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狐に嫁入り~恋愛成就を願ったら、神さまに求婚されました~  作者: 遠野まさみ


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神さまと交際!?(4)



光月たちは月湧村に帰って来た。駅から帰る道すがら、家で油揚げのスティックシューを作ってみるための材料を、村唯一の商店で買い求める。丁度、久子の店から帰ってくる蓮と鉢合わせて、蓮にびっくりされた。

「光月じゃん! 誰その人たち! にーちゃんたち、観光客?」

蓮がそう思ってしまっても仕方なかっただろう。なにせ弧之善は美しい銀髪、瑛は狐らしい赤毛のメッシュの入った茶髪、煌は黒髪だが尻尾を結わえるみたいに後ろ髪をひょろりと束ねている。村人らしからぬ身なりを、光月は友達なの、と庇った。

「びっくりしたあ。昨日失恋したって言ってた光月が、もう新しい恋しちゃってんのかと思ったぜ!」

「れ、蓮くん……!!」

そんな好色のつもりは……! そう言おうとした時に、横から弧之善が満面の笑みで口を出した。

「そう見えるか!? 少年! 光月殿の新しい恋の相手だと、そう見えるか!?」

ええっ!? なに子供の誤解に喜んでんの? この人は!?

びっくりして、一瞬、隣町のアーケード街から駅まで繋いだ手があったかかったことを忘れた。弧之善の言葉に蓮が神妙な顔をする。

「いや~、光月ってば次から次へと好きな人が出来るから、にーちゃん、あんまりハマり過ぎない方が良いと思うぜ。俺、光月は単なる面食いなだけなんじゃないかと思ってっから」

蓮くん~~~~~~~!!!

赤っ恥とはこのことだ。光月が羞恥で顔を覆いたくなっている横で、弧之善は張りのある声で応対した。

「そのようなこと。光月殿の心が常に喜びで満ち溢れていた証拠ではないか」

きっぱりと。弧之善はそう、蓮に言った。

ぽかーん、と。

本当にぽかーんと、光月は隣の弧之善を見上げる。弧之善がにこりと光月に笑いかけて、それから蓮に向き直った。

「恋する心は尊い。常にときめき、心が満たされ、相手を想うことが自分の言動にも返る。人の正常な営みだよ、恋は。その心に常に満たされていた光月殿だからこそ、私は光月殿を好きだと思うのだ」

堂々としたその言葉に、蓮が飲み込まれている。しかし。

「そ……っ、それはつまり、弧之善様の所為なんでしょ――――!!!」

光月は恥ずかしいやら怒れるやらで、その場で叫んで家に帰ってしまった。


(……とは言っても)

と、光月は夕方の会話を顧みる。蓮の言葉は確かに的を射ていた。原因が弧之善とはいえ、結局のところ次から次へと恋をしていたのは事実だから。

(恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい~~~~~~!!! 昔っから私だけを好きで居てくれた弧之善様に対して、私の尻軽女っ振り!!! おんなじ土俵で語れないっ!!)

光月はベッドに涙目で突っ伏した。足をバタバタさせて恥ずかしさを蹴散らそうとするが、失敗する。ぱたり悶えるのをやめて手足をだらんとさせると少し冷静になれて、そんなに長い間、どうして光月が良かったのだろうと不思議に思う。

そもそも光月は、蓮の言葉通り男癖の悪い女だ。実ったことはなかったけど、そのどの相手のことも深く知ろうとせずに好きになっている。光月一筋の弧之善とのこの差。彼は光月のことを嫌になったりしなかったのだろうか……。

(振り向きもしなかった相手を、そんなに長い間想っていられるものなの……?)

弧之善の場合、光月が恋愛成就を願うまで光月の前に実体も現わさなかったのだから、振り向けるわけもないのだけれど、それなら尚更、自分の恋を実らせようと、あれより早くに光月の前に姿を現しても良さそうなものなのに。

(……神さま、……か……)

光月が恋愛成就を願わなければ、姿を現せられなかった寂しい神さま。光月だけが、信心の拠り所になっていたのではないだろうか。

(……さみしいね、そんなの……)

月湧村が賑わって、もっと弧之善が光月にとらわれずに生きていけたら良い。恨みをぶつける意図ではなく、生きていく理由をもっといっぱい持った方が、弧之善も幸せだと思うから。

(私なんかより、よっぽどいい子、いっぱいいるよ……)

思考の最後は、やっぱり自信の無さが出てしまった。


その頃の幽世。

「瑛さん! 弧之善様が人間の小娘に求婚って本当ですかっ!!」

新米妖狐の葉子は現世から戻った瑛に噛みつく勢いで問うた。

「葉子。弧之善様に忠義なのは良いですけど、間違ってもことを荒立てないよう注意するんですよ」

「でも、神さまが人間なんかと幸せになれる筈がないじゃないですか!」

葉子の大尊敬する神さまが人間ごときに奪われるのを黙って見ていられない。牙を露わに勢いづく葉子を、瑛がやさしくたしなめる。

「弧之善様にやっと現れた希望の光なんですよ。決して邪魔することのないように」

先輩妖狐にくぎを刺されてしまったけど、葉子は諦めない。

(弧之善様はおやさしいから、人間のちょっとした偽善にお心を奪われてしまったんだわ!)

そうであれば、弧之善に仕える妖狐として弧之善の目を覚まさせてやらなければならない。すべては弧之善の為なのだ。

(見てらっしゃい、人間! 恐れ多くも神さまを騙すということがどんなに罪深いか、骨身に染みるまで教えてあげる!!)

葉子は燃え上がる決意で現世を見つめた。



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