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第十二話『VS餓者髑髏』

第十二話『VS餓者髑髏』


「オオオオオオオオオオ!!!」


 餓者髑髏が何かを叫びながら、私に骨の拳を打ち付けてくる。

 餓者髑髏はその存在自体は近世に作られた物だけれど、同じようなことを考えた妖怪は古くからいる。

 古い妖怪ということは、それ即ち強いというわけで。


 私は霊斗さんの真似をして張ったバリアで、左右から来る餓者髑髏の攻撃を防ぐ。……中々便利ですが、これをするくらいなら餓者髑髏の拳を破壊したほうが早そうですね。

 まあでも、遠くから見たらアニメのワンシーンを見ているみたいな風景なので、良しとしましょう。


 私はそんな感想を抱きながら、ドッジボール大の霊力弾を両手に出現させる。

 この場全てに影響を与えかねない私のために、魔晴さんが考案してくれた霊力使用術だ。


 その破壊力は、大体小屋一つ吹き飛ぶ程度。

 それを餓者髑髏の拳に向かって放つ。

 餓者髑髏は霊力弾を受けながらも、無視して私に対して攻撃を仕掛ける。

 私はそれを受け止め、そのまま横に投げ飛ばした。


「オオオオオオオオオオ……」


 もう一体の餓者髑髏が口から炎を吐くが、それは私が創造能力で大盾を出現させて防ぐ。そのまま炎が終わった瞬間に盾を捨て、回し蹴りを叩き込む。


「オオオオオオオオオオ!!!」


 先ほど投げられた餓者髑髏が耳を劈くような声を発する。そのまま、地面を持ち上げてこちらに投げてきた。私はそれを創造能力で崩壊させると、次の瞬間、餓者髑髏は驚くべき行動に出た。


 私を飲み込もうと、口を開いた。

 はぁ……これなら槍で岩ごと貫けば良かったかもしれないですね。

 私はため息をつきながら、スペルを発動する。


「習作『マザーズレーヴァテイン』

魂魄『斬』」


 巨大な炎の剣は、遠心力でその威力をさらに高め、スペルによってその切断力をグッと上昇させる。


 剣が一閃される。それによって、餓者髑髏の頭が上下で綺麗に真っ二つになった。


「オオオオオオオオオオ!!!」


 次の瞬間。


「……え?」


 その餓者髑髏が、もう一体に統合された。元々巨大な体が、より大きく、力強く変わる。


「オオオオオオオオオオ!!」


 『餓者髑髏・滅』とでも呼べばいいんですかね。私は心の中でそう呟いた。


◇◆◇◆◇


「まだまだァッ」


 私はそう言いながら、大鎌で餓者髑髏の腕の骨を叩き切る。

 しかし、餓者髑髏はすぐに腕の骨が回復していく。


「特殊個体……でしょうか……」


 足元で、カタカタと音がする。何事かと思って下を見ると、ガシャドクロの腕が溢れかえっていた。


「はぁ……」


 思わず、ため息が出る。

 ……仕方ないか。


「支配者権限・発動」


  私がそう言うと、私の周囲に魔法陣が出現し、それは縦にその数を増やしていく。


「支配者権言・特殊施行『極限火炎』」


 魔法陣を貫通するように、私の足元から下に炎の玉が落ちていった。炎の玉は魔法陣を通り抜ければ通り抜けるほどに、その大きさを、火力を増す。


 やがて、その炎が餓者髑髏の腕を燃やし尽くした。

 そちらにも痛覚はあるようで、本体の方も呻きながらこちらをにらめつけている。怖くないよ。


 私は殴ってくる餓者髑髏の拳を受け止め、そのまま衝撃を撃ち返す。


「オオオッ!!」

「この程度? 早くもっとやってみなよ」


 私は挑発しながら、周囲を霊力探知する。餓者髑髏はいわば呪いの顕現。

 呪師を倒せば、大抵の場合は餓者髑髏も崩れていく。ただ、死体の怨念が餓者髑髏にそのまま変化していた場合はその怨念を浄化するしかない。


 そして、怨念を浄化する力はかなりの時間をかけて準備しないといけないのよね。霊夢みたく無理やり浄化してもいいけど……。


 餓者髑髏の次の攻撃を私を私は受け止め、そのまま横に投げとばす。

 そこでふと、呼白ちゃんが戦っている餓者髑髏が大きくなっていることに気がついた。そういえば、呼白ちゃんはこいつら二体をまとめて相手にしてたっけ。それが合体したのかしら? 怨念だとしたら、ありえないことではない。つまり、この時点で呪師が操っている可能性は消えたってことだ。


「はぁ……面倒だなぁ」


 私はそう呟きながら、怨念を浄化する術式を構築する。

 やる気のない恵生さんや、手一杯の呼白さんに変わって、まだ余裕のある私ならできる!


◇◆◇◆◇


「その程度!」


 私は巨大化した餓者髑髏の攻撃をバリアで防ぎ、手を銃の形にして人差し指を向ける。


「聖魔弾!」


 私の指先から多重に展開された魔法陣が霊力弾に聖域と同じ力を付与し、解き放つ。


 聖魔弾はレールガンのように寸分の狂いもなく餓者髑髏の胸を貫くが、餓者髑髏は気にすることなくこちらに拳を叩きつけてきた。

 私はそれを軽やかにかわし、再び聖魔弾を今度は2丁拳銃のようにしていくつも撃ち出す。

 すぐに餓者髑髏の貫通した胸骨が再構築されていき、私の攻撃を無視するように俊敏に動く。


「習作『マザーズグングニル』」


 私は横振りの一撃を拳をグングニルで撃ち抜くと、そのまま餓者髑髏に近づき、聖域の効果を付与した拳で餓者髑髏の顎を殴り飛ばす。


「おおおぉ……」

「制圧『流星群』」


 怯んだ餓者髑髏に対し、さらに追撃。回し蹴りで頭を蹴り飛ばし、私の背後から大量のエネルギー弾を残った体に対して撃ち放つ。

 ガラガラと骨が消滅していき、餓者髑髏自体も地面に仰向けに倒れるが、体の失った部分が再構築されていく。


 この再生能力……というより肉体の構築能力は、非常に厄介ですね。

 何をしても、体が再生ではなく作り直されるんですから。

 倒すには封印するくらいしか方法はなさそうですが……いや、蒼さんが何か企んでる顔をしてますね。それに賭けてみましょうか。


◇◆◇◆◇


「今一度顕現せよ、我が力よ。その猛威を奮い、死者を堕とせ! 聖域『浄怨破楼』」


 私がそう宣言すると、指定した場所から巨大な桜が成長し、二体の餓者髑髏を下から巻き込んでいく。

 私はそのまま右手を力強く握ると、餓者髑髏は桜ごと音もなく消滅していった。


「お疲れ様です」

「あ、呼白さん。お疲れ様でした」

「いえ。それにしても……思わぬ強敵と出くわしたものですね」

「ええ、全くです」


 呼白さんはそう言うと、ジトッと恵生さんを睨みつけた。


「……恵生さん」

「なんだよ。あ、食うか?」


 恵生さんはそう言うと、どこから持ってきたのか羊羹を呼白さんに差し出した。

 今この幻想郷には羊羹を売っている所なんてどこにもないハズなんだけどなぁ……。まあ、どこから取ってきたのかは大体予想がつく。


「……いただきます」


 呼白さんはムスッとしながらも羊羹を食べた。私も羊羹を頂いていると、そこに刀哉さんと白刃さんが馬で駆けつけてきた。


「……終わったみたいだな」

「ええ。何とか討伐完了しましたよ」

「お、刀哉と白刃か。食うか?」

「頂こう」

「せ、拙者もよろしいので!?」

「もちろ〜ん」


 刀哉さんが差し出された羊羹を一切れ食べ、白刃さんも驚きながら食べる。


「……美味いな。今回のコレが終わったら土産にいくつか買って帰ろう」

「お、美味しい! 羊羹とは言わず、コレを作った職人を招きましょうぞ殿! ってあいた」


 こうやって純粋に喜んでいる白刃さんの姿は、とっても可愛いのになぁ……。なんていうか……残念美人?

 白刃さんは職人を招こうと言って刀哉さんに頭を叩かれていた。


「む……おぬし、何やら失礼なことを考えておろう?」

「白刃、よせ」

「むぅ……殿がそう言うなら」


 刀哉さんは白刃さんとは違って普段は(・・・)賢明なようですね。


「……そろそろ戻るとしよう。魔晴達にも報告せねばならぬしな。白刃、先に戻ってこんぴゅーたー、と言ったか? の準備と宴の準備を」

「御意」


 刀哉さんに言われて、白刃さんは馬で駆けて行った。刀哉さんは歩きながら今回の拠点へと戻るらしく、馬から降りた。


「そうだ、道すがらお主らの過ごした時間を教えてくれ。親睦を深めるにはもってこいだ」


 刀哉さんはそう言いながら、拠点となっている砦へとまっすぐ歩いて行った。

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