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第十七話『逃走』


「セイッ!」


 私のソードブレイカーの一撃が、龍神の尾を切り裂く。尾に囚われていたヘラクレスはそれによって解放され、私に向かって放たれた獄炎球をその手に持つ戦斧で叩き落とした。


 その背後から、玉木が打ち上げ花火を龍神に向かって放つ。

 光とともに黒煙が上がるが、龍神はその煙を尾の一振りで振り払う。

 その隙に、私は武器を榊の大枝に持ち替え、スペルを発動する。


「呪楼『黒桜』!」


 名刀の如き鋭さを誇る桜の花のような弾幕が、龍神に襲いかかる。

 龍神に命中するが、あまりダメージは与えられていないようだった。


「こいつの鱗は、斬撃も炎も効かん!」


 ヘラクレスにそう言われ、私は武器を持ち替え、別のスペルを発動する。


「神羅『知を貪る者』」


 私の宣言によって、超強化された霊斗のマスターソードが剣に付与される。

 私は思いっきりソードブレイカーを龍神に叩きつけた。


「効果があった!」


 斬撃としての威力はほとんど入ってないが、衝撃の威力はダメージとして入るみたいね。

 私はさらに霊斗の超強化されたスペルである夢想霊砲を発動する。


 夢想霊砲が龍神の体に衝突し、龍神が怯んでいる間にヘラクレスが龍神に思いっきり戦斧を叩きつけた。


「ガァァァァァァ!!」


 その強固な鱗によって戦斧が割れるが、それを気にせずヘラクレスはその長い首を絞め上げるとそのまま地面に叩きつけた。


「グルルル……」


 龍神が唸るが、それに対して玉木が能力を使って龍神の目を光によって潰す。


「ガァァァァァァ!!」


 龍神が吠え、暴れ狂う。ヘラクレスは龍神の角を掴んで体を支えるが、地面に打ち付けられた。


「うぐっ……」


 ヘラクレスは呻き声を上げ、再び立ち上がる。目から光を失った龍神は地面にその尾を叩きつける。


「どうするのかしら?」

「なあに、逆上したならあとは遠くからチマチマ攻撃してりゃあ倒せる」


 ヘラクレスはそう言うと、ヒュドラを倒したあの巨大な矢を持ち出し、龍神に向けた。


「玉木、準備は出来てるわよね」

「もちろんだ主人! 斬符『鍵ブレード』」


 玉木は1秒かけて、大量の剣を生成した。私はそれらに術式を付与し、司令塔となる一本の剣を……って熱いわァッ!


「……ふざけているなら俺単体で攻撃するぞ?」

「ちょっと待ちなさいよ!」


 予想外だったわ、そりゃあ打ち立ての剣なら熱いわよね……。

 私はそう思いながらも、術で司令塔となる一本を冷ましてそれを握りしめる。


「さあ! 龍神に突撃しなさい!」


 私の術式によって意思を持つその剣は、司令塔の剣を龍神に向けて振るうと、そちらに向かって剣が一斉に飛んでいく。

 剣の何本かが龍神の腹側に当たり、血が噴き出し始めた。


「ヘラクレス! 弱点は腹よ!」

「分かってるさ! 弩符『諸葛弩』」


 ヘラクレスがそう宣言すると、弩の矢は光を纏いながらいくつもの束になり、龍神の腹部に全て当たった。


「ガァァァァァァ!!」


 腹部から鱗を貫いて巨大な矢と、それに続くように何本もの小さな矢が龍神の背中から出てきた。


 龍神は力尽きたのか、そこで地面に倒れる。

 が、すぐにその肉体は再生していくようで、徐々に穴が塞がり始めている。


「玉木、燃やしてしまいなさい」

「了解だ主人!」


 玉木は花火の炎で、龍神の傷を燃やしていく。そうすることで、ヒュドラのように首が再生することはないだろうという予想から起こした行動だけれど、実際に効果はあったようで完全に龍神の動きが止まった。


「ふー……終わったぞ主人!」

「お疲……え?」


 玉木が私に対して嬉しそうに報告するが、私が言葉を返そうとしたところで突然ヘラクレスに突き飛ばされた。


「な!?」


 驚いてヘラクレスの方を見ると、ヘラクレスは片口から真っ二つに剣に切り裂かれていた。

 しかも、その剣は刀身が燃えているらしく、ヘラクレスは傷を負ったそばから炎に焼かれていった。


「やめなさい! 貴方まで!」

「俺はお前らと共に戦えて満足だったぜ。今は古い英雄の戦う時間じゃない。新たな人間の時代だ!! 逃げろ! 今すぐに!」


 ヘラクレスはそう言うと、剣の持ち主の腕を思いっきり掴んだ。


「へへ……ご丁寧に炎で纏いやがって。だが安心しろ、それくらいじゃ俺は攻撃を止めねえぜ」


 ヘラクレスはそう言うと、その腕を圧倒的な怪力で思いっきり握りつぶす。

 それによって剣の持ち主は悶えるが、一瞬で剣の持ち主は切り裂かれた。切り裂いた正体は、剣の持ち主と同じような黒いローブとフードで全身を隠した人型の何かだった。それも、数十人でヘラクレスを取り囲む。


「……どうやら新たな敵って所か。桜!! 今すぐ逃げろ!」

「でも!」

「主人! 逃げるぞ!!」


 その場に留まろうとする桜を、玉木が強引に腕を引いて遠ざけていく。


「へへ……いい従者だ」

「…………」

「それにしても……不気味な服着てるなァ。熱くねえのか?」

「…………」

「応答はなしっ……と」


 その瞬間、ヘラクレスの拳が目の前にいる人型の顔に命中した。

 男はそのまま吹き飛び、それも気にせずにローブの人型たちはヘラクレスに襲いかかる。


 最初にヘラクレスにナイフを突き刺そうとした二、三人の人型たちは、纏めてヘラクレスの裏拳の餌食になった。

 さらにヘラクレスの回し蹴りに吹き飛ばされた人型によって、他の人型が巻き込まれる、


 しかし、ヘラクレスの蹂躙も長くは続かなかった。

 ヘラクレスの肩が、ひときわ大きなローブの人型に切り落とされる。


「ガァァァァァァァァアア!!」

「ヘラクレス!」


 ヘラクレスが怯み、その隙に身体中を燃える短剣で切り裂かれた。


「──!!」


 ヘラクレスはもはや言葉を発することもできず、その場に倒れこんだ。


「主人。逃げろ」

「玉木!? あんたまで何を言ってるの!?」

「ヘラクレスが死んだ以上、誰かが盾になって皆を逃がさねばならぬ。生きるべきは私じゃなく、主人。あなただ」

「でも……!!」

「でもじゃない!」


 私は玉木に一喝され、目を見張ってしまう。


「主人。……楽しかったぞ」

「玉木!!」

「ヘラクレスの仇──!!」


 私の呼び止める声を無視して、玉木は黒ローブの集団に突撃していった。

 私は、ただその隙に逃げることしかできなかった。圧倒的な力の差を、思い知らされたのだった。


◇◆◇◆◇


──???──


「う〜ん……みんなどんどんやられていくなぁ」

「そうだなぁ……」

「よし! 宏大! 出るぞ!」

「はぁ!? ここでみんなを待つって言ったのお前だろ!? それに霊夢の娘はどうするんだよ!!」

「霊歌さんなら、何とかしてくれるだろ。お前が行かないなら俺一人でも行くぞ!」

「あーもう! 待てよ優一!!」

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