第1章 出会いの調べ
初投稿で、まだまだプロットのような物語ですが感想などいただけたら幸いです。
夜の風が冷たく肌を刺す中、私は森の中をルナと共に歩いていた。白く輝く月が、私たちの足元を薄明るく照らしている。相棒であるルナは、音もなく私の足元をついてきていた。
「この先に村があるわ。ルナ、今日はそこで休むことにしましょう」
ルナは鳴き声一つあげず、ただその大きな金色の瞳で私を見上げた。彼女との旅はもう数年になるけれど、私はいつも彼女の沈黙に救われてきた。過去を語らないルナと、過去を話せない私。ある意味、完璧な相棒だった。
1. 出会い
村に着いたのは真夜中だった。すでに家々の灯りは消え、広場の片隅で焚き火がちらちらと揺れているだけだった。火のそばに人影が見えた。
「こんな夜更けに一人とは珍しいね」
振り返ると、そこには少年がいた。年は私よりも若そうだ。明るい髪と、笑みを浮かべた顔が印象的だった。
「君、旅人かい?」
「そうよ。何か?」
そっけなく返すと、少年は少し困ったような顔をして肩をすくめた。
「いや、ただ興味があってね。君の猫、名前は?」
「ルナよ。それが何?」
彼は焚き火の前に腰を下ろし、私たちをじっと見ていた。何か企んでいる様子はない。ただ、ひたすら無邪気に私とルナを観察しているだけだった。
「僕はアルト。君たちの旅の理由を聞いてもいいかな?」
私は答えず、ルナを抱き上げた。アルトの視線がどこか気になったのだ。
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2. 旅の同行者
翌朝、村を出るとすぐにアルトがまた現れた。
「君たち、どこに行くの?」
「ついてこないで」
「ついて行くよ。君たち、なんだか気になるから」
アルトは明るい声でそう言い、私とルナの後をついてきた。
「どうしてそんなに馴れ馴れしいの?」
「君が何かを隠しているからさ。旅人って普通、もっと喋るものだろう?」
私は心の奥底にある秘密を思い出し、思わず口をつぐんだ。ルナがそっと私の肩を擦る。彼女はいつだって私の気持ちを理解しているようだった。
アルトは無邪気に話し続けたが、私はほとんど返事をしなかった。それでも、彼が私たちを見捨てることはなかった。
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3. 焚き火の夜
その夜、森の中で焚き火を囲んで休むことにした。アルトは木の枝を集めて火をつけ、私はルナを抱きながらその様子を見ていた。
「君、何かに怯えてるんじゃない?」
不意に投げかけられた言葉に、私は息を呑んだ。
「……何が言いたいの?」
「君の目が、何かを恐れているように見えるんだ。それを隠そうとしてる。でも、君の猫は平気そうだね」
アルトはルナを見つめ、微笑んだ。ルナは彼に対して特に敵意を示さなかった。むしろ、彼に興味を持っているように見える。
「私はただの旅人よ。それ以上でも以下でもない」
「そうかな?」
アルトはそれ以上何も言わなかった。焚き火の明かりが揺れる中、私は自分の過去を振り払うように目を閉じた。
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4. 心を開く瞬間
数日間、アルトは私たちに付きまとい続けた。彼の明るさに最初は苛立っていたけれど、次第にその存在が心地よくなっていくのを感じていた。
「ルナって、本当に君のことが好きなんだな」
「彼女は私のすべてよ」
ルナは私の膝の上で眠っていた。その穏やかな姿を見ていると、少しだけ心が軽くなる気がした。アルトは焚き火を見つめながら静かに話し始めた。
「君の旅がどんなものか知らないけど、僕が少しでも手助けできればいいと思ってる」
その言葉に、私は初めてアルトに微笑んだかもしれない。
「あなたは不思議な人ね。普通なら私を怖がるはずなのに」
「怖い? いや、君は怖くなんかないよ」
アルトの言葉とルナの寝息が、私の心の中に微かな温もりをもたらした。