全てハ空ノ上に
ゆっくり更新になると思うので、のんび〜り待っていてください(笑)
終わるか心配ですが、なんとかやってみせます!
若い男は
時と共に風化して崩れている建物を避けながら黙々と進んでいた
「なぁなぁ、そこの人。少し話に付き合ってくれよ」
かつてビルだったコンクリートの残骸に寝転がっている男が空を見つめたまま話しかけてきた
「何だよ。ってか誰だよお前」
たまたま通りがかった廃墟の群の中、手ぶらで寝ている男
怪しいと思わない方がおかしい
こんな奴とは何の関わりもないし関わりたくもない
と思っていた矢先に
「それよりもさ、なぁ知ってた?」
・・・
人の話を聞く気が無いらしい
時間もあるし行く場所も決まってない
男から敵意も感じない
特に断る理由も見つからないし
それにここで会えた人だ
「・・・はぁ。何だよ話位なら聴いてやる。早くしろ」
無駄な体力を使わずに話を聴いた方が早いと諦めて
男の近くの瓦礫に腰かけた
「この雲の中にある灰色の塊。アレが本当の“世界”なんだってさぁ」
「・・・?」
男は雲の塊を指指しながら
「俺の親がさぁ言ってたんだよ、アレには選ばれた人達しか入れないんだ。アレには完全な幸福があるんだって」
「はぁ、それで何だ」
男は空を見上げたまま手を下ろし、上半身を起こした
「いっちまったんだ親は弟を連れてさ、俺はついて行かなかった。親が言うことは絶対だった、でも今いるここが俺の世界だ、って信じてた。その時はな。」
少し寂しそうに言った
「今では俺の周りの奴も段々居なくなっていって、最後の一人だ。分からない、どうする事が正しかったのか」
男は自らの服の襟をギリッと掴んだ
「何を信じるべきだったのか。何が本当の世界なのか。俺だけが間違っていたのか・・・俺だけが夢の中に取り残されたみたいだ」
強い風が吹いた
雲が動いて灰色の塊が顔を覗かせる
「俺には解らない。お前にとっての世界なんて、もしかしたら夢かも知れない。これを世界と信じるなら、ソレがお前にとっての世界だ。例えソレが夢だとしても信じれば良い夢と現実は実に曖昧なんだからよ」
「夢か・・・案外そうかも知れないな」
男は少しフッと笑った
「そうだ。何だお前、結局何を俺に聞きたかったんだ?」
「さぁ?あ、もういいよ話は終わり!聞いてくれてありがとさん。この道をこのまま行けば、“出口”だよ」
男は再びコンクリートの上に寝転がった
「・・・そうか。分かった」
俺は荷物を持って腰をあげた
「じゃあな、俺以外の人に会えるといいな」
「あぁ、これからお前はどうするんだ?」
聞こえていて無視をしたのか、聞こえていなかったのか寝転がったまま男はヒラヒラと手をふっていた
男が言っていた通りに進むと“出口”があった
入るときに通った“入口”も、今ある“出口”もまるで要塞の門のようだ
門から出て後ろを振り返ると“本当”の空と雲の中に巨大な建物がそびえ建っているのが見えた
建物は住んでいた人々の“世界”を抱え
人々さえも飲み込んで静かにそこにたたずんでいる
風が吹いて建物が怪物の様に唸りをあげる
最後の一人を飲み込み喜んでいるのか
それとも悲しんでいるのか
それを知る若い男は
何処かに続く道をすでに進んでいた
若い男は後ろを振り返らない
連載…出来るか心配です
が、頑張りますよ!えぇ!
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