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第二十七話『それぞれのラストバトル②』


 玉木の花火筒が、蒼と桜の二人に向けられる。

 しかし、二人は落ち着き払った様子で筒から放たれる花火を回避し、二本で一本となる剣、巨刀サリオスと秘刀テイルを同時に振るう。


「斬符『鍵ブレード』」


 玉木はそれに対し、すぐさま生成した剣を掴んで防ぐ。


「剣の作るスピードが、上がっている……!?」

「主人、驚くのはまだ早いぞ!」


 玉木はそう言うと、突然拳を前に突き出した。蒼と桜が敵の出現に身構えていると、地面から影のような人型の赤い目をした何かが現れ、蒼と桜に向かってそれらが大量に迫っていく。


「落雷『青天の霹靂』」

「呪楼『黒楼』」


 突然現れた雷が影に襲いかかり、桜の手から放たれる鋭い桜が影を切り刻む。


 影は攻撃を受けるとすぐに消滅していくが、玉木の周囲から消しても消しても増え、蒼と桜に襲いかかる。


「蒼! こいつらを一掃できる?」

「もちろんです!」

「なら、お願い!」


 桜はそう言うと蒼に影を任せて、一人玉木へと突撃していく。

 玉木が桜に向かって剣を生成し、飛ばしてくるが桜はそれを秘刀テイルで斬り伏せ、玉木の振るう剣と秘刀テイルが交差する。


 玉木の剣とテイルのぶつかった場所から、周囲一帯を巻き込むほどの大爆発が起きる。


「な──!?」


 桜は即席で結界を張って世界を閉じ込めることで爆発を周囲に出さないようにすると、玉木諸共爆発に巻き込まれた。


◇◆◇◆◇


 桜の作り出した結界の外側から、未だ爆煙の晴れぬ結界の中を見つめる桜色の髪をした、霊夢のようだが、桜の刺繍が入った脇の空いた巫女服の少女。


 桜の分身であり、今は本体である桜は、その中から来るであろう攻撃に備えていた。

 そして、それは急に来た。


「……っ!」


 爆煙と結界を突き破って、玉木が桜へと突っ込んでくる。

 桜は玉木の手に収まる刀に対して剣で防ぐと、剣を上に投げつける。


「フラガラッハ!!」


 その剣はひとりでに動き、玉木へと向かっていく。玉木はその剣と戦うが、自立しているが故のトリッキーな動きに翻弄されていく。


「蒼、この剣はあなたに渡すわ。私には必要ないものだし」


 桜はそう言って、蒼に秘刀テイルを投げる。蒼はそれを受け取ると、巨刀サリオスがテイルを吸収し、元のサリオステイルが姿を現した。


「──あなたの感情である怠惰、色欲。それら全て、私が断ち切る!」


 蒼はそう言うと、向かってきた影に向かって剣を一閃した。その斬撃は一体の影を切ってなお大きく、鋭くなっていく。


「魔斬『破壊霊の(ガノーク)光剣(・メイノーグ)!』」


 蒼のスペル宣言と共に、全ての影を斬った斬撃はパキンと弾け飛んだ。


「桜さん!」

「ええ! 神羅『知を貪るもの』」


 桜の宣言と共に、光の剣が現れる。桜はその剣を強く握り、フラガラッハに足止めされる玉木に向かって居合斬りを放った。


「ガフッ……!」

「……峰打ちよ、安心しなさい。あんたは私の従者なんだから、しっかりしてくれなきゃ困るわ」

「ふふ……まだ私を部下と見てくれるか……。まったく……主人には敵わん……」


 玉木が言葉を放ちながら倒れると同時に、フラガラッハは消滅した。


◇◆◇◆◇


「くっ……!」


 6枚の羽を生やした茜の攻撃により、幻真は押され始めていた。


「うぐっ……。青目『青い瞳』」


 幻真の目が青色に変わると、幻真は上昇した身体能力で茜に勇ましく向かっていく。


「襲いわよ」


 しかし、茜はそれを何ともないように回避し、幻真の腹を蹴り上げる。


「うぐぁ……黄眼『本気の黄色の瞳』」


 幻真は眼を黄色に変えてさらにパワーアップすると、その腰にある剣を振るった。


「斬符『炎魔斬』」


 炎を纏った剣が茜に襲いかかる。それは、茜の手にもつ剣に防がれた。


「くっ……! 雷符『勾玉雷弾』」


 幻真は剣を持たない左手を茜に突き出し、その先から雷属性の弾幕を発射する。

 茜はそれを恐るべきスピードで切り裂くと、前方から飛来する銃弾を真っ二つに断ち切った。


「シルクゥ……!!!」


 茜は憎悪を眼に宿しながら、銃弾を放った者の方向を見る。

 その直後。二つの拳がぶつかり合う。狐の仮面を外したシルクは、光速で飛来する茜の攻撃を防いだのだ。


 そのスピードの乗った拳がぶつかる衝撃で、空間が揺れた。

 その間に、幻真は茜に向かってはしりこむ。制限時間は5分だ。その間に決着をつける。


 そう意気込みながら、槍を作り出して幻真は槍を投擲した。


「光符『光槍』」


 少し跳ね、上から位置エネルギーをなるべく乗せて槍を投げるようにする。

 それを察知したのか茜は槍を避けると、隣を通過する槍を掴みその持った部分から真っ二つに叩き折った。


 その直後、空中で投げた幻真は下から勢いよく突き上がる地面に体を持ち上げられていた。


「土符『グラウンドアッパー』」

「これは……!? まさか、茜!?」

「気づいたようね。氷符『アイシクルパーフォル』」


 茜はそう言いながら、氷のドリル型の剣をシルクに向かって突き出す。

 勢いよく回転するそれに対し、シルクは剣を足場にして飛び上がって回避すると、着地と同時に前転で威力を殺す。


「そう。私の貧相な技という弱点を埋めるために、火の魔法使いを喰らったの。もちろん、ルーンなんて必要ないよう能力は強化してるわ。私はこの世界の本来の暴食の覚醒者」


 茜はそう言いながら、銃の形にした手をシルクに向けた。


「雷符『シューティングボルト』」

「させるかァッ! 雷龍死乃符『放電雷神龍』」


 茜が撃つ直前に、雷の龍がこちらに向かってきた。茜はシルクを撃ちながら、さらにスペルを用意する。

 シルクは回避行動をとったようで、気を逸らされた茜のレールガンは当たらなかったようだ。


「獄雷『ヘルインパルス』」


 茜の宣言によって、雷が雷龍にぶつかった。雷龍は雷など効かないが、雷龍の持つ電熱を越える熱は別だ。


 雷龍は黒焦げになって地面に落ちるが、そこに幻真の姿はない。

 幻真を探したその一瞬。

 シルクのナイフが茜の手首を斬り落とした。


「ぐ……」

「今だ幻真くん!」


 幻真のスペル、『雷電結界』で周囲一帯に広がる雷の中に紛れ込んでいた幻真は怯んだ茜の正面から茜に向かって走っていく。


「ハイ! 斬符『雷魔斬』」


 紫電と雷を帯びた幻真の剣が、茜の体に炸裂した。

 居合斬りの要領で茜の向こう側に降り立った幻真が勝ちを確信し、剣を鞘に収めると同時に茜はドサリと倒れた。


◇◆◇◆◇


「ぐ……つ、強い……」


 ファウルはそう言いながら、地面に爪を立てた。その指先から赤い血が流れでるが、ファウルを打ち倒した男……室井宏大は知らん顔でその手に持つ炎の剣を消した。


「爆符『至近距離爆薬』」


 ファウルが爆弾を大量に出現させ、それらはファウルまでも巻き込んで一斉に爆発するが、宏大はその炎の中から何食わぬ顔で出てくる。


「な……なんなんだ、お前……!」

「降臨『炎帝』」


 ファウルの驚愕を無視して、宏大は炎を纏った。そのまま、ファウルを持ち上げる。


「炎帝『心滅』」

「あ……ああァァァァァァァアア!!」


 宏大のその宣言とともに、ファウルは絶叫を上げる。

 やがて宏大が手を放した頃には、廃人となったファウルだけがそこに残っていた。


 心滅は、心を燃やす技。いわば相手を鬱状態に作り変えるようなものなのである。

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