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カーピクシー(車妖精)

作者: はやまなつお

どうにも車の運転が苦手なA、大阪の23歳男。

Aは、苦手意識を抑えて、強引に取ろうと、2週間の合宿免許に申し込み、鳥取県へ。


学科は簡単にクリア、問題は実技。

教習所内で指導員が手本を見せて、学生がやってみる。


どうにも手こずる。

手と足を使って運転が難しい。

なぜ手だけで操作できるようにしないのか?

車高が低く感じる。恐怖感で呼吸が早くなる。


指導員は、教えてお金をもらう立場なのに、

偉そうにして態度が悪い者が多い。

Aは、不正に対しては戦う主義なので朝日新聞への封筒に

状況を書いて送っていた。


同室の他人の3人は順調に進めて、あと1日で終了。

しかしAは外での運転が下手過ぎて4日も遅れていた。


信号がややこしい。

初めての道では、どこに位置取りすればいいか迷う。

他の人がなぜ運転できるのか不思議だ。


人間は箱に入って時速60キロ出す感覚になるのは不可能。

おかしな洗脳にかからないとできないのでは。


どうやら自分は車の運転はできない。

他の連中は出来てる。どっちがおかしいのか?


自動車教習14日目。

本当なら最終日。

外でのAの運転は下手過ぎて指導員は失格を押し続けている。

合格が貰えればその時点で終了だが。


毎回、指導員は別人が担当する。どういう理由か知らないが。

今回は明らかに態度が悪い。命令口調。

目つきの悪い40歳ぐらいの太ったブルドッグ男。


ゆっくりした下手な運転なので、横で「チッ!」と舌打ち。

「嫌がらせしたらあかん!」「してないですよ」

「どこ行く気や、車線変更やろ、まだ道覚えてへんのか?」

途中で運転を指導員が代わって行い、道の端に停める。


「あんたな、ええかげんにせえよ、アメとムチって知ってるやろ、

ムチくらわさんとわからんのか?」


「ここで降りるわ、あんた異常や、舌打ちしやがって。チンピラか?

成績表返してもらうわ、事務所にあんたが言ったこと報告しとくから」


「なんやと、コラ!待て!」

つかみかかってきたので、手刀でさばいてガン!と殴った。


こういう手合いが大阪は多い。だから幼少から空手を習ってる。

マジメは弱いと思うのか、Aは、やたらと不良に絡まれる。

そういう敵は遠慮なく頭を打つことにしている。


そのチンピラ指導員は一度クタッと倒れて。


顔の全面に、ネズミが出てきた。

凶暴な毛むくじゃらで歯をむきだしたネズミの顔。

額に黒い石。頭突き用?


私はドアを開けて外へ。成績表は持っていく暇は無い。


「グギャー!」叫び声を上げて、四つん這いでネズミ男がすばやく接近。

顔の全面がネズミの鼻先のように尖って牙が生えている。


犬のように飛びかかって噛み付こうとする。

Aは相手の武器、鼻先を殴った。

ひるむ相手の腕を取って関節で、倒す。

そして相手の後頭部を叩く。


また気を失ったらしく静かになる。

ネズミの顔はそのまま変わっていない。


Aは成績表を車からとって、歩き、バス停を見つけて

地図帳で位置を確認、40分歩いて元のホテルへ。


次の日も教習所に行った。

しかしあの指導員のことは聞かれなかった。

普通に他の指導員が外でのテストを行った。


だがあれからAの方に変化があった。

車を運転している者の顔が動物に見える。

ほとんどは顔の上。

剥製をかぶっているように見える。


中にはすっかり全部変わっている者も。

犬、猫、蛇、カラス、猿など本人の気性によって、

そういう物の怪にとりつかれているらしい。

運転中は。スピード狂はハイエナが多い。


やはり普通の人間の感覚では車の運転は不可能。

できるのはモノノケにつかれて別のものに変わった物だけ。


Aは1週間遅れで外でのテストにOKをもらった。

運転免許を取ってもすぐには運転せずに、できる人に

教えてもらうように、と言い渡されて。

その指導員は年取ったオランウータンだった。


大阪に戻ったAは門真試験場で免許を受け取った。

しかし結局車の運転は無理、と判断して買わなかった。

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