。

「家が近所ってだけで、会社まで迎えに来るの?」

「勤労に勤しんでいる許嫁を迎えに来るのは当然であろう?」


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