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第三十四話『博麗霊斗の消失』


「獣担当! リク!」

「え!? ぼ、僕!?」

「そう! 君だ! これを見たまえ!」


 そう言って、ニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる終作に見せられたのは、狐の少女……安倍桜の画像だ。

 ゆったりとした和服に包まれている中で激しい戦闘をせいで、盗撮のプロである彼らの目にはバッチリと少しセクシーな桃色の下着が映っていた。本当に哀れな少女、桜である。


「なあ、シルク、絢斗」

「ん、どうした主」


 酒を飲みながら、シルクが終作の呼びかけに応える。


「この写真さ……ちょっと考え方を変えると、凄いことに見えないか?」

「え?」

「汗ばんだ体、下半身から滴り落ちる液体、湿った下着……」

「「!!」」「!?」


 左の二つは絢斗とシルク、右はリクである。なんだかんだ言ってリクも思春期、そう言ったことに興味がないわけではない。


「シルク……これを題材にした官能小説を書かないか? もちろん、この写真付きで。アドバイザーとして、絢斗とリクを呼ぼう。まずは、設定作りからだが……」


 とんだ変態どもである。人様のキャラクターで何をする気だ。

 そう思っていると、桜の『下半身の液体』という部分によってか、話題はいつの間にか大人のおもちゃのお話になっていた。もう少しマトモな話題は無いのだろうか。


「何の話をしてるんです?」

「うわぁ! 人肉嗜食者!! お前は帰れ! 俺たちには近寄るな!」


 ハイドが近づいた瞬間、三人は一斉に拒絶した。理由がわからず、リクは顔を傾けている。


「あ、そうだリクくん。いいもの見せてあげるよ」

「行くな、行くなリク!!」


 残念ながら、リクにとってマトモじゃないのは三人の方であった。……その数分後、リクは三人といればよかったと後悔することになる。


◇◆◇◆◇


 ハイドが見せたのは、写真だった。ミディアムレアのステーキ。一見美味しそうにも見える。

 だが、ハイドはそれの内実を知っているからその写真を見せたのだ。


 ハイドは地面に落ちている零の腕を拾うと、皮を剥いで揚げ物(フリット)にしている。

 その姿に、リクは身の危険を感じた。


「そうだリクくん……君、復活するんだよね?」


 リクが後ずさると、それを追うようにハイドが歩み寄る。怖い。


「若い人の肉って普通よりも美味しいんだよね〜」


 その顔はほのかな赤みを帯びている。ハイドも酔っているらしい。何してくれてるんだ、終作。


 リクが後ろを向いて一目散に逃げ出そうとすると、ハイドはリクの目の前に現れた。


「唐揚げにするか、ステーキにするか……あ、サラダもいいな」

「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 もちろん、リクを助けられる人など誰もいなかった。


◇◆◇◆◇


「どうした、リク。何かあったのか?」

「あ、霊斗さん……うん。色々あったよ」

「お、おう……まあ……頑張れ」


 霊斗の言葉に、リクは力なく頷く。

 霊斗はリクがどんな状況に置かれていたのかを把握している。今は桜と磔が終作たちを潰し、ハイドをレヴェルが潰しに行った所だ。


 リクは確かに哀れだ……が、この少年も、もう少し戦える力をつけるべきではないだろうか。そう思っていると偶然、蒼が通りかかった。


 蒼は今回のメンバーの中で、数少ないちゃんと宴会を楽しんでる人型の一人だ。黒狂、活躍など様々な人が楽しんでいるが、その比率は圧倒的に少ない。

 大概の人物は零や神姫、桜に磔、さらには刀哉などのように戦闘に駆り出されるか、シルクや終作、絢斗たちのようにバカなことをしているかの二択だ。


 そう霊斗が考えていると、不意に霊斗の背後の空間が裂け、そこから人型が出てきた。


「おう、久しぶりだな夜桜」

「海斗たちは? 解放軍(プロテスタント)の作戦が成功したことを伝えに来たのだけれど……」

「そんなことよりさ、こいつらを鍛えてやってくれ」


 そう言って、霊斗は夜桜と蒼とリクを闘技場に転移させた。


◇◆◇◆◇


「ふぅ……飲んだ飲んだ」

「あら、おかえり霊斗」


 霊夢が転移で帰ってきた霊斗を迎える。


「今、二日酔いに効くご飯作ってたの。霊斗も手伝ってくれる?」

「おう」


 霊斗はそう言いながら、霊夢に手を回し、後ろから抱きしめた。


「もう……ご飯作るの手伝うだけでいいのに」

「……なあ、霊夢。聞いてくれ」

「……分かったわ、話してちょうだい」

「実はな……俺、もうすぐ行かなくちゃいけない所があるんだ。多分、霊夢にはもう会えなくなる」

「……分かってたわ。私、元博麗の巫女だもの」

「霊夢……」


 霊斗は霊夢の言葉に申し訳なさを感じ、言葉を詰まらせた。


「……霊夢」

「霊斗……」


 二人は、抱きしめ合う。お互いの存在を確かめるように。お互いを惜しむように。

 愛し合う二人は、長く、長く、永く。まるで、永遠にも感じるような一瞬の間────





◇◆◇◆◇






 その日。



 その男は。



 博麗霊斗は。



 その長い生涯の中で。



 ずっと愛し続けた少女と。



 何度も、何度も愛し合った少女と。



 引退した博麗の巫女と。



 何人もの人間を惹きつける、最愛の少女。



 博麗霊夢と。




 最後の────。

















 ────キスをした。


◇◆◇◆◇

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