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第三十一話『あっけない』


 ハイドの戟が、カスミの魔法が、零の剣が、神姫の糸が、呼白の拳が。

 それらが全て、時空神クロックレイフンに向かっていく。


 遊楽調という多重世界の外側、そこに座するカオスにしてアザトース、さらに天之御中主となる全て。

 それを補佐する、十人の神の一人。それが時空神クロックレイフンである。


 クロックレイフンは表層の神との契約によって、タイムリープを起こすことが可能だ。が、しかし。レイフンは世界を移動してしまった。それが彼女の罪であり、それ故に外の世界から追放され、今なお霊歌たちに追われている。


 霊歌の弓矢のような形状の武器を使った攻撃が、レイフンへと迫る。

 レイフンはそれを回避するわけでも防ぐわけでもなく、ただただそこにいた。


 霊歌の攻撃は、ハイドの、カスミの攻撃は、神姫、零、呼白の攻撃は。レイフンに当たることなく、消滅した。


「な……!?」

「こいつ……勝てるんですか!?」

「大丈夫、あと5分で来てくれるハズだから……!!」


 霊歌がそういった途端。世界に裂け目が生じた。


「な……!? なんであなたが!」

「こいつは……!?」

「うふふ、私はレヴェル。よろしくね」


 レヴェルはそう言うと、手に持つ魔杖ゾディアクをレイフンにぶつける。


「な……!? 何が起きている!?」


 その瞬間。初めて一同は、レイフンの焦る姿を目にした。

 レイフンが放つ弾幕は、レヴェルの持つゾディアクに防がれる。


「貴様!! 何者だ!」

「うーん……あなたと同じ、表層の存在の一人だよ」


 レヴェルがそう言って間も無く、レヴェルの背後から一人の人影が現れた。


「ヘーェ。レイフン、私との制約を破ったね?」


 それは、桃色の髪をした裸の少女だった。手に鞭を持って、レイフンに迫る。


「ヒ……ヒィ! アデルさん!」

「話はお仕置きが終わってから聞くよ」


 突然現れた、アデルと呼ばれた少女はそう言うと、レイフン諸共次元の狭間に入っていった。


「……え?」

「ロキさんとの約束は果たしたし、私は戻らなきゃ」


 皆が呆気にとられている中で、ひどく冷静な二人の人物……霊歌とレヴェルはどこかへと消えていった。


「……何が起こってるんだ?」


 そんな虚しい問いは、寒空の中に白い吐息となって儚く消えていった。


◇◆◇◆◇


「なあ霊斗、あいつらは結局何だったんだ?」

「ん? ああ、零はこの世界にあいつがいることを知らないのか」

「あいつ?」


 零が聞き返した直後、霊斗の隣にその男が現れた。


「呼ばれて飛び出て、終始終作じゃじゃじゃじゃーん」


 突然現れた終作がそう言うと、それは背後から現れた二人の創造神に頭を殴られた。


「痛っ……」

「ふざけんな元凶! 私たちの苦労も知らないで!」


 そう言って、ルカは終作の体をぶんぶんと前後に揺らした。


「うわ……待って、吐く吐く吐く!!」

「ギャァァァァ!!」

「何やってんだまったく……」

「楽しいからいいじゃないか」


 霊斗が呆れていると、ルカや終作をフォローするように零が答えた。


「んで、霊斗。どういうことだ? 教えてくれ」

「ああ、そうだな。終作が、ルシファーやクロックレイフンをこの世界に招き入れたんだ。外なる神であるあいつであればそれも可能だ」

「ああ、そうだな。それで、レヴェルは?」

「レヴェルは、外なる神の加護を受けている」


 霊斗が外なる神と言った瞬間、零はギョッとした顔でこちらを見た。


「この世界は、何層にも重なっているんだ。俺たちの動きを決めているのは、外の世界にいる存在……俺の世界を作り出したアザトースらしい。あいつは、その中の一人……ウチの作者による加護を受けている。もっとも、その作用はこの世界限定だがな」


 霊斗のその言葉に、零は霊斗を見つめた。


「……なるほどな」

「ああ。別世界の奴らが大抵本気を出せずに終わるのは、コレがあるからだ」


 霊斗のその言葉に、零はだんまりを決め込んだ。


「……ってことで、今戦えば多分勝つのは俺だ。俺も、作者による加護を受けているからな」


 霊斗の言葉に、零はニヤリと笑うと不意に拳を突き出した。


 それは霊斗では到底止められないような力がかけられていた。……が、それは霊斗によって呆気なく止められた。


「……なるほど、こういうことか」

「分かってもらったようで何よりだ」

「次の質問。あの敵対した女神……クロック・レイフンとそいつを連れ去っていった女神は何者だ?」


 零のその言葉に、霊斗はぽりぽりと後頭部を掻いた。


「うーん……強いて言うなら、ウチの作者の部下って所かな」

「なるほど……クロックレイフンを連れ去っていった女神とレヴェルは、レイフンよりもずっと強い加護を受けているってことか」


 零の推理に、霊斗は肯定するように頷いた。


「……この戦いで死んでしまった奴らはどうするんだ?」


 話が続かず、気まずい空間を破るように零が別の話題を提供する。


「復活させた後、記憶を消去した状態で、元の世界に戻すって決めてる。……まあ、記憶消去は要らないような気もするけどな」


 綺美などは食べられたことなんて忘れてしまいたいだろう。深すぎる心の傷は作らないに限る。ある程度の心の傷は人間としてよくなるのに必要だが。


 それらの行為は、この世界の創造神として作られたディス・クリエイ・メンスが行うことになっている。

 ディスには、最低限の加護しかかかっていない。が、その分行動の自由度はかなり高い。


 加護が強くなるにつれて、行動は段々縛られてくる。レイフンが追われる原因となった、世界渡航の禁止も代表的なそれらのうちの一つだ。


「とりあえず……事が全て結末を迎えたことに、祝杯をあげよう! 宴だァ!!」


『うおおおおお!!』


 霊斗のその言葉に、暗かった人々の表情が一気に晴れやかになった。

 酒は、一時的にだが全てを忘れさせてくれる。それはきっと、逃げるということ、醜いことだろう。

 だが、それでも。みんな、必死な世界で生き続けている。

 時には、逃げることも大事だ。

 だから──。



 ──みんな、酒が大好きだ。



◇◆◇◆◇


 一行は、霊斗の力により遊楽調の世界の博麗神社に転移した。


「霊夢! 宴会だ!」

「分かったわ。霊奈、霊美は人里に居る今回頑張った人たちを呼んできて」

「「はい!」」

「霊歌、霊斗。あなたたちは会場作りと宿泊室の整理」

「おう」「ええ」

「呼白、神姫、手伝ってちょうだい。他にも給仕志望が居たら私のところに来て!」


 宴会の準備は、霊夢の手によって驚くほど迅速に行われた。

 呼白、神姫、霊夢に加え、黒狂、蒼、朔が霊夢について厨房へと向かっていった。


 黒狂や朔が厨房へと入れた辺り、霊夢には男を厨房へと入れないというこだわりはないようだった。

霊斗の遊楽調の世界では最強説は、批判覚悟で書いてます

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