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第一話 期間限定の異世界転移

初めて小説を書き始めてから今作で2作目となります。つたない文章ですが、最後までお読み頂けると幸いです。また、お手数ですが感想など頂けると嬉しいです。

俺の名前は田中雄一。高校二年生だ。現在トイレの中にいる。

一時限目の授業が終わってまだ眠気が覚めやらぬ状態で男子トイレの中で一息ついている所だ。

人混みがあまり好きじゃない俺にとってここは重要な休息の場である。

便座の上に座りながらスマホいじっていると誰かの大声が聞こえてきた。

「勇者様――――――――っ!」

女性の声だ。

どこのクラスの女子だよ。こんなこっ恥ずかしいセリフを校内で叫ぶやつは。

そんな事を考えていると急に俺の体が光を放ち始めた。

「なんじゃこりゃあー!」

思わず声が出た。

驚きすぎてスマホが手から離れホールインワンした。

いや、この場合池ポチャの方が正しい表現か。

「あ――っ!俺のスマホ――!」

光は強くなっていき、妙な浮遊感と共に風景がガラッと変わった。

目の前に会ったこともない女性と、あと他にも数人の人がいる。

多分全員知らない人だ。

その女性は金髪の長いストレートの髪で魔法使いが着るようなローブを身にまとっている。

歳は俺を同じくらい。外国人のレイヤーさんかな。

「勇者様来てくださってありがとうございます、私はルシアと言います、時間がありません、はやくそこにいる魔王を倒して下さいお願いします!」

目の前の女の子が出くわすや否や、めっちゃ早口でまくし立てる。

「え?ごめん。早口でよくわかんない!もう一回言って!」

俺は聞き取れなかったのでその女の子に聞き返した。

さっきまでトイレにいてスマホが便器の中に落ちてそれどころじゃない、ってゆーかなんか瞬間移動しちゃってるけど、いろいろそういうのは後回しだ。

「勇者様来てくださってありがとうございます、私はルシアと言います、時間がありません、はやくそこにいる魔王を倒して下さいお願いします!」

またすっごい早口で女の子がまくし立てる。

やっぱり早口だから聞き取れない。

「え?何言ってるかわかんない!もっとゆっくり喋って!」

俺はもう一回女の子に聞き返す。

「とにかく時間が無いんです。あなたには七分間しか時間が無いんです!」

「え?七分?何それ?休み時間の事?」

「休んでる場合じゃないです!!とにかくそこにいる魔王を七分以内に倒して下さい!お願いします!あ、もう一分経っちゃってる!」

七分間しかないとか意味不明な事を言われたがどうやら休み時間の事ではないらしい。

しかも魔王を倒せと仰る。

「いや、俺トイレにスマホ落として魔王とかそれどころじゃないんだけど!!」

ゆるゆるのズボンを直し、チャックを締めながら俺はその女の子に逆切れした。

「勇者様!言ってることがよくわかりませんが、そんなことより世界が危ないんです!とにかく魔王を倒してください!」

「勇者様お願いします!」

今度は女の子ではなく、周囲にいた人の内の一人、若い男が言った。

若い男は鎧と剣を装備したさわやかな青年だ。

いや、俺なんかよりお前の方がよっぽど勇者っぽいだろ!と俺は心の中で叫んだ。

「ふっふっふ、勇者よ、よく来たな、私は魔王メリケン・サックだ」

魔王と名乗る人物が俺に自己紹介をしてくれた。

どっちが苗字でどっちが名前だろう。

魔王の方に目を向けると、体は人型だが顔は狼の様な顔をしてしていた。

狼人間が黒服に黒マントという格好で立っている。

「勇者よ、私はこの世界を支配し、世界を混沌の闇へといざなうために降臨したのだ!我がしもべたちと共に人々に恐怖と絶望を味わわせてくれよう!」

魔王はゆっくりと丁寧に感情を込めて言った。

魔王の言葉はめっちゃ聞き取りやすかった。

「勇者よ、この私が倒せるかな?私には究極の……」

「魔王話長えぞ!」

魔王の話の途中でおっさんが野次を飛ばす。

おっさんは背は低いが重そうな鎧と斧を装備していた。

「勇者様!魔王の話に耳を傾けてはいけません!あからさまな時間稼ぎです!魔王の言葉は無視してさっさと攻撃しちゃって下さい!って、あ、もう四分経っちゃってる―!」

まためっちゃ早口で女の子がまくしたてる。

黙ってれば可愛いんだけどな。

「え?攻撃するってどうやんの?」

魔王を倒すかどうかは別としてとりあえず攻撃方法を聞いてみる。

「勇者様の思うままに攻撃してください!」

別の女性から超アバウトな注文が飛んできた。

その女性は先程の金髪の女の子とは別の女性で、茶色の髪が肩までの長さで伸びており、歳は俺より少し上に見える。

こちらの女性もローブ姿で、何やら魔法少女が持ってそうなステッキを持っている。

「え、ええ―……、思うままにって言われても俺アドリブ弱いんだよね」

「もう、何でも良いですよ!時間があと三分も無いんです!」

早口少女が更に俺を急かす。

「いや、でも魔王まだ今日会ったばっかだし」

「勇者よ。そいつらの言葉に耳を傾ける必要はない。所詮赤の他人なのだ。それよりも私の究極の……」

魔王がそこまで言いかけた所で早口少女に遮られる。

「勇者様―っ!お願いです!何でもしますから!」

「ん?」

何でもする。今そう言ったよね?

俺のやる気スッチが切り替わる音が聞こえた。

「よっしゃ任せとけ!」

俺は早口少女にそう言うと、掌を魔王に向け、こう叫んだ。

「イェクスカリヴァ―!」

数秒間静寂の時が流れた。

数秒、いや、もっと長く感じたかもしれない。

俺の掌は空を切り、突き出した腕は行き場を失っていた。

「勇者様……。どうかされましたか?」

茶色髪の女性が真顔で俺に問いかける。

「え……、いや攻撃したつもりなんだけど」

もちろん魔王はピンピンしている。

俺の掌から閃光が出る様な事も一切ない。

どうやら攻撃方法が違ったらしい。

「勇者様!それでは試しに『フレイム』と唱えてみてください!」

早口少女が早口で言った。

「お、OKわかった。『フレイム』!」

誰もいない方向に炎の渦が巻き起こった。

「すげえ、なんだこりゃ!」

俺は歓喜の声を上げた。

「勇者様!今度はそれを魔王に向けて放って下さい!」

早口少女がその言葉を言い終えた直後、俺は再び体が光を放ち始めた。

「あああああ――――時間切れだぁ―――っ!!」

早口少女が目に涙を浮かべながら悲痛の叫びを上げる。

周りにいるおっさんや青年も顔が青ざめている。

「時間切れ?何それ?」

俺のその言葉を最後に周りの景色は学校の男子トイレに戻った。

スマホは水の中にちゃんとある。見るも無残な姿ではあるが……。

俺は心の中で思った。

あの後あの人達どうなったんだろう。ちゃんと魔王に勝てたのだろうか。

「ま、いっか」

時計に目を向けるとそろそろ次の授業の始業時間だったのでスマホを沼から救出し、俺は教室へ戻った。

最後までお読み頂きありがとうございました。また、多くの小説の中から本作品をご覧頂き大変ありがとうございました。

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