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時関  作者: 空端 明
12/13

日曜日も終わる


 *


 ここ最近、なんどもわたしをよぶから、なんだろうと思って見ていたけど、あの子はすじがいいわ。

 ちゃんとすなおにやれていたしね。

 でも、あの子には、ふたんが大きかったみたい。まだ早いんだわ。

 もし、ちかい未来で、このみちにすすむのなら、もういちど、ちゃんとおしえてあげよう。


 それまでは、わすれていなさい。


 わたしはいつでもあなたを、そしてこの世界を、


 見守っているから。


  *


 病院のベッドで目を覚ました、というのは、こういう状況ではよくある話なのかもしれない。だが、たとえ病院でも、看護師の休憩用ソファの上で目を覚ました、というのはいったいどういうことか。

 よく分からない……いや、分からなくもないけど、釈然としない。僕の上には、毛布が一枚掛かっているだけだった。

「あ、勇玖くん、目を覚ましたのね。もう大丈夫? どこか痛いところとかない?」

 一人の看護師が僕に気づいて声をかけた。

「いえ、大丈夫です。」

「そう? よかった。お母さん呼んでくるわね。」

 それから、「時葉さーん、時葉さーん、勇玖くん、目を覚ましましたよー!」などと言いながら、部屋を出ていった。


 何があったんだっけ?

 一人になったので、回想にふけってみよう思ったのだが、なんだかぼんやりとして、はっきりとは思い出せない。

 えっと……たしか、黒関を見つけて、石がどうのって脅されて……はっ、笛芽! 大丈夫なのかな? というか、どうなったんだ?

 ううん……モヤモヤする。記憶が……えーと、そうだ、記憶を少しいじったんだ。……あれ? どこでそんなことできるって知ったんだっけ? 家にあった資料に載っていたのかな……。微妙。覚えてないや。

 バカな人はこうやって思い出せないから、笛芽はバカでよかったなーって思ったような…………こうやって思い出す? 僕も何か忘れているってことか?

 ……くっそ、わからん……。

「勇玖?」

 急に声をかけられて、ビクッとした。

「うわっ、あ、母さん。」

「大丈夫? 歩ける?」

「うん。もう、平気。ねえ、笛芽はだいじょうぶなの?」

「んー、左腕が折れちゃったけど、元気みたいだし、大丈夫よ。さっきお母さんがきて、一緒に帰っていったわ。」

「そっか……。」

 完全には助けられなかったんだ。

「じゃ、わたし達も帰ろっか。」



 外はすっかり日が傾いて、秋の夕焼けがきれいだった。

「そうだ、笛芽くんさ、事故の前後のこと、よく分からないって言ってるんだけど、勇玖は何か知ってる?」

「え……? ……う、うん……。」

「何かあったのね?」

「たぶん。」

「ま、いますぐ教えてくれなくていいけどね。あの石に関することなんでしょ?」

「なんで分かるの?」

「そりゃあ、あなたの母親だもの。あるかないかぐらいは分かるわ。」

「へー。」

「さ、この話はあとで話してもらうとして、勇玖、今日の夕ごはんは何がいい?」

「え、えーっと、何でもいいって言ったらだめなんだよね?」

「そりゃそうでしょ。あ、そうだ、冷蔵庫の中、何が残っていたかしら?」

「あ……。」

「?」

「……ほとんどないよ。」

「え? ……あの中、あと三日分の食材はあったはずだけど? あれ全部食べたの?!」

「え……そうなの? た、食べたけど。」

「ぷっ。」

「笑うなよ。」

「ふふふ……しょうがないわね。じゃあ、スーパーに寄らないとね。」

「……うん。」


 本当は僕も笑い出したいのを堪えながら、帰りの道を歩いた。

 まぶしいくらいのオレンジ色の中、白い雲が二人を見守っていた。

比較的楽しいと思われるシーン短くてすみません。

これにて(ほぼ)完結です。2~3日お待ちくだされ……

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