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第1話 異世界転移は突然に

視界が真っ白にぼやけている。

どうやら死んでなかったのか、目を覚ましたみたいだ。

ここは何処だ?病院?

目をしぱしぱ瞬かせて確認する、少しずつ視界が良くなってきて、全貌が見えてきた。

やたらふかふかの布団に寝かされていることに気づいて、それから病院にしては派手な内装だなと思った。

病院じゃないのでは?もしかして本当は死んだ?

身体がいやに重くて、起き上がらずに周りを見渡した。

部屋は中世ヨーロッパのような、アンティーク調の家具が揃っていた。

寝ているベッドにも立派な天蓋がついている。


布団の中を這うようにベッドの端に行くと、足を先に降ろした。

その状態でなんとか上半身を起こしてベッドに座ったような風になると、さっきまで着ていた服ではなく、柔らかい肌感のパジャマを着せられている事に気がついた。

なんかテカテカしていてつるつるしている。


足を地につけると床はふわふわの絨毯で気持ち良かった。

何とか力を入れて立ちあがろうとするも、生まれたての子鹿のようにぷるぷるしてしまって、しまいにはひっくり返ってしまった。

思わずベッドの脇のナイトテーブルを掴んだことでテーブルも一緒にひっくり返って派手な音がする。

慌てて起きあがって高そうなテーブルやランプが壊れてないか確認するも、ベッドにぶつかって大きな音がしただけで床が絨毯なおかげか壊れている様子はなかった。

ふーと安心して胸を撫でおろす。

ひっくり返った拍子に床にぶつけた額がじんじん痛んだ。

死んだ後も痛みって感じるのか。


それとも、


「別に死んだわけじゃないのか?」


親切な誰か(お金持ち)に川を流されているところを見つかって拾われた?

ない頭ではそのくらいの事しか思いつかない。

そしてあの女の子はどうなったんだろう。


「神子様!今の音は一体っ…!起きられたのか!?まさか賊…!??」


考えごとをしていると大きなドアが派手に音を立てて開いた。

よく分からない言葉の羅列を叫びながら入ってきたのは銀髪の美女だった。

長い銀髪と切長の目に青空のような瞳。

特筆すべきは長くて尖った人間のとは違う耳だった。

というか、騎士のような服を着ている。

コスプレのお方?ととりあえず思った。


「あ、あの、テーブルが倒れただけで……へ、へへっ…すみません……」


とりあえず何か言い訳をと思って発言するも、コミュ障が祟って変な笑い声を挟んでしまった。

微笑んでみたつもりだがニチャァって効果音が出た気がする。絶対気持ち悪い顔をしてる。


騎士のコスプレの方は目を丸くして俺を見ると、絨毯に座り込んでる僕に近づいてきた。

俺に視線を合わせるように片膝をつくと俺の髪を触った。


「怪我はないかい?」


「へえっ…!?な、ないです…!!」


また変な声がでた。美女が近くにいて緊張する。

頭をぶつけたけど、ふかふか絨毯のおかげでちょっと痛かっただけだ。

たんこぶとかも出来てないだろう。


「それは良かった。こんなところに座り込んでいてはいけない、身体を冷やしてしまう。ただでさえ君の身体は冷え切っていた。目覚めたなら、食べやすいものと飲み物を用意させるから。一度ベッドに戻れるかい?医者も後で呼ぼう」


「あ、え、あの、……へへっ…」


立ち上がれないなんて恥ずかしくて言えなくてまた気持ち悪い感じで笑ってしまった。

コスプレ美女は首を傾げてしばらく俺の様子を見ると、ああ、と何か思いついたように呟いた。


「まだ身体に力が入らないんだね。そうなら言ってくれればいいのに。大丈夫だよ」


「へ」


コスプレ美女が近づいてきた、と思いきやなんとあっという間に軽々お姫様抱っこされていた。

え、何、これ何の状況????

混乱しているうちに軽々と彼女は俺をベッドの上にぽすんと置いた。


「もう無理しないで少しいい子で待っているんだよ」


俺を降ろしたコスプレ美女は優しく微笑むと俺のあたまをぽんぽんと撫でてからすぐ戻るねと言い残して部屋を出た。

まるで乙女ゲームの騎士、あるいは少女マンガのヒーローのような振る舞いをされて衝撃で言葉を失ってしまった。


いや、マジで今の何????


まず今置かれている状況も全く分からないのに、突然現れた美女(騎士のコスプレ?)に姫抱きされてあげくに頭ポンポンって何?????

なんか訳わからなさと共に羞恥心が溢れ出てくる。

そもそもさっきの俺絶対相当無様だっただろう。

ベッドにぼすんと横になって、枕に顔を埋めて悶絶した。

死んだとしたらこれは新しいタイプの地獄だろうか?


「神子様、大丈夫かい?」


しばらくすると、後ろからさっきの美女の声が聞こえてきた。

食べ物と飲み物を持ってくると言っていたからそれだろう、そう思って頭を上げる。


「ミ°」


と、あまりの衝撃にめちゃくちゃ変な声がでた。

どうやって発音したのかは自分でも分からない。

でも目の前にはさっきの美女に加え、黒い執事服を着た黒髪黒目の美少年と、ふわっとした雰囲気のストベリーブロンドにエメラルドの瞳のきょにゅ…、…の美少女が増えていたからだ。

ただでさえコミュ障なのに、ただでさえ美男美女とは住む世界が違うのに、増えてるッッッ!!!!

思わず唇を噛み締めた。助けて誰か。


「神子様、お目覚めになって、良かったですわ」


ふわふわ美少女がふわふわ笑った。

胸に手を当てて、小首を傾げてあざとい様子で俺を見つめる。

惚れたらどうしてくれるんだ。ってかマジで神子様ってなんだよ。


「あ、あのぅ、み、ミコサマ、ってなんですか…」


ゆっくり起きあがって、勇気を振り絞って聞いてみた。

ちなみにしっかり顔を見る勇気はない。無理。


「それは後でゆっくりご説明致しますわ。とりあえずお食事をお召し上がりになってくださいませ。その間に自己紹介をさせていただきますわ」


ふわふわ美少女がそう言うと、後ろに控えていた執事服美少年が少し前に出た。

よく見たら銀色のお盆に温かな食事が乗っている。


「こちら、トマトと鶏胸肉を柔らかく煮たスープになります。無理に食べ切らなくてよろしいのでゆっくりお召し上がりください。お水もこちらに」


騎士のコスプレの人がキャスターのついたベッドを跨ぐ(恐らくベッド用の)テーブルをからから持ってきて、俺の目の前に固定した。

スープと水を乗せたお盆をそこに執事服が置く。


「あ、ありがとうございます…」


俺がそうお礼を言う間に騎士の人はベッドの脇に椅子を持ってきていて、そこにふわふわ美少女だけ座った。騎士の人、働き者だ。

座ったのはふわふわ美少女だけで、残りの二人は彼女の後ろに控えるように立っている。

なんか威圧感がすごい。


「気にせず食べて下さいな」


ふわふわ美少女にそう言われてスープを口に運んだ。美味しい。

その俺の様子を見ると美少女はふふっと笑ってから口を開いた。


「…、まずは自己紹介を。わたくしはリディア・ミシェル・フォン・リンクス。このリンクス皇国の第一皇女ですわ」


すっげー長い名前。って、え、第一皇女?皇国?


「こちらはレパード卿。アルマ・レパード卿ですわ。皇国の騎士です。そしてこちらはシエラ・クロウ。私専属の執事で明日からは神子様の執事ですわ」


銀髪の美女は騎士で黒髪の美少年は執事?ガチモンの?

頭にはてなを浮かべて混乱していると、皇女様?が微笑む。


「端的に申し上げますと、貴方様は異世界からこちらの世界に転移していらしたのです」


色々衝撃はあったけど、間違いなくその言葉が1番の衝撃だった。


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