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番外編〜新月朔②〜

 新月朔は、今日も朝早く起きると志郎の授業を受ける。紅魔館での業務は「必要ない」ということでリストラされたようだ。


 そもそも、紅魔館には咲夜や露黎など、優秀な元々の業務員が居るのだ。

 そんな露黎は、彼自身も父親であるヴラドから超技術などの授業を受けているのだが。


「……ふむ、なるほど。今日は剣を交えてみようか」

「ハイッ!」


 志郎の言葉に、朔は嬉々として刀を構える。


「あの子……元気ねぇ」

「……露黎。そろそろ、あいつと戦ってみるか?」

「はい、父上」


 朔は知らない。これは、露黎と朔のどちらが強くなれるかという志郎とヴラドの対決であることを。


◇◆◇◆◇


「朔さん!」


 酢酸ではない。決してオルセインでもダーリアでも、ましてやカーミンでもない。細胞を染めることはないのだ。


「これは……?」


 朔は、妖精メイドに手渡された封筒を受け取る。

 かなりの長文で、送ってきた人物は相当マメな人物なのだろう……そう予想していたが、最後の名前の部分を読んで誰が送ってきたのか納得した。


 送り主は朔のこの世界での元同僚にして、ヴラド・スカーレットと十六夜咲夜の息子。十六夜 露黎──又の名を、次代紅魔館当主、ロクロ・スカーレット。


 ちなみに言うと、ヴラドのもう一人の番である美鈴の娘、梓葉(アズハ)・スカーレットは現在武者修行中である。今ごろはこの世界に来た強者(ゲスト)たちを相手に修行しているだろう。


  梓の話はともかく、朔は志郎の許可を得て、その紙を手に紅魔館へと向かった。──果し状と書かれた封筒を握りつぶして。


◇◆◇◆◇


「待ってたぞ。新月朔……いや、朔くん」

「はい。お久しぶりです、露黎さん」


 朔は短く挨拶を終えると、いきなり走りこんでくる露黎に対して構える。

 果し状の内容には、事細かにルールも書いてあった。その中には、スペル、能力の使用禁止というのもある。霊術、妖術は超技術でも使われるため、セーフらしい。


 露黎のナイフと朔の刀が交差する。

 普通であれば重さのある刀が押し勝つのだが、それはなかった。……否、できなかったというべきか。


 超技術、模演。相手と全く同じ動きをする露黎の超技術によって、威力は打ち消しあった。

 朔はこの時点で不利を悟る。

 朔はまだ模演を会得していないのだ。代わりに、かれの強靭な体を活かした超技術は優先的に会得させられている。


 朔の縮地による高速移動からの、正拳突きが露黎に襲いかかる。

 露黎はそれを受け流すと、ナイフに手をかけて朔の勢いを利用して刺そうとした。

 朔はそれに対し、バク転で勢いを殺して露黎のナイフによる攻撃を回避すると、露黎に対して霊力弾を放つ。


 露黎はそれを縮地と空歩でかわすと、後ろ回し蹴りで吹き飛ばした。


「うぐっ……!」


 朔は地面に手をつけてブレーキをかけると、縮地で露黎の顔面を殴った。


「グフッ!」


 露黎はその勢いに吹き飛ばされると、朔はさらに縮地で露黎の体の上にのる。


「うぐぉ!」


 上にいる朔からの衝撃で、露黎は地面に押し付けられた。その顔の横には露黎のナイフが刺さっており、首元には朔の刀が突きつけられていた。


「勝負あり! 勝者、新月朔!」


 いつの間にかレフェリーをしていた美鈴がそう言うと同時に、雷が落ちた。


「な!?」

「この気配は……!!」


 それは、朔が戦ったことのある少女……ルーフェだった。


「……新月朔。前回は後れをとったが、今回はそうはいかまい!」


 ルーフェはそう言うと朔の目の前に現れ、以前のようにナイフをどこからか取り出して朔に向かって斬りつける。

 朔は刀でナイフを防ぐと、その瞬間朔の足元の地面が盛り上がる。


「超技術が一角。地揚」


 ルーフェの力強い踏み込みによる、地面の盛り上がり。朔はそれに対して、バックステップで回避すると刀をルーフェに向けた。


 その瞬間。

 ルーフェの背後から、紅い槍がルーフェを貫いた。


「な……!? 貴様!」


 ルーフェの『肉鎧』という筋肉の鎧の超技術すらも、紅い槍の持ち主……ヴラド・スカーレットは貫通した。


「クッ……! 覚えていろ!」


 ルーフェは表情を歪めてそう言うと、どこかへと消えていった。


「なんだったんでしょう、アレ……」


 その場には、朔の間抜けな疑問だけが残った。

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