表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時関  作者: 空端 明
1/13

とある月曜日

 放課後の教室は日差しが暖かくて、眠気がさらに増してくる。どうやら今日は、僕らが教室を占拠できたようだ。いつものメンバーの話し声が聞こえてくる。

「そういえば、朝から気になってたんだけど……それ、どうしたの?」

 瑠菜が訊いた。

「あー、気づいたらケガしててさぁ。」

 照れ笑いながらそう言った笛芽(てきが)は、左腕が包帯でぐるぐる巻きにされ、がっちり固定されていた。

「ばかじゃないの?」

 僕も同感、実にその通りだ。

「いや、さすがの俺でも変だと思うけど、本当のことなんだって!」

 まあ、それも事実なんだけどな……。

「えぇ~~っ? ねえ勇玖(ゆうく)、笛芽の話聞いてた? どう思う?」

「え?」

 こっちに話を振るな。寝たいのに。

 だらだらとふせていた体を起こし、正面を向いてやる。僕って優しいな!

「うん。まあ……お前がバカで良かったよ。」

「……は?」

「あはは……。でもさ、笛芽くんがバカなことは、もうみんな知ってるじゃん。」

 さっきまで別のことをしていた美汲(みく)も話に加わってきた。助かった。ぼうっとした頭で、つい本音を言ってしまった。

「おーい、今日は何やるの?」

 すでに手にトランプを持って、和輝がこっちに加わった。うたた寝して取り損ねたノートを、美汲から写させてもらっていたはずだが。

「もう終わったのかよ。」

「いや、飽きた。」

 ちなみにこいつも、相当なバカである。

 バカの友達はみんなバカ、似たもの同士が集まるんだよな。あっ、言っておくが僕は違うぞ。いたって真面目。うん。どう見たって、すばらしき一般人だ。あー、でも、笛芽のケガについて、とやかく聞きだすやつがいなくて良かった。いるとは思ってなかったけどさ。

「和輝らしいねー。」

「ありがとう。」

 ……褒めてないと思うぞ?

「で、どうするのさ?」

 和輝はトランプを箱から出しながら言った。うーん。まだ誰もトランプでいいなんて言ってないはずだが?

「えー、またトランプ? たまには別のことしようよー。」

 美汲の抗議の声。ほらね。

「じゃあどっか出かけない?」

 瑠菜まで反対。

「いやいや、せっかく教室使えるんだし」

「僕も、出かけるのはちょっと」

 というか、動きたくない。長時間歩くなんて、もっての外。

「笛芽、お前はどうしたいんだよ?」

「俺? ん――、どっちでも」

「あっ、でもケガしてるんだから、ここでなんかする方がいいかな?」

「あ、そっかあ。残念。お出かけは別のときにしよっか。」

 どうやら、移動は免れたようだ。ありがたい。でも皆の衆、ケガの件を今思い出したように話さなかったか? 忘れるのも早すぎる。あ、だからバカなのか。そうかそうか。

「じゃあ、教室でできる、トランプ以外のものってなんかない?」

「えっとぉ、しりとり?」

「却下。歩きながらでもできるじゃん。」

「うーん。」

 確かに、どうしよう。いつもは、トランプしたり、雑談したりで……ってか、僕は今、休みたい。トランプほど静かに、黙々とできるものも思いつかないし。必ずうるさくなるなあ。なんか疲労感がでてきた。

「はあ、僕、ちょっと疲れてるから、先に帰っても……?」

 みんなの視線をいっきに感じた。

「そんなー。つまんなーい!」

 瑠菜がぷくっと頬を膨らませた。

「いや、えっと、寝不足って言うか、その――」

「あ~、ピラミッド完成~~!」

 奥の方から、和輝の阿呆な声がした。みんなの視線が一瞬でそれる。キッて音が聞こえてきそうだ。さっき僕に向けられていたものよりも、何倍も強い気がする。三人とも振り返って後ろを向いているから、僕からは見えないけど。

「……つまり、俺らがこれから何をするか真剣に考えていたときに、お前は一人遊んでいた、と?」

 笛芽が、和輝のいる机を右手でバンッと叩いた。

「あ――――――――っ!」

 ピラミッドだったトランプが、バラバラと崩れていく。さっきの睨みにはまったく怯まなかった和輝は、

「せっかく作ったのに……」

 しょぼんとしてしまった。

「じゃ、じゃあ、僕、先に帰るから、ごめんね……バイバイ」

 これからどうなるか見てもいたかったが、残念、疲れている方が勝った。この隙に帰ろう。

「あ、うん。じゃあね~。また明日!」

 美汲だけが振り向いて答えてくれた。改めて、このバカ軍団の中で一番まともな子だと思う。ひらひらと手を振って教室を出た。


 今日、また普通に月曜日が来たことを嬉しく思う。みんなの声が心地よかった。

 そんなことを考えながら家路についた。


 そう、それは、たった三日前のこと。

 その日もまた、いつも通りの金曜日であるはずだった。

以前戸惑わせたので書いておきますが、タイトルは「じかん」と読みます。「じせき」ではありません!


誤字・脱字等ありましたらお手数ですがお知らせください。

よかったらコメントどうぞ!読みました、だけでもいいので!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ