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第五話『彼らの行き先』


 僕が解散を宣言すると、それぞれの場所の人が対応する人を連れて行く。


「黒狂さんと絢斗さんは私たちと共に、冥界で過ごすことになります」

「磔、貴方は私たちと一緒に人里で月の勢力と連絡を取るわよ。武人、貴方も今回のサポートをするなら、人里に来るべきだわ。

 あと……建設関連に覚えのある者は、それぞれの家の確認が終わったら人里に来てちょうだい」


 妖緋ちゃんが黒狂君と絢斗君の二人を引き連れ、志郎君と共に冥界に向かおうとすると、居なくなる前に声をかけようと永琳さんが全員に向かって話しかけた。永琳さんに言われたことに反応するように、磔君と武人君は永琳さんと共に店を出た。


「佐藤……快と言ったかしら? 私はこの世界のアリスよ。貴方は私と一緒に来てもらうわ」

「ア、アリスさんと!?」

「何? なんか不都合でもあんの?」

「いや、別にないけど……」


「蒼、桜とそのお付き共! 貴方達は永遠亭から道具を取ってきて!」

「あら……随分と高圧的な態度ね。蓬莱山 煌耶」


 桜ちゃんと輝夜の娘はそう言って言い争う。僕がそれを割って制止しようとすると、それは輝夜によって止められた。


「無益な争いは止めなさい、煌耶。桜と蒼ね。仲良くしてくれると嬉しいわ」

「……まるで輝夜じゃないみたい」

「そうね。私も……あの人のおかげで、変われたのかしら」


 輝夜はそう言って、少しだけ遠い目をした。


「……おっと、昔のことを思い出してる場合じゃなかったわね。煌耶、桜たちを連れてきて」

「はい、母様。さっきは申し訳なかったわ、こっちよ」


 煌耶はそう言うと、蒼と桜の一団を引き連れて店を出た。


「朔ね。貴方は一時的にこっちの世界で執事をしてもらうわ」

「ええ、よろしくお願いします」

「よろしい。兄さん、挨拶」

「兄さん?」


 朔君はヴラドの存在に戸惑っているみたいだね。それも当然のことか。


「俺はヴラド・スカーレット。お前の世界ではどうか知らないが、俺はこの世界ではレミリアの兄だ。よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 これで朔君も連れて行かれたか。最後に残ったのは……綺美ちゃん、藍烙ちゃん、シルクさん、茜ちゃん、幻真君の5人か。……ウチで暮らすには、ちょっと多いなぁ。


「えー……こいつと暮らさなきゃいけないの……?」

「私だってこいつと一緒に暮らすなんて嫌だ!!」


 僕が考えていると、綺美ちゃんと藍烙ちゃんが揉め始めた。うーん……かといって他に行く場所もないしな……。


「なら、藍烙と茜は紅魔館、綺美は魔法の森にある私の家で生活するといいんだぜ!! 世話はアリスに頼んどくから、な?」


 魔理沙、いつの間に戻ってきたんだ!? いや、それはともかく、確かにそれはいいかもしれないね。


「それで異存ないかな?」

「ええ、私はいいわよ」


 綺美ちゃんの言葉に、藍烙さんはうんうんと頷いた。


「じゃあ、幻真君を拾ってこないと……」

「もう連れてきてるぜ」


 魔理沙、最近気がきくようになってきたな。夫として嬉しいけど、なんだか寂しい気もする……これが親心か?    

 ……多分違うね。


「あれ、霊夢と慧音は?」

「霊夢は博麗神社に帰って行ったぜ? なんか客がいるとか居ないとか……。

 慧音は知らないけど……なんかシルクとやらと話してたな。このままシルクと慧音が一緒に暮らすんじゃないか?」


 ……逆に僕の元に一人も居なくなったか。まあ、いいや。


「綺美が魔法の森に居る間は、私と魔晴はこの家で暮らすんだぜ!! ……あんなことやこんなことも、し放題だぜ?」


 魔理沙はそう言うと、にししっと笑った。……うぅむ、魔理沙は何処で交友関係を間違えたんだ……?

 僕はちょっと後悔しながらも、状況が纏まったことを良しとするのだった。


◇◆◇◆◇


──紅魔館──


「ひ、広い……!?」

「朔、これからしばらくよろしくね。しばらくは対妖怪用の準備と、兵器開発をしてくださっているパチュリー様達のサポートだから」


 朔の言葉に対し、咲夜さも当然でもあるかのように無視し、役割の説明をする。


「はい、分かりました。では、掃除は済ませました?」

「ええ、しばらくの作り置き分の料理も作っておいたわ。貴方は……そうね、大図書館でパチュリー様達のお手伝いをしてくれるかしら?」

「分かりました」


 朔は咲夜の指示に従い、大図書館の扉を開く。


「パチュリー様、失礼します。何かお手伝いできることはあるでしょうか?」

「そうね……藍烙の戦闘データを取りたいから、幻真はそこの空間で軽く模擬戦をしてくれる? 藍烙はなるべく多くの感情を表現して。朔は……見てるだけでいいわよ」

「かしこまりました」

「模擬戦をすればいいんだな?」

「分かったー。それじゃあ、いくよ」


 藍烙はテープで区切られた範囲の中に入ると、そのまま斬りかかる幻真に対して何もしないでニコニコと微笑んでいる。


 幻真の刀が藍烙の体に触れそうになったその瞬間──幻真の攻撃が藍絡のバリアによって防がれた。


「え……え?」

「ほらほら、早く攻撃しないの?」

「くそっ!」


 幻真は藍烙の挑発に乗るように攻撃を繰り返すが、それらは全てバリアによって防がれた。


「な……!?」

「まだまだ、だね〜」

「こんの……!!」


 幻真は怒りのままに、スペルを発動する。


「炎符『勾玉炎弾』!!」

「うぅ……ひどいよ……無抵抗の私にこんなことするなんて……」

「は……? ……え?」

「ふざけんなよっ!!!」


 藍烙は哀しみの感情で吸収したエネルギーを、怒りの感情で放出する。

 それによって、幻真は自分の攻撃をそのまま……否、多少威力が上乗せされた物を受けた。


「うぐっ!」

「オラァッ!!」


 怯んだ幻真に対して、怒りを露わにした藍烙は猛攻を加える。


「カッハッ!」

「はいストーップ」


 パチュリーの言葉によって、藍絡は感情を静めて幻真に手を差し出す。


「ごめん幻真、ちょっとやりすぎちゃった」

「いや……慣れてるから気にしなくていい」


 幻真は普段どんな生活をしているのだろう、と疑問に思う朔であった。


◇◆◇◆◇


──一方その頃、博麗神社──


「恵生さん! いい加減諦めてください!! 貴方の力が必要なんですよ!!」

「わかっ、わかったから呼白ちゃん、耳引っ張んないで! いた! いたたたたた!!」


 霊夢が博麗神社に戻ると、そこにはいつか見た霊斗の客人である10歳ほどの少女に、今回初めて見る青年が耳を引っ張られていた。


「ご無沙汰してます、この世界の霊夢さん。こちらは創刻恵生さん、霊斗さんに言われて参上致しました」


「とりあえず、ゆっくり休むといいわ。貴方達はこのまま私が面倒見るから、とりあえず人里の雷電御礼って居酒屋に向かってくれるかしら?」


 霊夢の言葉に、神谷呼白……即ち、神谷零の娘は頷いた。

 この幻想郷で、霊斗にすら勝るとも劣らない実力を持つ少女。

 そしてもう一人の青年も、同等かもしくはそれ以上の力を持っていることを霊夢は肌で感じ取っていた。


「では、しばらくよろしくお願いします」

「ええ。貴方達の力、頼りにしてるわ」


 彼女たちなら、愛する夫を助けられるだろう。そんな期待を持ってして、霊夢は二人を送り出した。


「──お母様」

「待っていたわ、霊歌。貴方の力が必要なの」


◇◆◇◆◇


──その頃、妖怪の山山奥の神殿──


「……コレは!」


 霊斗と零、神姫は今この世界に来た幾つかの巨大な反応を感じ取った。いくら能力を封じられているとはいえ、全知全能、完全無欠という言葉が似合う彼らにはその巨大な力は長い時を得て敏感に進化した肌によく反応する。


「──霊斗の言ってた、助っ人たちか」

「ああ。今の俺たちにとっての、数少ない希望だ」


◇◆◇◆◇


 人間側に強力な助っ人が集うなか。

 妖怪側も、新たな戦力を確保した。

 ぶつかる思惑。交差する思い。

 全てを乗せて、その時計は時を刻む。


 開戦まで、残り5日。

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