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第一話『プロローグ』


 『遊楽調』と呼ばれる世界にある幻想郷を揺るがす大事件のきっかけは、霊斗が以前滞在していた世界『創世記』の終わり方であった。


 創世記の世界。それは、霊斗がその1兆年を超える長くも一度きりの生涯で、もっとも悔いを残した世界だ。

 創世記の世界にある地球の地表は氷河に覆われ、その氷河から顔を出す山の頂上は常に燃え盛り、人は決して住めない死の星となった。


 なぜ、創世記の世界がそんな風になったのか。

 歴史を遡ると、それは1人の男に起因するものだ。


 博麗神社、101代目神主『博麗封輝』。彼は、才気に満ち溢れた青年であり、霊斗の武器の一つである『触手』を使いこなすほどのものだった。

 霊斗の持つ神剣『霊神剣』と同等の力を持つとされる触手。


 それが、霊斗が封輝を危惧した原因であり、後の二つの幻想郷を崩壊へと導きかねない大事件の発端となる物である。


◇◆◇◆◇

 ──創世記の世界──


 氷河の地下深く。旧地獄よりもさらに地下に存在する『大空洞』と人々が呼ぶ場所に、彼は封印されていた。


 あまりにも大きく、禍々しい力を持つ青年。

 そんな青年に、1人の長身の美女が近寄る。


「哀れな姿よのう、博麗封輝」

「あァ? 貴様……何者だ。この世界でこの場所にたどり着ける男なんて、クソ親父以外にいないハズだが?」


 悪態をつきながらその美女を睨みつける封輝だが、美女はそれを簡単に受け流して返答する。


「何事にも『例外』はあるってことじゃ」

「何の用件でここにきた」

「簡単じゃ。お主の望みを叶えてやろうと思うてな」


 美女のその言葉に、封輝は興味ありげに美女を見つめる。


「教えてやろうぞ。我が名は『ルシファー・ドルイギア』。天使の中で唯一、自分の意思を持つ者じゃ」


 堕天使の名を名乗るその女は、妖しい笑顔を封輝に見せた。


◇◆◇◆◇


 ──時は変わり、遊楽調の世界──


『ああ、海斗、ありがとな』


 通信用陰陽玉。博麗神社で霊夢などが使うそれとは用途が違う陰陽玉に向かって、霊斗は話しかけていた。


 陰陽玉の向こう側にいるのは、霊斗より『博麗封輝の調査』を依頼された青年、博麗海斗。霊斗が信頼を置く人物の中でも、特に信頼されている人物のうちの一人である。


「霊斗様、お話終わりました?」

「ああ。悪いな、時間かけちゃって」


 霊斗は話しかけてきた霊奈に謝ると、空間の狭間から刀を一本抜く。


「どうしたんですか、霊斗様?」

「来る。──伏せろ!!」


 霊斗がそう言った途端。博麗神社が『破壊』された。


◇◆◇◆◇


 破壊された博麗神社は、長く伸びる触手によって急激に修復されていく。


「誰だ……!!」


 激しい憤怒を露わにして博麗神社から高く飛び上がる霊斗に、ついて行くように人影が一つ。


 太陽の下でも臆することなく飛ぶ吸血鬼の姿は、まさしく異質。

 片手に持つ紅い槍の穂先を霊斗に向け、大きく振り被る……が、槍は霊斗の能力によって止められ、体の自由を奪われる。


 体を動かせなくなったことで落下していくヴラドだが、そのまま召喚陣に飲み込まれていった。


「……何だったんだ?」


 霊斗の素朴な疑問で満ちた呟きは、風に吹かれて消えていった。


◇◆◇◆◇


「……ふん。外部存在ともあろうものが、たわいもないのう」

「ケッ……!」


 ルシファーの嘲笑と共に、霊斗に呼ばれていた客人『神谷 零』と『神谷 神姫』は、伝説の鎖グレイプニルに縛り上げられていく。


「なん……なんだ……!!?」

「これから死ぬ貴様には関係のないことよ」

「ァァァアッ!!」

「兄さんっ!!」


 ルシファーは弱った零の手を思いっきり踏み潰した。

 それによって絶叫する零に、神姫は悲痛な叫びを上げる。


 零と神姫がルシファーに捕らえられたのは、ルシファーに敗北したからだ。ルシファーの能力は『例外』になる程度の能力。

 彼女の能力に対抗できるのは、能力の枠を超えているディスくらいのものだ。


 例外になる。その能力は、外部存在すらも勝つことができない。

 外部存在……即ち、クトゥルフの神魔達がなぜこの世界を滅ぼさないのか。その原因が、ルシファーのこの能力だ。


 滅ぼさない、ではなく滅ぼせない。

 そもそも、ルシファーも元は外部存在だ。

 外から仲間と共にこの世界に入ってきた。故に天使でありながら自我を持ち、ゼウスに反逆を起こした。


 外から入ってきながら、ゼウスの配下となった『例外』の人物。彼女は、ゼウスと対立した最初の神カオスの配下である。体は全天使の長に相応しい力の容器としてゼウスに創造され、その魂は混沌の使者。


 こうして、ルシファーは光と闇の二つを支配し、外部存在すらも超越した存在となったのだ。


「さあ……世界終焉(ゲーム)を始めよう。神に作られし創造主への冒涜者達よ」


 彼女はそう言って、不敵に、妖しげに、残虐に笑った。

 彼女の目的はただ一つ。全てをカオスとその子、ガイアへと還すこと。その行為に、意味はないだろう。理由ももはや、彼女にとってはどうでもよかった。

 ただ、原初の神であるカオスとガイアがそれを求めた。それだけがルシファーにとって意味を持つことであり、ルシファーの行動の原動力だった。


「全てを、母なる神、父なる神に捧げます」


 そう言って、彼女は今日も祈りを捧げる。全ては、生み出されたことへの恩返しのために。


◇◆◇◆◇


 この時、世界はもう既に動き始めていたのだろう。

 戦開始まで……残り8日である。

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