第四話 崩壊
話はハンス追放後に戻る。
追放した後は簡単だ。
王家ご指名の依頼が来る前に、残った四人で適当な依頼を失敗しまくる。
そして
「ハンスに戻ってもらおう」
と、提案するパーティーメンバーをギルドにいる大勢の冒険者の前で罵倒。
「ああっ! あの役立たずに頭を下げて戻って貰おうってか。フザケんなよ」
やら
「俺は認めねえ。あの寄生虫を俺は絶対に認めねえ! 俺たちがうまく行かないのも全部アイツのせいだ」
などと喚く。
――演技とはいえ、ハンスを腐すのは心が痛いぜ。
そのうちに失敗続きの俺たち黒き鷹は特級冒険者から降格し、金級、さらには銀級冒険者まで落ちた。
落ちぶれた黒き鷹は笑い者となる。まあ、嘲笑はほとんど俺にだったが。
銀級維持も難しくなると、いよいよパーティーを脱退するメンバーが出始めた。
――ようやくかよ、遅いんだよ。金級に落ちた時点で俺を見限れっての。
まず僧侶のミミが出ていった。ヒーラーなんて引く手数多。貴重な職だ。それこそ何故しばらくの間、我慢していたのか分からない。
パーティーの重要職が抜けると後は早い。盾役のガースン、魔術師のカリアの順に抜けた。
パーティーを抜けた奴らにはもう、死相は浮かんでいなかった。
俺は仕上げに向う。
一人になった俺は酒場やギルドに顔を出しては脱退したメンバーの事を本人の居ないところで口汚く罵った。
そのうち、喚いていると
「うるせえぞ。馬鹿はお前だろ、ブラッド!」
などと俺が罵倒されるようになった。
――しめしめ。
これでパーティー崩壊計画は完了。
■ ■ ■
パーティー崩壊計画立案の経緯はこうだ。
仲間に死相が浮かんだままパーティーを続行した場合、結末として考えられる可能性は二つ。
リーダーの俺がヘマをしてパーティーメンバーを死に追いやる。
まだ、これは良い方だ。
最悪な事態はパーティーメンバーが敵となって俺に殺される事だ。
考えすぎではあるが、ありえない話ではない。今まで死相は敵限定だったからだ。
なら最悪の事態を回避するために、俺が取るべき行動はどうあるべきか。
俺は二つの案を考慮した。
一つ目の案は、俺だけがパーティーを抜ける。
これは良い案だと思った。
しかし脱退後、死相の浮かんだ黒き鷹が全滅しないとは限らない。抜けた後に死相が消えなかったら手の打ちようがない。
それに今まで味方に死相が出た事など無かったのだ。意味が分からないうちは下手に動けない。
二つ目の案は、死相の事をみんなに打ち明けて解散、もしくは降格してもらう。
俺は今まで死相の事をパーティーメンバーに話してこなかった。
これが狂戦士のスキルなのか、別なのか。どういう原理で働いているのか分からなかったからだ。
これを打ち明けて受ける依頼の難易度を下げる。
無難な案だと思ったが、実行するとどうなるのか。
まず、王家に依頼を受けない理由を述べなければならない。
「敵に死相が浮かんでません。勝てるかどうか分からないので、やりたくありません」
そう申し開きをしなければならない。
だが、相手は国家を揺るがす災害モンスター。依頼拒否など言語道断。いくつかある特級パーティーの手が空いてなければ兵士などが派遣され、大勢が死ぬ。
打ち明けづらい点がもう一つある。
敵に死相無しで勝てているのも質が悪い。
つまり死相が無い、イコール負け確定ではないのだ。
この精度ではパーティーメンバーに話したところで意味がない。
メンバーたちは俺と違って冒険者としての覚悟とプライドがある。平和の為、民の為なら己の命を犠牲にすることも厭わない。
「勝てる可能性があるならやろう。やるべきだ」
そんな奴らだ。
対して、俺はパーティーメンバーが一人でも欠ける事態も嫌なのである。
軟弱者だと言いたければ言えばいい。
ハンスに退職金を渡さなかった事や、脱退メンバーを口汚く罵ったのにも理由がある。
要するに他の冒険者たちやギルドメンバーのヘイトを俺に集中させる為だ。
「馬鹿なリーダーだから、あのパーティーは解散した」
となれば他のメンバーは再就職をしやすい。最初にハンスの悪い噂を流したが、それもやがてデマだったと思われるだろう。
――そういやハンスは無事、故郷へ帰ってシャーリーから金を受け取ったとか。そいつは退職金だぜ。大切に使えよ。
俺への悪評はどうするのかって? 俺はもう冒険者を辞めるつもりなんだ。だからどんな悪評でも屁でもねえ。
アイツ等と違って俺には冒険者としての覚悟なんてありゃしないのさ。
今後は王都を離れて静かに暮らすよ。
そんなこんなで、今まで貯めた金を使って雪が溶けるまでの三ヶ月ほど、ダラダラしながら王都を離れる準備をしていると、とある情報が耳に入ってきた。
お読みいただき喜んでおります。




