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第八話『開戦1歩手前』


「んで? 開戦はいつなんだ」

「敵から指定されたのは日曜日だが……」

「日曜日か。……明日じゃないか!」

「おう。着々と準備は進んでるぜ」


 魔晴の言葉に、刀哉は頭を抱え込んだ。場所は前回と変わり、遊楽調の世界の人里。

 刀哉と白刃は、人里の中でも霊斗が経営していた道場で暮らすようになっていた。



 今回、人里の主な戦力は三つ。

 一つ目は、妖怪の山との前線を張る紅魔館組。広範囲残滅戦闘に長けた彼らに与えられた戦場だ。


 妖怪の山と紅魔館が隣接している中で、集団戦闘に長ける天狗への対抗策としての適任であるとして、魔晴に選ばれた。

 この中には、元々の紅魔館メンバーの他に朔と幻真にキャメロット、フランス、メソポタミアの連合軍が加わる。兵士の大部分は一般の人間の兵士だが……。

 総勢にして、およそ30万人。この中でも、単体で天狗などを仕留めることが可能なのはキャメロット軍の幹部である円卓の騎士団、フランス軍総司令官のジル・ド・レェ、そして神器王ギルガメッシュ、あとは朔と幻真くらいか。


 二つ目は、紅魔館勢力の第二波として、突破口の開けた妖怪の山へ突撃する軍。

 これは妖怪の山の山頂への突破口が開き次第、第二勢力として天界、龍神界への攻撃を行う。

 この舞台は妖緋を中心とした精鋭軍で、紅魔館組が戦っている背後で次の戦いに備えている。

 主なメンバーは妖緋と志郎、ヘラクレスに城真綺美と城戸藍烙、それに黒素黒狂、夕紅茜、安倍桜、鍵野玉木、円卓の騎士団(猫)、総勢9人とそのサポート役8000匹ほど。


 三つ目は、博麗神社の周囲で地底の勢力を倒す者達。当初の結界を張るという計画を変更し、武力制圧を試みることとなった。白刃の能力により率いられる25万の兵隊に加え、ギルガメッシュの余った武器を具現化した25万の兵士と、刀哉、白刃、蒼、恵生、呼白の5人である。

 今回、魔晴がここまで地底に対して軍勢を積んだのはワケがある。それは、魔晴が『地底の秘密兵器』を知っているからだ。

 殺しても死なないようなメンバーが多数いる中でも、魔晴によりこの3人と大多数を動かせる2人が選ばれた。


 さらに、人里では総指揮官である魔晴を守るように陣が敷かれており、霊斗や零達を救出するメンバーであるシルクと磔、快が戦闘の準備を着々と整えている。

 また、戦闘で負傷した兵を癒す役割を持つとして、永琳達、永遠亭の勢力や絢斗もここに在中している。

 中では、今でも作戦の最後の詰めが行われている所だ。


「──絢斗、能力の制約を消す薬よ。後に伸ばしてるだけだから、効果が切れたらしばらく……絢斗は能力を使えなくなるわ。あと、あんまり連続で使用すると効能も薄れるわ」

「わかった。ありがとう永琳ちゃん」


「──だから、ここだとこうじゃないか?」

「いやいや、こいつらがいるから──」


 そんな軍師達の会話を、魔晴は隣から聞き入れていた。

 大概の内容は魔晴も理解可能だ。だが、そこに口を加えられるほどの思考力は持ち合わせていない。


 それに、この場では魔晴は言わば殿のような存在。優秀な副官達に任せておけば、それで良いのだ。

 ──これを白刃が聞いたら、なんと言うかわからないが。


 魔晴はそんなことを思いながら、朔によって各勢力から渡された文書を開く。これは1日一回、各勢力の内情を把握するために魔晴が行っていることだ。


「──紅魔館は無事兵士が全員到達。さらには新兵器も開発。冥界からは……忙しくて送れないって言ってたな。あとは──」


 現状況の把握だけでもしておこうと、魔晴はつらつらと文字が埋め尽くされた文書を読み進めた。


◇◆◇◆◇


──紅魔館──


 この世界の紅魔館の、広い広い庭。そこに集まった多くの兵士が、レミリアの言葉を一言聞こうと、耳を傾けていた。あと3時間──紅魔館の鐘が6度なれば、もう戦も始まるだろう。


「──皆さん、よく集まってくれた。今、この場にいない総司令官に代わり、この戦場での現場監督としてお礼を言うわ。……しかし。集まっただけでは、もちろん勝てない。そして、勝つための力を貴方達は持っているわ。言いたいことは分かるわね? ……勝てる戦よ。全力で勝ちなさい!!」


『ウォォォォォォォォオ!!!!』


 戦士達の雄叫びが鳴り響き、それとともに一斉に兵士達が紅魔館の全開になった門から、一切乱れぬ行進で抜けていく。


 レミリアは自室に戻ると、パチュリーを呼びよせた。


「──さぁ、やるわよ。パチェ、兵器のスタンバイ!!」

「もうとっくにしてるわよ」

「流石ね! 兄さん! フラン!!」


 友人に冷たくあしらわれたレミリアは、愛する妹と兄を呼び寄せる。そこに、一切の邪念も、プライドもない。

 あるのは、一途な愛とそして──。


「貴方達の出陣は夜よ。昼は頼りになる人がいるらしいから……それまで少し休んでなさい。私の分も頑張って」

「……ええ、お姉さま。失礼するわ」


 フランはそう言うと、レミリアの寝室をスタスタと出て行った。


「……貴様、何者だ?」

「あら、気づいてたのね。あなたの妹は無事よ」


 レミリアもどき(・・・)はそう言うと、姿が一気に禍々しく変化した。


「……貴方と今争う気はないのだけれど」

「だろうな。俺もその気はなかった。……だが」


 ヴラドはレミリアの姿をした何かによる剣戟を神剣グラムによって受け止めると、そのまま弾きかえす。

 その瞬間。冷たい視線が、ヴラドを襲った。

 冷徹なまでの殺気。人を殺すことに慣れ、それに対し一切の感情を捨てた目だ。


 ヴラドはその目に込められた魔力を弾き、剣を横薙ぎに振るう。

 レミリアもどきはそれをしゃがんでかわすと、身体中から一部が剣に変化した触手をヴラドに振るう。


 ヴラドはそれを冷静に対処しながら、ゲイ・ボルグを召喚し、レミリアもどきに突き刺す。


「……あら。負けちゃった」


 レミリアもどきは楽しそうにそう言うと、その姿を変貌させる。


「我が名はロキ。狡智神ロキだ!! この戦、東洋の物怪だけが噛んでいるとは思うなよ!!」


 狡智神ロキはそう言うと、自身を逆召喚することで逃げ延びた。


「あーくそ……。レミリアの場所聞き忘れた……」


 ヴラドがそういった瞬間、壁際のレミリアのベッドがガンガンと揺れた。

 そこからレミリアが救出されるまで、僅か5分の出来事である。


◇◆◇◆◇


『ゴオオオオオン』

「鐘がなったぞ! あと半刻だ、手早く準備を済ませろ!!」

「ハッ!!!!」


 開戦まで、残り30分。様々な思惑と共に、時間は動き、空間は揺れ、世界はうねりを見せていく。

 どのような結末になろうと、これだけはいえよう。この戦いによって、世界は大きな変化を起こすだろう──。


 準備の整った両軍は今、ぶつかり、世界を変えようとしている──。

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