日曜日も終わる
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ここ最近、なんどもわたしをよぶから、なんだろうと思って見ていたけど、あの子はすじがいいわ。
ちゃんとすなおにやれていたしね。
でも、あの子には、ふたんが大きかったみたい。まだ早いんだわ。
もし、ちかい未来で、このみちにすすむのなら、もういちど、ちゃんとおしえてあげよう。
それまでは、わすれていなさい。
わたしはいつでもあなたを、そしてこの世界を、
見守っているから。
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病院のベッドで目を覚ました、というのは、こういう状況ではよくある話なのかもしれない。だが、たとえ病院でも、看護師の休憩用ソファの上で目を覚ました、というのはいったいどういうことか。
よく分からない……いや、分からなくもないけど、釈然としない。僕の上には、毛布が一枚掛かっているだけだった。
「あ、勇玖くん、目を覚ましたのね。もう大丈夫? どこか痛いところとかない?」
一人の看護師が僕に気づいて声をかけた。
「いえ、大丈夫です。」
「そう? よかった。お母さん呼んでくるわね。」
それから、「時葉さーん、時葉さーん、勇玖くん、目を覚ましましたよー!」などと言いながら、部屋を出ていった。
何があったんだっけ?
一人になったので、回想にふけってみよう思ったのだが、なんだかぼんやりとして、はっきりとは思い出せない。
えっと……たしか、黒関を見つけて、石がどうのって脅されて……はっ、笛芽! 大丈夫なのかな? というか、どうなったんだ?
ううん……モヤモヤする。記憶が……えーと、そうだ、記憶を少しいじったんだ。……あれ? どこでそんなことできるって知ったんだっけ? 家にあった資料に載っていたのかな……。微妙。覚えてないや。
バカな人はこうやって思い出せないから、笛芽はバカでよかったなーって思ったような…………こうやって思い出す? 僕も何か忘れているってことか?
……くっそ、わからん……。
「勇玖?」
急に声をかけられて、ビクッとした。
「うわっ、あ、母さん。」
「大丈夫? 歩ける?」
「うん。もう、平気。ねえ、笛芽はだいじょうぶなの?」
「んー、左腕が折れちゃったけど、元気みたいだし、大丈夫よ。さっきお母さんがきて、一緒に帰っていったわ。」
「そっか……。」
完全には助けられなかったんだ。
「じゃ、わたし達も帰ろっか。」
外はすっかり日が傾いて、秋の夕焼けがきれいだった。
「そうだ、笛芽くんさ、事故の前後のこと、よく分からないって言ってるんだけど、勇玖は何か知ってる?」
「え……? ……う、うん……。」
「何かあったのね?」
「たぶん。」
「ま、いますぐ教えてくれなくていいけどね。あの石に関することなんでしょ?」
「なんで分かるの?」
「そりゃあ、あなたの母親だもの。あるかないかぐらいは分かるわ。」
「へー。」
「さ、この話はあとで話してもらうとして、勇玖、今日の夕ごはんは何がいい?」
「え、えーっと、何でもいいって言ったらだめなんだよね?」
「そりゃそうでしょ。あ、そうだ、冷蔵庫の中、何が残っていたかしら?」
「あ……。」
「?」
「……ほとんどないよ。」
「え? ……あの中、あと三日分の食材はあったはずだけど? あれ全部食べたの?!」
「え……そうなの? た、食べたけど。」
「ぷっ。」
「笑うなよ。」
「ふふふ……しょうがないわね。じゃあ、スーパーに寄らないとね。」
「……うん。」
本当は僕も笑い出したいのを堪えながら、帰りの道を歩いた。
まぶしいくらいのオレンジ色の中、白い雲が二人を見守っていた。
比較的楽しいと思われるシーン短くてすみません。
これにて(ほぼ)完結です。2~3日お待ちくだされ……




