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第七話 開戦

 前回の襲撃からずいぶんと間が空いた。

 どうやら商人一派は生半可な襲撃では埒があかないと悟ったようだ。


 ――当たり前だろ。あっちは魔王討伐を頼まれてんだぞ。強いに決まってんだろ。

 

 俺がしばらく人目を避けて地下暮らしをしていると、商人が再び襲撃を持ちかけてきた。

 曰く

「十分な人数を用意した」

 と、

 更に奥の手を出すように決めたのか、俺にも変化を求めてきた。

「強くなりたくありませんか? 人間を越えた強さを手に入れませんか」

 詳しく聞くと、さるお方がその胡散臭い強さを授けてくれるとか。


 ――来た。

 ようやく真のボスのお出ましだ。

 俺は答える。

「いいぞ。そいつはいい。どんな手段でもいいから強くなって、あの野郎をぶっ殺してやる」

 俺の言葉に商人がにんまりと笑う。


 ――さあて、どんな奴が出てくるのやら。



     ■     ■     ■



 とある夜。


 いきなり商人が訪ねて来て、ボスの居る場所へ案内したいと申し出てきた。

 

 これは困った。

 王都で蛇蠍の如く嫌われ、孤立している俺には味方が一人も居ない。

 ボスの居場所が分かっても、誰にも援軍を頼めないのだ。


 まあ、もし居たとしても見張りがいるので接触は難しいが。


 夜、いきなり訪ねて来たという事は、商人は商人でそこら辺を警戒しているのだろう。


 ――ふむ。

 まあ、いいさ。

 孤立するために打った芝居のお陰で、潜入捜査が出来てるんだからな。


 ――とりあえず、ボスの面を拝んでから考えよう。

「やっぱり強くなるのは考えさせてくれ」

 なんて言って引き延ばしてもいいしな。そんで一旦帰って、恥を忍んでミミたちに伝えて……。

 無理か。

 

 揺れる馬車の中でそんな事を考えているうちに、馬車は目的地に着いた。


 鬱陶しい夜。

 そんな事を思ったのは初めてだ。夏の蒸し暑い夜とはまた違う異様な空気。

 目指す朽ちた屋敷を見た途端、異形の何かが中に居るのが分かる。

 

 ホールに入るとキチキチに人が詰まっていた。

 正確には人に化けた魔族が五十人近く、綺麗に並んで突っ立っている。

 そして一番奥には、見たまんま角の生えた魔族が頬杖を付いて豪奢な椅子に座っていた。


 ――ボスのお出ましか。あんまり強そうには見えねえな。


 俺は商人に促されて、前に案内される。

 商人が手を向けて、ボスを紹介した。

「こちら、ガウズ様でございます。魔王軍では策略や兵士の肉体強化研究の役目を果たしておられる方です」


 ――ほほう、いわゆる頭脳派って奴か。

 でも、役職名が無いって事は下っ端なんだろうな。 

 

 紹介が終わるとボスが頬杖を付いたまま、気だるげに喋り出す。

「強くなりたいというのは、お前か」

「ああ」

 俺が答えると顔から何から全身、濃い紫色のボスは溜息を吐いた。

「まったく……。何度、私の手を煩わせれば気が済むのだ。おい、あれを持ってこい」

 ボスがそう指示すると奥からくぐもった声と、何やら暴れているような音が聞こえてくる。

 奥から屈強な魔族に連れられて来たのは、男か女か分からないが、ガキだった。


 ――これは予想外だぜ。

 

 ボスが立ち上がり、何かを唱えると足下に魔法陣が現れる。

 そして手下の魔族はその中にガキを横たえた。

 魔法陣に入れられた途端、ガキは動かなくなった。だが、目は必死に見開き、拒否の相を顔に映している。

 ボスはグニャグニャにひん曲がった短剣を俺に渡すとこう言った。

「刺せ。これでお前もあいつらと同じく魔族の仲間入りだ」


 ――あいつら?


 俺は並んで立っている魔族を見る。どいつもこいつも表情が無い。


 ――そういうことかよ。


 つまり魔族が人間に化けているのではなく、人が魔族になっている。

 誰かが強さを欲して魔族になるたびに子供が一人、犠牲になっているのだ。


 ――ふざけんじゃねえぞ。


 もう逃げる事は出来ない。自分だけならまだしもこのガキを置いて行くことは出来ない。


 俺は戦うことに決めた。




 決めたら決めたで気分が良かった。

 おそらく狂戦士ってのはそういうもんなのだろう。


「おい、ガウズ」

「ん?」

 俺の呼び捨てにボスであるガウズが怪訝な表情を向ける。

「お前、死相が出ているぞ」

 そう言って、俺は左右の剣を引き抜きざまにガウズの首を切り落とした。


 ――さあ、楽しい楽しい戦いの始まりだ。

ありがとうございます。人生初の評価をいただきましたよう! 鯛、ヒラメ! 鯛、ヒラメ!

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