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第二十六話『それぞれのラストバトル①』


『始祖龍人ハイド・天御中主・ミラ』

『消龍人カスミ・ハデス』


 彼らは、宮殿に引き寄せられた二人の龍人である。

 そして、訳あってクロック・レイフンの敵対者ともなっている。

 訳というのも、霊歌との賭け勝負に負けたことでクロック・レイフンの討伐に参戦するという規約を結んだだけなのだが。


 ハイドは元々、前回の龍牙との戦いの後、この世界をブラブラと観光していた。

 その中で、博麗霊歌に出会い、賭け勝負をして負けたことで今に至る。


 博麗霊歌によって、カスミ・ハデスも同様にこの世界に来ている。

 が、彼らは非常に神殿内の戦闘に入りづらかった。


 既に戦闘の組み合わせは決まっており、残りは大ボスであるクロック・レイフンだけなのだ。

 そして、レイフンにはおそらく復活した零に呼白や神姫、さらには霊歌も戦うことになるだろう。


 そう。この場において、彼らは『要らない子』になってしまったのだ。

 これはマズい。何がマズいって、色々とマズい。


 彼らはそんなことを思い、ため息をついた。

 もしかしたら、『遊楽調の世界』に住む龍人の権威の失墜のきっかけになるかもしれない、と彼らは考えていた。

 ちなみに彼らは、レヴィルのおかげで遊楽調の世界の龍人が世界にとってあまり存在する意味を持っていないということを知らない。今の遊楽調の龍人は、ただの平和な宇宙人である。


 彼らはそんなこともつゆ知らず、戦闘に入る機会を伺っていた──。


◇◆◇◆◇


「黒狂! 本当の力を出せよ!」


 活躍は黒狂に釘をさすようにそう言うと、妖怪の山の麓でも見せた空間の穴から、たくさんの銃口を黒狂に向ける。


「落符『天の落し物【弾】』」


 活躍がそう宣言すると同時に、一斉に銃口から火花が散る。


「剣雨『ソードレイン』」


 リクはそれを大量の刀を創り出して防ぐと、一斉に同じくらいの量の剣を活躍の上から降り注がせる。


「動炎『畜生ノ群』」


 活躍は降ってくる剣に対し、動物を模した炎をぶつけて防ぐと、そのまま突っ込んでくるリクに対して拳銃の銃口を向け、引き金を引く。


 リクは心臓を貫かれて倒れると、その間に黒狂が活躍に迫っていた。


「チィッ!」


 活躍は舌打ちをしながら、その剣を避けるとスペルを展開する。


「舞弾『舞え弾幕』狂弾『狂え弾幕』!!」


 地面から不規則に、しかし高密度の弾幕が黒狂を囲むように展開される。

 黒狂はその弾幕をつっきって、攻撃を展開してくる。


「チィッ! 化炎『修羅ノ業炎』」


 黒狂の攻撃に対して、身体能力強化のスペルを用いて活躍は回避する。


「八刀抜刀『八一文字』」


 黒狂の鞘から抜き出された全ての剣による一文字の居合切りが、活躍に迫る。

 活躍はそれを受けると同時に、スペルを放つ。


「苦炎『餓鬼ノ苦シミ』」


 活躍は下半身を失いながらも、黒狂にスペルを放つ。

 すると、硬度を変える能力によって普通の弾幕では効果がない黒狂が膝をついた。


 活躍の下半身が再生していき、やがて完璧な状態へと戻った。


「凶炎『尽キロ命』」


 活躍がスペルを唱え、衰えることを知らぬ炎を黒狂に放つ。

 黒狂の肉体にその炎は引火し、その炎はレイフンに付与された感情、怠惰と傲慢によって黒く染まりながら煌々と燃え盛る。


「グァァァァァ!!」


 黒狂は絶叫しながらも、剣を杖代わりに地面に刺し、立ち上がった。


「ふん……今のお前に何ができる」

「今じゃない」

「何?」


 黒狂の答えに活躍が疑問を抱いた瞬間、活躍は後ろから羽交締めされた。


「誰だ!?」

「僕だよ。残念ながら僕は死ねないんだ」


 生き返ったリクが活躍にそう言うと共に、黒狂は刀を構えた。


「確かお前の再生能力は、過去に手に入れた力を変換して使っていたな。……その力が無くなったら、どうなるんだろうな?」


 意地悪く黒狂がそう尋ねるように言うと、活躍は顔が青くなり、ジタバタとリクから逃れようと暴れだした。だが抜けることはできず、やがて黒狂が黒く変色した刀に手をかけた。


「待て! やめろ!!」

「煩い、喚くな。黒刀一刀『千切』」


 黒狂の放つ幾千にも重なる斬撃が、いくつも活躍とリクにぶつかっていった。


◇◆◇◆◇


「妖緋! 父親に剣を向けるとは、どういうつもりだ!!」


 言っていることが一々変わる。

 これはもう……父さんは、正気じゃない。妖緋はそれを感じながら、黒塗りの剣をエクスカリバーで受ける。


 エクスカリバーを引き、志郎の横薙ぎの攻撃をしゃがんで回避すると、そのまま地面を横に転がって妖緋は志郎に剣先を向けた。


「──光よ、我が声に呼応せよ。湖の精霊よ、王たる我に力を。『宝風剣(エクスカリバー)』」


 妖緋は詠唱と共に、エクスカリバーを振るう。エクスカリバーは風の刃となって、志郎に向かっていく。

 志郎はそれを黒塗りの剣で撃ち落とすと、妖緋に向かって突撃していった。


「父さんが本当の『風』というものを見せてやろう!

 模符『ウィンドソード』」


 志郎が大罪によって得た能力は、一言で言えば模倣する能力。

 色欲による洗脳と併せて、相手の技や術式を嫉妬の感情で自分もできるようになる、というものだ。


 志郎の風で伸びた剣が妖緋に迫る。

 妖緋はそれをエクスカリバー本体で相殺すると、志郎に一歩だけ歩み寄り、居合切りの姿勢をとる。


「模符『ルーメンキャリバー』」


 妖緋が居合切りを放つ前に、志郎によって幾つもの光の剣が飛ばされてくる。

 妖緋はそれを居合切りで防ぐと、スペルを発動する。


「火魔『スルト』!!」

「奪符『スルト』」


 妖緋の赤い悪魔の人魂と、志郎の白い悪魔の人魂がぶつかり合い、相殺し合った。

 妖緋が水蒸気で見えない隙に斬りかかろうとするが、妖緋は何か……志郎に首を締め付けられる。


「ガ……アッ……!!」


 その握力は段々と強くなっていき、妖緋の首を圧迫する。


「──『───』」

「奪符『アグニ』」


 妖緋が氷のシールドで志郎の手首を切り落とそうと試みるが、それは炎のシールドで溶かされてしまう。

 妖緋はジタバタと暴れるが志郎は無視して締め上げる。


 不意に、志郎の手が緩んだ。


「ケホッケホッ……」


 妖緋が地面に落ち、咳き込んでいる間に志郎は自分の右手を見つめていた。


「……親としての本能、か……」

「……驚いた。父さん、あなたの体はまだ感情に支配されきっていなかったのね」


 妖緋はそう言いながら、志郎に抱きつく。


「お願い、父さん──もうやめて」

「────」


 志郎は、そっと妖緋の体を抱き返す。それは、志郎が初めて妖夢の体を抱いた時のように、優しく、戸惑いながらのハグだった。


「──すまなかった」

「ううん。いいの」


 志郎の謝罪を、妖緋は否定する。

 志郎の目から溢れる涙を、妖緋はひたすらにその体で受け止めていた。


 志郎の温かさを、妖緋は肌で感じなおしながら……。


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