小噺①『この世界の訪問者』
コラボ始動です!序章は颯人先生よりたくさんのキャラをお借りしています!
「「いつまでも、待ってますから!!」」
「ああ、またな!!」
そう言って、最後に残された磔は豊姫や依姫を置いて俺の世界へと繋がる空間の狭間へと入っていった。
嫁を置いて異世界に……か。俺の外の世界への修行のことを思い出すな。
俺の時は霊夢のことを置いていったから……良太君だったか? みたいな状況なわけだ。
まあ、俺の世界は磔の世界とはまた少し違ったルールで動いているから、なんとも言えないけどな。
「磔、別れは済んだか?」
「ああ、もちろんだ!」
俺の問いに、少年は元気よく応えた。
◇◆◇◆◇
「へー……ここが霊斗の世界の人里か」
「俺たちは初めて来るが……磔も初めてなのか?」
磔は健二の疑問に答えるように頷く。俺はそれに続けるようにして口を開く。
「磔はこっちの世界では観光はしてないからなー」
「こっちの世界?」
聖人の問いに、俺は頷く。
「磔はこの世界の前にも何度か俺たちと戦いあっててな。最初は確か……前回の世界だったか」
創世記と遊楽調の世界の間に俺が滞在した世界だったときのことだ。幻夢現郷という、科学力が非常に発達した世界だったな。
確かあの世界は、幻想郷の中では珍しく外の世界との統合が上手くいった世界だったな。
時間の流れが非常に早いこの俺のいる環境は、よく色々な人が俺に会うために前回とは違う世界で会うということが起こる。優一や零なんてどれだけ俺の世界を跨っているか分からないくらいだし。
いや、そんなことはどうでもいいか。
「とりあえず、お前らは人里をブラブラ観光でもしててくれ。このカードを渡しとく」
俺はそう言って、全員の手元にクレジットカードのようなものを出現させる。
「これはなんですか?」
「俺の関係者であることを示すカードだ。観光地やショッピングモールなら、このカードを見せれば好きなものを好きなだけ買える」
俺が快の質問に対してそう言うと何人かがボソッとショッピングモールあるのか……と呟いた。
「俺のオススメの観光地は水族館、動物園、遊園地……あとはあそこに見える高いタワーだな。ショッピングモールなんかもオススメだ。
お前ら、幻想郷に来てからあんまり外の世界に出てないだろ? この世界で外の世界のことも思い出すといい」
俺のその言葉に、全員が頷いた。
「じゃあ、今から自由行動だ。解散!」
そう言うと、みんながバラけて行動し始めた。
◇◆◇◆◇
「おーい、慧音いるか?」
「ん? ああ、霊斗か。みんなが怖がるから、急に出てくるなと言っただろう?」
慧音はそう言って、俺に対して叱り始めた。慧音は誰に対しても対応が変わらないから何よりだ。
「で? 何の用だ?」
「8人分の家を用意してくれ。一軒あれば十分だ」
「分かった、ちょっと待っててくれ」
慧音はそう言うと、黒電話で電話をかける。相手は阿求あたりか?
「──と、言ってたんですがそちらで用意できますか?」
「──分かりました。こちらで手配しておきましょう。後で皆さんが稗田家に来るように言っといてください」
「分かりました。急にお電話して、すいませんでした。失礼します」
慧音はそう言うと、黒電話を静かに置いた。
「稗田さんが手配してくれるそうだ。後で全員で挨拶に行ってくれ」
「了解。んじゃ、失礼するわ」
俺はそういって、空間の狭間から博麗神社へと帰って行った。
◇◆◇◆◇
──人里──
「お、可愛いねお嬢さん! 今お暇かな?」
絢斗がそう言うと、話しかけた相手に無惨にも顎を殴られているのを磔が発見した。
「ふん、この程度で私たちを誘おうなんて、100年早いです」
絢斗の話しかけた相手……豊郷耳 神子の娘、豊郷耳 菜橘がそう言った途端、地面から声がする。
「パンチラゲットー!」
「キャアッ!?」
菜橘が悲鳴をあげ、スカートを上から押し付ける。
それを隣で見ていた聖女、四ノ宮 麗子はニヤニヤと菜橘の方を見つめる。
「な、なんですか麗子さん!」
「いや? 別にー……菜橘にも可愛いとこあるなって思ってね」
「可愛いじゃないですよ!」
そう言いながら、菜橘は絢斗の頭を上からガンガンと踏みつける。
「ギャァァァァァ!!」
「パンツ見えちゃうわよ?」
「もう見られてるんでいいです」
菜橘は満足したのか、スタスタと歩いて去っていた。
「絢斗……お前、ほどほどにしろよ?
子供も出来るのにそんなんで」
「俺は自分を曲げないぞ!」
磔の言葉に、絢斗は反論するように声を荒げた。
「はぁ……」
「どうしたんだ? 溜息なんてついて」
磔が呆れて溜息を吐くと、謙治が磔に話しかけてきた。
「ああ、謙治か。いや、絢斗がナンパしようとして返り討ちにあったからさ……」
磔がそう言うと、謙治は微妙そうな顔をした。俺もきっと今、こんな顔してるんだろうと磔は自分の表情を予想した。
「ん? 皆集まってるのか?」
「集まるなら言ってくれればいいのに」
そうこうしているうちに、快と彰も合流してきた。その手にはショッピングモールの物だろうか、大きな紙袋がぶら下がっている。
「あとは良太、建二、聖人か」
磔が居ない人を確認した途端、磔の後頭部に何か硬いものがぶつかる。
「いってぇ……ってなんでお前らぶつかってきたんだ!?」
「ほんと、痛いですよ……」
良太が泣きそうになりながら起き上がった。
良太たちが落ちてきた方を見ると、そこには次元狭間があり、霊斗がニヤニヤしていた。
「何すんだ霊斗!」
「稗田家に行って挨拶してこい。阿求が家を手配してくれた」
磔がこの世界の阿求は不動産屋もやってるのか……? と疑問に思ったのも束の間、磔の目の前にアップ○ウォッチが落ちてくる。
「そん中にこの人里の地図も入ってる。それを見て稗田家に行ってこい」
「ああ、わかった。みんな、行こう」
磔はそう言うと、アップ○ウォッチの画面を開き、横にスライドしていく。
「お、これか」
磔が見つけた場所で止めると、磔の視界に稗田家への道が矢印で示される。性能はアップ○ウォッチより遥かに優秀だ。これはハクレイウォッチと呼ぼう、と磔はこっそり心に決めた。
「こっちだみんな!」
磔はそう言って、矢印の示す方向に飛んでいく。その先には、でかい屋敷があった。磔の知る稗田家の屋敷と比べても、遥かにでかい。
門や周りを囲う柵も重厚で大きい物に変わっており、退魔兵の数も磔の知る稗田家の兵の数よりもずっと多かった。
「よし、入ろう」
磔はそう言うと、門の前で仁王立ちする門番兵に話しかける。
「……白谷 磔殿御一行ですな? 中で阿求様がお待ちです」
門番兵はそう言って、見るからに重たい門を一人で動かす。
「どうぞ、お通り下さい」
「失礼します」
磔たちが一礼して入ると、そこには雄大な庭と屋敷が広がっていた。玄関に入ると近くの扉が不意に開き、阿求が現れる。
「お待ちしておりました。早速ですが、家の方を紹介しましょう。こちらに」
阿求はそう言うと、再び屋敷を出て暫く歩く。
大路地を抜けた所で、磔に建二が話しかけた。
「磔、あとどれくらいだろうな? 結構歩いたぞ?」
「さぁ……俺も分からんからな。とりあえずついていくしかないだろ」
磔たちはそう言ってまた暫くついていくと、やがて人里の辺境の方に辿り着いた。大きな人里は、端々まで管理が上手くいってないらしく、所々に荒れた家がある。
「なぁ……本当にコッチなのか?」
建二が疑いの声を上げた。
「ふぅん……阿求ちゃん」
「何でしょう、絢斗さん?」
「その幻術早く解きなよ」
「な!?」
「幻術!?」
絢斗の衝撃発言に、彰と謙治が驚きの声を上げた。
「あら……なんのことでしょう?」
「いやいや、とぼけるのはよしなよ。阿求ちゃん……いや、阿求ちゃんに化けた妖獣さん?」