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夢に推しが出て来た話

作者: 雛北

恋人が流行病に罹り、付き合ってから初めて丸2週間会えない事が確定したその夜。

推しがついに夢に出現した。


私の好みは、今流行りの

”色白・細身・中性的もしくは涼やかな美顔”

とはかなり離れている。

男らしい眉、髭か強めのパーマ、黒髪、がっしりとした身体つき、浅黒いくらいの肌。

耳にピアスが光っていたら完璧。


私の推しはそんな欲張り条件をほぼ満たす、大人気のバンドマンだ。

TVでしか見たことがない。

ちなみにライブはようやく初当選したので、今度参戦予定。


そんな彼が、夢に出て来た。


もうこの時点で発狂ものである。


寝る前にSNSで顔を拝んだわけでもなく、曲を聴いて悶えてもいなかった。

まして枕の下に写真なんて入れていないのに、何故だろう?

恋人に会えないから励ましてくれたのか、と考えるにはなかなか刺激的な夢だった。


覚えている限り、書いてみる。





海岸で、私は海を眺めていた。


海の反対側は壁だったので、恐らく堤防のような場所。

波が出来ては崩れ、白く泡立つのを立ち尽くして眺めていた。


人もまばらで、数人が同じ場所に居て喋ったりしているのを聞き流す。

時折私の友人や後輩が近づいて来て、何かたわいもないことを話して、また去って行く。


また一人、高校からの友人と喋っていた時、

ふと彼がやって来た。


あまりにふわりと現れたから、気付けば黒々とした大きく気怠げな瞳と、顎髭と、光るピアスしか目に映らなかった。

急に近い。


気付けば友人は居らず、彼が目の前に居るばかりだった。


彼と何かを話した記憶はない。

ただ、その場での私と彼の関係性は、恋人だった。

静かで、私だけを見る眼差しと取り巻く空気感がそれを物語っていた。


彼はただ、おもむろに手を伸ばして、私の顔を包み込んだ。

心臓が飛び出しそうだ。

と思っていたら、その彫りが深い顔が近づいて、私にキスをした。


気恥ずかしさに負けて、私は少し顔をずらしキスが頬にくるように仕向けた。

髭が頬に当たるざらりとした感触。

何度かそれを繰り返したら、焦れた彼がその気怠げな目をスッと細めて、手で顎を持ち上げ、掠めるくらい軽く唇にキスを落とした。


冷たい唇。薄くて形が良くて、冷たい。


手で顎を捕らえられたまま、

格好いい人はキスまで格好いいんだな、

なんてしょうもない事を思ってしまう。

ちなみに、目の前の彼が格好良すぎて、目を閉じた記憶が一切無い。

このキスの間、ガン見である。


もう一度、そのままキスを受けた。

その薄くて冷たい唇が近づいて来て、そっと触れて離れていく。

波が砕ける音を背にして。


どこか魂が抜けたようになっている私の手を握って歩き出す時、彼はふと思い付いたように、握っているのと反対の手をポケットに突っ込んで、

「ほら」

と何かを放って寄越した。


ガムでも投げるかのように、無造作にこちらに投げられた物が、空中で光を反射して、形が見えた。


ダイヤの付いた指輪。


慌ててキャッチして見上げると、彼は照れ臭そうに私から指輪を取り上げて、私の薬指を持ち上げ指輪をはめてくれた。

サイズはぴったりだった。


そしていつの間にか、私の手にも男物の指輪があった。


照れて避けようとする彼の手を掴んで、その少し節張って長い指に指輪を押し込む。

シンプルでゴツゴツとした指輪は、彼によく似合った。


ぶわりと嬉しさがこみ上げて、周りの目も気にせず、今度は私からキスをした。


ちょっと邪険にあしらいながら、彼は仕方なさそうに唇の端を上げて笑った。






夢は以上である。


目覚めての感想:ファンサが過ぎる。


起きてからも動悸が止まらない。

私の妄想ついにここまで極まったのか…とは思うが、夢という視覚的情報まで付いてくるのは中々どうして高度な技術と呼べそうである。


恋人に会えない連休明けの2週間など、もうどうとでもなりそうだ。


これは嫉妬深い我が恋人には内緒の、幸せな夢の記録である。

夢日記は、書くと現実との境目が分からなくなるから駄目だと言うが、こんなに幸せな夢なら別に良かろうと書き殴った次第。

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