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海蛇の岩礁

 別作品の更新が止まっている代わりにと思って載せていた本作ですが、在庫分が尽きました(笑)

 今回も、途中からは新しく書き足しています。

 別作品の更新を優先する気ではいますが、こちらのお話も、ゆっくりながら書いていく気です。

 更新は遅くなるかも知れませんが、お付き合いいただけると嬉しいです。

 巨大海蛇からの戦利品は、以下の通り。


 〇【大海蛇の皮】ランク2:大海蛇から採れる皮。防水性があり、頑丈。

 〇【大海蛇の牙】ランク2:大海蛇から採れる牙。毒を出す。

 〇【大海蛇の肉】ランク2:大海蛇から採れる肉。滋養効果がある。


 なんか、素材としては悪くないんじゃない?

 皮は防具に使えそうだし、牙は毒効果のある短剣とか作れそうだ。バルカンさん行き、決定だな。

 よし。あの海蛇は積極的に狩ることにしよう。

 オレの『鑑定』スキルも上がって、ランク2程度なら、高確率で鑑定成功できるようになっている。

 途中で見つけた採集・採掘ポイントからのゲット・アイテムを、チマチマと『鑑定』し続けていたおかげだ。

 ちなみに珊瑚の群生地からは、予想通りに【サンゴ】が大量に採れた。ランクは2だ。何の材料になるかは分からない。これも、バルカンさん行きかな?




 結局、旅立ちの1日目は、大海蛇を3体と大型の魚を数匹、狩って終わった。

 結果的には無傷で終わっているが、大海蛇との戦闘では、かなり神経をすり減らしていたらしい。正直、疲れた。妙にぐったりしながら、小島の1つに上陸する。

 でも、大物を3体も倒したせいか、『両手槍』スキルが20を越え『風車』という戦技を習得していた。両手槍を風車のように回転させる防御的な技だ。

 しかし今、切実に上げたいのは魔法のスキルだ。

 リザードマンには、遠距離での攻撃力が決定的に不足している。

 『水魔法』も『火魔法』もそれなりに使っているのに、いまだスキルが10に届かないのだ。せめて、攻撃用の『火魔法』が欲しいというのに。魔法は、リザードマンの苦手分野なんだろうな。

 砂浜で流木を集めると、『ヒート』を使って発火させる。

 今日から、料理を始めることにしたのだ。こんな地味な使い方でも、魔法スキル上げには役立つだろう。

 パレオで購入した料理キットを使い、魚と蛇肉を焼く。

 魚は、そのままランク2の焼き魚ができただけだったが、蛇肉は、オレにはまだ鑑定のできない料理へと変貌した。滋養効果のついた料理が作れたってことかな?

「いただきまーす」

 両手を合わせて感謝してから、焼き魚を貪る。

 美味い!塩味が効いてて、絶品だ。焼くだけでこんなに美味くなるんなら、料理スキルが上がったら、大変なことになりそうだ。

 さて、問題の焼き海蛇だが。

 ちゃんと鑑定できてない料理を食べるってのは、勇気が要るなぁ。

 まさか、食べると毒状態になるなんてことは、ないと思いたいが・・・。

 こんなことなら、ポーションだけじゃなく毒消しも作っておくんだったと思いながら、焼き海蛇にかぶりつく。


 もぐもぐ。

 もぐもぐもぐ。

 もぐもぐ・・・ごっくん。


 味は、悪くなかった。

 毒は・・・ないようだ。

 滋養効果は・・・うーん、よく分からない。


 その日は、砂浜にステルス・テントを張り、その中でログアウトした。




 翌日は、エルフでログイン。

 早速、南のフィールドで採集開始。

 そう言えば、このフィールドでリザードマンで採集したときは、薬草だけじゃなく他にも色々採れたのに、エルフで薬草狙いで行ったら、100%薬草しか出なかったのは、どういうことだ?

 まさか、エルフには知らず知らずのうちに欲しい草だけ見分ける技能があるのか?

 今日の狙いは、毒消し草だ。

 もちろん、合間にイモムシやクモも狩るし、採掘もする。

 そして、毒消し草ばかりが30も採れた。

 他の草はゼロだ。

 やっぱり、欲しい種類の草ばかり採れるようだ。

 これは、何気に便利だな。さすがは森の民、エルフだね。

 ファジマリーに戻ると、さっそく毒消し草の製作にかかる。作り方は、基本的にポーションと同じだ。

 例によって、地味にポチポチと作る。気分は、修行状態だ。

 はい。毒消し、30個完成。

 しかし、毒消し草を作っても、しばらくはリザードマンで受け取ることが出来ない。

 どこか、郵便屋のある所にたどり着くのを待つしかないね。

 そうと決まれば、リザードマンに変身だ。


 変身。


 昨日ログアウトした砂浜に降り立つ。

 目の前に、裸の女が寝ていた。

「え?」

 大の字だ。

「え?」

 下半身が向こう側を向いてるのが、とても残念。

 でも、立派なおっぱいは丸見えだ。重力に屈することなく、見事に天を・・・いやいや、マジマジと見ている場合じゃない。

 つか、このゲームって、ここまで真っ裸になれるの?

 そう言えば、オレの下半身に変化が起き始めてるような気がするけど、もしかしてそこまで再現されてるの??

 まさかと思うけど、S〇Xも出来るとか??

 うわっ、脱いで確かめたいけど、今脱ぐと確実に犯罪者にしか見えん。

 つか、何者だ?

 恐る恐る近づいてみる。

霧隠(きりがくれ)さんだ・・・」

 ナイスバディ忍者の霧隠(きりがくれ)さんだった。

 すごく気持ち良さそうに眠っている。

 ここって普通のフィールドだから、モンスターも出るよね。どんな度胸してんだ、この人。しかも裸で・・・。

 起こした方がいいような気もするけど、裸の美女をどんな顔で起こせばいいのか見当もつかない。

 かと言って、置いていくのも心配だしなぁ。

 仕方ない。『釣り』でもしながら、起きるのを待とう。スキルも上げたかったし、いい機会だわ。

 波打ち際まで行って、竿を振る。

 もちろん、霧隠(きりがくれ)さんの下半身が覗き込めない位置でだ。

 無心に竿を振る。

 背後を見たいけど、我慢我慢。

 無心に竿を振る。

 後ろからいいニオイがするような気がするけど、無視無視。

 無心に竿を振る。

 なんだ、この苦行。

 そして、何も釣れないじゃないか。


 霧隠(きりがくれ)さんが起きるまで2時間かかった。

「うーん・・」

 伸びをしている気配があるけど、振り向けない。

 『反響定位(エコロケーション)』で視ていると、霧隠(きりがくれ)さんがキョロキョロしているのが分かる。

「あれ?トカゲさん?」

 アマガエルさんのおかげで、「少女たちの狂おしき永遠」の中ではトカゲさんという呼ばれ方が定着してしまっている。

「もしかして、待っててくれたー?」

 サクサクと、砂を踏む音が近づいてくる。

 さすがに、服ぐらい着ただろう。しかし、まるで慌てる様子はなかったな。

「さすがに、そんなトコで寝てたら、危ないでしょうが」

 言いながら振り返ると、ばいんばいんと弾みまくるおっぱいが目に飛び込んできた。

「ひ!」

 まだ、着てない。どういうことだ?

「ありがとね。半分死にかけて、ここまで上がってきたもんだから、なんにも考えずに寝ちゃってたよ」

 そのまま、オレの隣に腰を下ろす。

 完璧に自然体だ。少しも恥じらいを見せない。こうなると、オレも裸がどうのって言い出しにくい。

 全然、違う話題を口にする。

「でも、こんな場所でどうしたの?」

「こないだの一件から、海で戦うのが楽しくなっちゃって、ちょっと遠出してきてみたんだー」

 エヘヘと笑う霧隠(きりがくれ)さん。

「あー、じゃ、オレと同じだね。オレは、海を行けるとこまで行ってやろうと思ってるんだ」

「うわ、それも楽しそうだねー。あたしは、ギルドの活動もあるから、そこまで出来ないけどさ」

 あ、イワシが釣れた。

「潜って獲った方が、早いんじゃない?」

「これはこれで、楽しいから・・・」

「そ。だったらいいけど」

「それより、死にかけたって、強い敵でもいたの?オレは、せいぜい大海蛇ぐらいしか出会ってないんだけど」

「ああ、アイツね。

 実は、あたしって、敵の数が多いのが苦手なんだ。少々強い相手でも、1体だけなら負ける気がしないんだけどねー」

「何か、ウジャウジャいたんだ?」

「体長2メートルぐらいの海蛇が」

「うわ、イヤすぎる。そこは、避けて行くことにしよ」

「いやいや、それなんだけどさー」

「む。不吉な予感がするよ?」

「そそ。手伝って欲しいんだよねー」

「なんで、好き好んでそんなの相手にするのよ?」

「それがさー、聞いてよ」


 霧隠(きりがくれ)さんが言うには、ここの近くの岩礁に鎖で繋がれた人魚を目撃したのだそうだ。

 好奇心旺盛で怖いもの知らずの彼女は、当然のように人魚に近寄ろうとした。

 そしたら、ウジャウジャと湧いてきた海蛇の集団に、行く手を阻まれてしまったという。

 ザコ同然の敵とは言え、防御力の薄い忍者ではその壁を破れなかったらしい。ましてや、海蛇って毒を持ってるんだよね。逆に、死にかける羽目になったようだ。

「で、トカゲさんとここで会えたのも、偶然じゃないと思うんだー。手伝ってくれるよね?」

 オレが断るなんて思ってないだろうニコニコ顔で、聞いてくる。

 まあ、人魚にも興味あるしな。助けるって言うなら、放ってもおけないだろう。

「了解。協力させていただきます」

「やった!さすがトカゲさん」

 飛び跳ねる霧隠(きりがくれ)さん。

 ばいんばいん・・・。

「そうと決まれば、早速行くわよー!」

 素っ裸のまま、海へ入っていく。

「ちょっ、霧隠(きりがくれ)さん、さすがに服を着ないと・・・!」

「え、服?」

 霧隠(きりがくれ)さんが、マジマジと自分の身体を見下ろした。

 そして、ゆっくりとオレを振り向く。首がギギギ・・・と、音を立てる。

「きゃ・・」

「きゃ?」

「きゃ~~~~~~~~っ!!!」

 本気で蹴られた。




「あたし、裸でないと寝られないのよぅ」

 霧隠(きりがくれ)さんは、膝をかかえて落ち込んでいる。

 まさか、自分が裸でいるのに気づいてないとは思わなかった。

 これは、しばらく人魚を助けに行けそうにないなぁ。

 仕方ないから、また『釣り』を始める。

 あ。アジが釣れた。




 霧隠(きりがくれ)さんが復活するのに、1時間かかった。

「さあ、キリキリ働いてもらうわよっ!」

 黒装束に身を包んだ霧隠(きりがくれ)さんが、海へ入っていく。

「ラジャ~」

 オレも海へ入る。

 背中に霧隠(きりがくれ)さんが取り付いた。

 そのまま、人魚が繋がれているという岩礁を目指す。戦闘力は負けているけど、水中の移動速度は、オレの方が断然勝っている。海の中では、オレがウマがわりだ。

 霧隠(きりがくれ)さんに背中をつつかれ、一度浮上。

「そろそろ?」

「うん。あれよ」

 そこから50メートルほど離れた岩礁に、確かに誰かがいるのが分かった。ただ、オレの目ではそれが人魚とまでは判別が出来ない。

「あれが人魚?」

「そうよ。鎖で繋がれているの。ずいぶん弱って見えるわ」

「じゃあ、早く助けなきゃね」

 再び海中に潜ると、岩礁に近づく。

 そして、気づいた。岩礁の海中部分に、びっしりと海蛇が群れていることに。

 背中を怖気が走る。

 海蛇たちが、いっせいにオレたち目がけて泳ぎ寄ってきた。

 果たして、ヤツらの牙はリザードマンのウロコを貫けるんだろうか。

 両手槍を激しく振り回す。戦技『風車』。こういったザコを薙ぎ払うには、最適な技だ。

 しかし、海蛇の数が多すぎて、その全てを防ぎ切ることは出来ない。

 『風車』でカバーし切れない角度から近づいてくるヤツは、『ウォーター・シュート』で弾き飛ばす。

 背後から霧隠(きりがくれ)さんも、『火遁の術』を使ってくれる。

 海中にも関わらず、その炎は、10匹ほどの海蛇をまとめて焼き尽くす。

 それでも、海蛇の数は減じることなく、襲いかかってくる。おかげで、オレたちはなかなか岩礁に近づけない。

 霧隠(きりがくれ)さんが、息が続かなくなったのか、海面に向かう。

 オレも、それをフォローするために上昇する。むろん、その間も槍を振り回し続けている。

 すでに身体中に海蛇の牙を受けていたが、毒が回っている様子はない。ダメージは受けているが、まだ許容範囲だ。HPバーは、まだグリーンゾーンにある。

 そして、戦闘状態が続いているせいで、テンションバーが満タンになっていた。

 久々に、アレが使える。

 オレたちを追って上昇してくる海蛇たちに向け、ブレスを吐き出した。

 いつぞや、黒ゴブリンにぶつけたのとは比べ物にならないぐらいに太い水の奔流が、海蛇たちの群れを引き裂く。

 海を割る勢いで吐かれたブレスは、激しい水流を巻き起こした。

 海蛇たちは、その流れに押し流され、一気にオレたちの前から姿を消す。

 チャンスだ。

 オレも海面に浮上すると、霧隠(きりがくれ)さんを背中に捕まらせ、岩礁まで泳ぎ切った。




「おおっ、ホントに人魚だ・・」

 その人魚は、海面に顔を出した岩の上で、両手を鎖に繋がれて動けなくされていた。

 年齢的には、10代半ばに見える。緑色の長い髪が可憐な少女だ。

 下半身は、腰のあたりから魚のそれに変わっている。桃色のウロコが、とても美しい。

 上半身には何も着けておらず、誰かさんに比べると慎ましやかな膨らみが露わになっていた。

 いわゆる人身御供ってやつだろうか。

 人魚の少女は、オレたちの正体が分からないのか、警戒する表情でこちらを見ている。が、その瞳の光は弱々しく、かなり衰弱してるのが見てとれる。

 霧隠(きりがくれ)さんが短剣を閃かせ、少女の手首に巻かれた鎖を両断した。

「さあ、これを着て」

 アイテムポーチから取り出したブラウスを、手渡す。少女は、おずおずとそれを受け取ると、上半身を隠した。

「言葉、分かる?」

 霧隠(きりがくれ)さんの問いかけに、そっとうなずく少女。

「じゃあ、逃げるよ?」

 しかし、その言葉には、はげしく首を横に振った。

「どうして?」

「キミが逃げると、他の人たちに迷惑がかかるんだろ?」

 オレが口をはさむと、少女は小さくうなずいた。その目に、涙が浮かんでいる。

「ここに、何がやってくるんだ?」

「・・・クラーケン」

 少女が、か細い声で初めてしゃべった。

「クラーケン?」

「逃げて。もう、クラーケンが来ます!」

 遅かった。

 海中をゆっくりと近づいてくる巨大な影を、『反響定位(エコロケーション)』が察知したところだ。

霧隠(きりがくれ)さん、何かデカブツが来たよ」

「まかせて。やっと、あたしの出番だわ」

 ニヤリと笑う。

「大丈夫。あなたは、あたしが守ってみせるわ」

「ちょっとは、オレも協力するよ?」

「オッケー。じゃ、しばらくの間でいいから、そいつの注意をひいてくれる?」

「それぐらいなら、まかせて」

「じゃあ、ちょっとだけ待っててね。そうそう、あなたの名前は?あたしは、霧隠(きりがくれ)

「レスフィーナ」

「すぐに片付けてくるわ、レスフィーナ」

 霧隠(きりがくれ)さんは、男前に笑ってみせた。

 

 

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