佐藤快①
ザッザッという、地面を踏みしめる音が聞こえる。
磔たちをぶちのめしてから時折聞こえるその地面を踏みしめる音は、歩み寄る青年……永遠亭の人造人間、山田コノハの戦闘意欲を否応無しに上昇させる。
「コノハさん! 今日も来ました!」
叫ぶ少年に対してコノハは歩みを止めると、円盤型の斬撃を投げつける。
少年……佐藤快は、背後から迫るそれを拳で打ち砕く。
快の手に装着されているグローブは、若干切り傷が残っているものの快の手そのものには傷はないようだった。
「肉鎧、合格。次」
コノハは単語でそう言うと、その圧倒的な身体能力で快に迫る。
快は突き出された拳を回避すると、その勢いでコノハの腕を起点に投げ飛ばした。
コノハは空中に投げ出されるが、空歩で滞空して円盤型の斬撃を脚から放つ。
快はそれに対して、同じく斬撃を脚から放つ超技術、斬脚で打ち消しあう。
そのまま空歩と縮地を使い、快はコノハに拳を突き出した。
コノハはそれを受け止めると、その状態で快の腕を曲げる。
「ヴッ!?」
「遅い」
快が怯んだその一瞬で、快は地面に叩き落とされた。
◇◆◇◆◇
「はぁ、はあ……」
「おつかれ」
「あり、がとう、ござい、ました、コノハ、さん……」
快は息切れしながらも言葉を紡いだ。
快に缶コーヒーを差し出したコノハはその言葉に頷くと、快の隣に腰を下ろした。
「はぁ、はぁ、はぁ……コノハさん」
「うん?」
「その……このあとって、お暇ですか?」
先に言っておこう。快は決してホモではない。彼には愛すべき妻と娘が彼の幻想郷に居るのだ。
◇◆◇◆◇
「……なんで?」
「えっと……何がですか?」
「僕と、ご飯。なんで?」
永遠亭とは言え、人造人間を完璧に作るにはまだまだ至らなかったようである。
というか、完璧な人造人間を作ってしまうと超技術なんて使うことができない。まだまだ改善、改造の余地はあるようだ。
「えっと……強くなる秘訣を、教えて欲しいからです!」
「強くなる、秘訣?」
コノハがそう聞き返し、快が頷いた。
だが。
聞く相手を間違えているだろう。その場にいた客はみんなそう思った。
コノハは人造人間であり、普通の人間とは違う。脳の構成などが違うのだ。
「強くなる秘訣ー?」
そう言って、二人に対して一人の女が話しかける。
かなり大きな胸。まず快の目に入るのはそれだった。
まず、絶対に手には収まりきらないだろうその大きさは「日本人の理想的な大きさ」を大きく上回る。
だが。
快に見られていることも気にせず、女は会話を続ける。
快は女の顔を見て、絶句した。
自然な色の紅い髪に白い肌がよく映え、その顔を一層引き立たせる。
そう。
その女は、絶世の美少女だったのだ。
◇◆◇◆◇
机に向かい合うように快と女が会話する。
「……んで、何で君は強くなりたい?」
「何でって……強くなりたいから、強くなりたいんです」
「……霊斗も、アホな弟子を持ったもんだね」
そう言って、女はため息をつく。その時放った言葉に反応して、快が体を女に近づけた。
「霊斗さんを知っているんですか!?」
「う〜ん……知っているも何も、私はセンセイの弟子だからね。まあ、2年前に卒業したけど」
「へぇ……!!」
快は話を聞きたそうに、目を爛々と輝かせて女を見た。
「んもう、そんな目で見ないの」
「ぶへっ」
女のデコピンに、快は体を弾き飛ばされた。
「!?!?」
「コノハ……アンタ、本当にコイツ鍛えたの?」
「触り、だけ」
「それにしても基礎がなってないわ。……徹底的にいじめ抜いてあげる」
そう言って、女はニヤリと悪そうな笑みを浮かべた。