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比較的最近更新した短編のまとめ場所

私の断罪に関わった人達を順番に殴り倒していくだけの話

作者: リィズ・ブランディシュカ
掲載日:2023/11/27



 私は乙女ゲームの世界の、悪役令嬢として転生しました。

 けれど、何も悪い事はやっていないのです。

 それなのに、私は「悪事をなした」と決めつけられて、断罪されました。

 後で濡れ衣だと分かったから良いものの、あのままだったら処刑されていたかもしれません。


 だから、私を断罪した人間達を一発くらい、順番に殴っていってもいいですよね?





 ケース1


「私の見た目が邪神の特徴と似ているから、私も悪い人間であると決めつけていましたね」


 目の前で震えているのは、攻略対象の一人。

 ご立派な騎士団の団長。


 けど、内心は小心者で、心配性。

 国の有事に備えるのはいいけれど、時には備えすぎて真実にない罪を思い込み、断罪してしまう。


 彼は私を邪神だと思い込んで、調査していた。


 それだけでなく、強引な取り調べの場を行ったり、私物を勝手にあさったり、部屋に侵入していたり。


 ストーカーみたいね。


 ちょっと気味悪くなってきた。


 気を取り直して。


「一発私に、殴られてください」


 私はそう告げる。


 相手は、つばを飲み込む。


 抵抗するそぶりも、言い訳することもない。


 攻略対象だけあって、潔かったようだ。


 大人しく、目をつぶって、待機。


 私はその騎士団長の頬を平手でスパーンとひっ叩いた。


 思いっきりやったせいか騎士団長は、ふっ飛んでいく。


 反省している人を過剰に痛めつける趣味はないので、彼の分はこれで終了だ。


 それに一つの罪で時間をかけてられない。


 まだまだ後がつっかえてるんだから。








 ケース2


「あなたは私が意地悪をしたと、生徒達に言いふらしましたね」


 次に私の前に現れたのは、ヒロイン。


 前世で乙女ゲームをしていた頃から、性格があれだと思っていたが、この子はちょっと被害妄想が強すぎる。


 とはいえ、汚れた机の隣とか汚されたロッカーの前に、ことごとく、タイミングよく、偶然私があらわれたら、誤解しない方が難しいかもしれない。


 ルート分岐の結果によって、この世界のこのルートの彼女はただの一般市民。


 特に責任のある立場ではないし、ただの女生徒だから、情状酌量の余地はある。


「準備はできていますか?」


 ヒロインはぎゅっと目をつぶって、待機。


 私は先ほどよりは多少弱めに、平手打ちをかました。


 それでも華奢なヒロインは尻もちをついたようだ。


 頬に手を当てるヒロインは、涙目になって「ごっ、ごめんなさい」と、消え入りそうな声でつぶやいた。


 性格の合わない人だけど、これ以上関わる事がないのだから、これくらいで十分だろう。







 ケース3

 

 お次は私が通っていた学校の教師、担任だ。


 攻略対象ではない。


 けれど、私の人生の重要人物。


 彼は不満そうな顔で、私の前に現れた。


「なぜ、俺がこんな事に付き合わなければならないんだ」


 不満そうなのは顔だけでなく、言葉もだった。


 どうやら反省していないようだ。


「あなたは、ひいきにしている女生徒の言い分を鵜呑みにして、一方の話しか聞きませんでしたね」


 ひいきしている、というのはもちろんヒロイン。


 聞いてもらえなかった方の生徒はもちろん悪役令嬢である私。


 担任教師は「それが何だ」という態度で口を開いた。


「疑われるような行動をとる方が悪い。社会は甘くないんだぞ。お前は普段から態度が悪すぎるんだ。不愛想で、笑いもしない。濡れ衣を着せられて当然だ!」


 人を導く者にあるまじき考え方。


 彼の言う事は真実であるが、だからといってそれがまかり通ってしまえば、世の中には理不尽な目に遭う人だらけになってしまう。


 のちの被害者を出さないためにも、一発かましておかなければ。


「人間性をいちから築きなおしてください」


 私は拳を作って、彼を思い切り殴りつけた。


 彼は「ぐはっ」と言って、後ろに倒れる。


 倒れた時に頭をぶつけたのか、気絶してしまったようだ。


 同情すべき点はない。








 ケース4


 次に現れたのは、警察官。


 自分の昇進の為に、証拠を偽造して、私が大罪を犯しているとでっちあげた。


 この人のせいで、私は邪神復活の片棒をかついた罪で処刑されるところだった(結局、乙女ゲームのラスボス邪神復活は、他の人がやっていた)。


 話はそれるけど、


 ゲームの中の悪役令嬢はよくそんな事したわね。悪の組織とつるんで、邪神復活の手助けをするだなんて。


 ヒロインをぎゃふんと言わせるためだけに、大勢の人を危険にさらすなんて、私には考えられない。


 きっとストレスに耐性のない子だったのね。


 あの子、家族や使用人や友人からものすごく甘やかされて育ったから。


 もちろんこの私は、そんな風にならないように、自分でできる事は自分でやってきたけど。


「あなたは自分の私欲のために、一人の罪なき人間を陥れようとしましたね」

「俺にこんな事をして、どうなるか分かっているのか。俺は有名なハートランド家の息子だぞ」


 コネで警察になった彼は、自分の家の名前を絶対的な物だと思っている。


 今まで、その名前を出して思い通りにならなかった事などないのだろう。


 まさか断罪されるとは思っていなかったようだ。


 それどころか、相手にし返してやろうとすら思っていそう。


 しかし、今回は違う。


 そんな事はできないだろう。


 なにせ、国の王子がこの場を与えてくれたのだから。


 その場から逃げようとした警察官、ではなく警察官だったものは制止された。


 周囲に待機していた者達が、彼を羽交い絞めにしたからだ。


 王子がこちらに与えてくれた兵士達が役に立ったようだ。


 私は逃げ出した彼に、近づいて拳を作った。


「殴っても反省しなさそうだけれど、私の心の整理のために殴らせてもらうわ」


 狙ったのは顔のど真ん中。


 警察官だったものは、鼻血をだして白目をむきながら、別の場所へ運ばれていった。


 床に歯が一つ転がっていたが、特に心配などしなかった。







 ケース5


 次は、両親だ。


「親に暴力をふるうなんて、最低だぞ! 何を考えているんだ!」

「そうよ! 苦労して育ててあげたのに!」


 彼等は一人の少女を、監禁し、勉強ができるまで閉じ込め続けた。


 しかも、思い通りにいかなければ、殴る蹴るなどの暴力を繰り返す。


 食事は三日に一度、残飯を与えるだけ。


 これは立派な虐待だ。


 おかしいわね。


 原作の悪役令嬢は、甘やかされていたのに。


 だからずっと抱いていた疑問を解消するためにも、この場に連れてきた。


「気味が悪い。お前はやはり人の子じゃないんだろ!」

「子供の頃からおかしかったもの! 邪神だと思って何が悪いの!?」


 連れてこられた両親はそんな事を叫び続けている。


 聞くに堪えないが、聞けて良かった。


 やっと本音が聞けたからだ。


 やはりそういう事だったのね。


 前々から、そうではないかと、うすうす思っていたけど。


 前世の記憶がある弊害で、幼い頃から大人びた子供だったもの。


 さて、どうしようかしら。


 彼等からみたら、私は子供を奪った犯人なのだし。


 悩んだ末、私は両親を模した人形を持ってきて、殴りつけた。


 ボロボロになっているそれは、日ごろから同じことを繰り返していたせいだろう。


 最後のとどめを刺されたのか、やぶれて中身の綿が飛び出している。


 両親達が青ざめる。


 けれど安心してほしい、彼等自身にはそんな野蛮な事はしないから。


「貴方達は、貴方達の言う通りのおかしな娘に殴られて死にました。だからどこでもいいので、視界に映らないどこかに行って消えてください」


 控えていた者達が両親を連れて、どこかへ。


 きっともう、会う事はないだろう。


 彼等は、そんな事をした私を最後まで気味悪がっていた。


 関係の修繕は不可能らしい。


「ふんっ、ロクでもない娘だったな」

「これで顔を見ずにすむと思うとせいせいするわ」


 邪神の生まれ変わりだなんだのと吹聴してまわった罪は、大目に見ておくとしよう。


 向こうにはなくとも、私の中には身内に対する情があったようだ。








 全ての断罪を終えた私は、王子に会って礼を述べる。


「ありがとうございました。これでけじめをつけられました」

「君が前に進む手助けができたならよかった」


 彼は攻略対象の一人で、ヒロインとくっつく可能性のあった人間。


 私が通っていた学園にも、短期間だけど通っていた人だ。


 そして、唯一私の味方になってくれた人。


 処刑台の前に連れてこられた私に、手を差し伸べてくれた人。


 彼がいなかったら、私は今この世にいないだろう。


「これからどうするんだい?」

「分かりません。心にぽっかり穴があいた気分で。当面は無気力になってしまうかもしれませんね」

「だったら」


 王子は、少しだけためらいながら述べた。


「王宮に仕事を用意するから就職してみないかな?」

「考えさせてもらいます。邪神だと言われていた人間を受け入れたとなると、王子様の評判もあがりますしね」

「そういう意味で言ったわけではないんだけどね」


 困ったように頬を書く王子に、真意を訪ねる勇気はなかった。


 私はあまりにも多くの人間の悪意にさらされすぎた。


 誰かに期待する事に疲れてしまったのだ。







 王子に背を向けて、その場から去る時、声がかかった。


「これまで苦しい思いをしてきた分、これからは幸せに生きられる事を願っているよ」


 あたたかい声音だった。


 その言葉に裏はなく、善意しか感じられなかった。


「ありがとうございます。ーー本当に」


 断罪を終えた後、私の人生は本当の意味でここから始まるのかもしれない。


 王子の誘いを前向きに考えてもいいような気が、少しだけしてくる。


 そう思うと少しだけ、未来に希望が持てる気がした。



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