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Royal Crystal  作者: 碧流
Ⅰ:JewelCrysis
9/18

STONE:9 炎禍の中で -black volkano-

「よぉっし、私がいっちばーん♪」

と調子をこきながらレルはオアシスに乗り込んだ。ところが……

「街が……燃えてる!?」

燃え盛る業火が街に燃え広がり、伊国の時以上に違和感を感じる。

炎が黒く染まっているのだ。

これも黒水晶の影響なのか………?

「ランの仕業?こんな物騒な真似して……!」

意を決し、彼女は炎の中に突っ込んでいく。

幸いボードの周りにバリアが張られている為熱さは感じなかったが、逃げ惑う人々で視界が遮られる。

クロスナイツの面々もどこに居るのか分からない。

一人でやるしかない……とレルが覚悟した時、聞き覚えのある声がした。

「皆さん、向こうへ逃げて下さい!」

確かこの声は……

「リュリちゃん!ミハイルに…誰?」

「あ、レルちゃん!!」

「先日ぶりだな」

二人と、見知らぬ少年が人々を避難させていた。

橙色の髪の少年は青色のジャージを身に纏い、紺色の眼鏡をかけている。

スポーツ系ともインテリ系ともとれる風貌だ。

「あぁ、俺はトーマ。よろしく。お前の事はミハイルから聞いてる。レル…だっけ?」

「そう。初めまして、こないだは居なかったよね…?」

「あぁ、今回は修行で来たんだそうだ。仲間だから安心しろ」

隣にやってきたミハイルが補足説明する。

「へぇ…とにかく良かった、みんな無事で。ところでナナちゃんは?」

「あぁ、ナナなら…」とミハイルは建物を指した。

そこには、屋上へ登り神の加護で雨を降らせようとしていたナナがいた。

女神降臨アドベントゴッデス!!」

彼女はひたすら叫んでいた。

神を召喚する魔術は聖魔術の中でも特に成功率が低く、何度も詠唱しないと神は現れない。

「私の炎の魔術じゃ逆効果だから、ナナちゃんに頼んで雨を降らせて貰おうとしてたんだ。だからその間に街の人達の避難だけでもと思って」

とリュリ。

「うぅ…ユキさえ居れば、水の魔術で鎮火出来たのに…」

「そういえば、あいつらは?」

ミハイルが一瞬砂漠の方を見た。



「ねぇ、何か悲鳴が聞こえない?」

砂漠の遥か彼方から人々の悲鳴が聞こえてくる。

「あぁ、聞こえた。シルビア、レーダーの反応は?」

シルビアが青ざめた顔で頷く。

「思った通りだ。あそこに赤い点が見える…」

「この先は確かオアシスだったな…もしかしたらレルが…」

「ボクが行く!」

「俺も行く!」

「なら俺も行くぜ!」

結局レースは中断せざるを得なかった。


「これで皆避難したよね!?」

「よし、消火活動に入るぞ!」

3人は近くにあった消火器を拾い、既に構えていた。

「消火開始っ!」

消火器が白い粉塵を撒き散らし

「旋風<ツイスター>!!!」

それをレルが魔術で拡散させる。

「聖なる力よ、我らに水の恵みを!」

遂にナナの詠唱が成功し、それに呼応するかの様に雨が降り出した。

黒い炎が見る見るうちに鎮火されていく。

その時、後方からユキ達がようやく追いついた。

「レル、大丈夫か!!」

「もう、みんな遅いよー!」

「悪かったな。じゃあ早速手伝うぞ、シルビア、フィル!」

「うん!!」

「おう!!」

3人が合流した所で、更に消火活動を進める。

合計8人で沢山粉塵を撒き散らし消火した結果、小一時間程度で火は消えた。


「ふぅ、皆ご苦労様だぜ」

一同が一息付いた時、ユキはようやくトーマの存在に気付いた。

「トーマ!戻ってきたなら連絡くらい入れとけよ!」

「今頃気付いたのかよ…」

彼らは無邪気な子供の様にはしゃいでいた。

「あれ?二人とも知り合いだったの?」

レルが目を丸くする。

「あぁ、この二人は親友なんだよ」

ナナがレルに説明した。

「へ?」


フィルが空腹を訴えたので、一行は中華料理店を探して歩いていた。

皆先程の騒ぎで疲れたのか、すんなり同意した。

やがて一軒の料理店を見つけ、中に入る。メニューを渡され、8人は料理を注文した。

「じゃ、から揚げ1人前」

「天心飯3つ」

「炒飯2人前」

「あいよーっ」

店主は気前良く返事し、料理をし始めた。

「で、改めて自己紹介だけど」

突然トーマが切り出した。

「俺の名はトーマ・ハウライト。よろしくな」

「で、俺の親友」ユキが割り込む。

「そーそー」

長年の付き合いからなのか、息がぴったり合っている。

「てっきりフィルが親友だと思ってたよ」

「俺の親友はミハイル。な?」

フィルはミハイルに同意を求めた。

「…そうだ」

「ふーん」レルは納得した。

「どうせだから話しといてやるよ。俺達の過去について」

そして彼らは顔を見合わせる。


強火で炒飯を炒める音がした。


「俺達は幼稚園の頃から仲良しで、学園に入学した時もエトワールとエターナルに離れはしたけどクラスはほぼ同じで、それが3年生の頃まで続いてたんだ」

「だけど、ある日トーマが魔術協会からスカウトされて、そこで研修…つまり修行をする事になったんだ」

「そこで修行すると大抵最強の魔術師になれる。けどそこに入るのが超難しくて、ほんの一握りの人間しか入れないんだとよ」

「その一握りが、トーマってこと?」

レルが尋ねると、トーマが頷いた。

「でも修行って言ったら何年もする物でしょ?どうして帰って来れたの?」

「俺もそれが聞きたかったんだ」

レルとユキの質問を受け、再度トーマは口を開いた。


から揚げの香ばしい香りがしてきた。


「俺は協会の元で修行を続けた。魔術の特性、魔力の応用による魔術効果の発展。それを4年生の頃からずっとだ。でも、ある日協会から通告を言い渡されたんだ―――」

トーマは一瞬黙って、言った。

「しばらく学園に戻って、実戦を積んで、自分に足りない物を見つけて来いってな」

「足りない物って?」

レルが首をかしげた。

「具体的に何なのかは解らないが、それを補えって言われた」

「じゃあその足りない物が、学園にあるって事なのか」

学園全体が巨大なエターナル学園。

確かにあそこならば何か見つかるかもしれない。

「で、結局まだ見つかってないの?」

トーマは少し考えてから言った。

「…俺はまだ見つかってないと思ってる。だからこいつら(クロスナイツ)と一緒に来た。そうすれば何か見つかると思って」

「成程…」

と、ユキは腕組みをしながら考え込んだ。


「あ、それとシルビア」

とミハイルが話題を変えた。

「レーダーのアップデート…」

言いながら彼はノートPCを取り出した。

「あぁ、お願いしてたやつね。よろしく」

シルビアはレーダーをミハイルに渡した。

「アップデートするとどうなるの?」

「通信回線で連絡が取れる様になる」

「ふーん」

レルがそう言う間に彼はレーダーとPCをケーブルでつなぎ、大量のデータをやりとりしていた。

数分かかった後にアップデートが終わったらしく、

「出来た」

「これで理事長とも連絡が取れるよ」

「やったね、有難う」

「どういたしまして」

皆はミハイルにお礼を言った。

すると、回転テーブルに料理がやってきた。

テーブルが中華料理で埋め尽くされ、辺りに美味しそうな匂いが漂う。

そして烏龍茶が配られた後、皆は手を合わせた。

「いただきまーす!」

皆は思い思いの品を皿に取り、食べ始めた。そんな中、怪しい行動をする者が一人。

「から揚げは私が独り占め…」

「させるかっ!!」

から揚げを独り占めしようとしたレルをユキが制する。

「わぁぁぁぁ!」

「独り占めなんて卑怯だぞ」

「何でさ!私が一位になったでしょ!」

「いや、あれは消火活動で忙しかったからノーカンだ」

「そんなぁ~」

「俺にもよこせ!」

「ボクもー」

4人が騒ぐ様を、ナナ達が白い目で見ていた。

「……君達、何やってんの?」

そこでレル達は何故から揚げを奪い合っているのか、レースの件と共に明かした。

「そうなんだ…なら追加注文すれば良いのに」

「駄目だ。予算は大切に扱わないと」

「とか言っときながらユキも食い意地張ってるよねー」

シルビアがジト目でユキを見る。

「なっ!!」顔を赤らめるユキ。

その間既にから揚げは最後の一つになっていた。

「レースに勝ったんだから、これは私の」

「んにゃ、俺んだぜ」

「違う、俺のだ」

「もう…みんなでジャンケンしたら?」

リュリの提案で、4人はジャンケンする事となった。

「しゃあねぇなぁ……行くぜ!!」

「最初はグー!ジャンケン…ポン!」

シルビアのみグー、残りはパーだった。

「ちぇっ」

そして再びジャンケン。

「ジャンケン、ポン!」

今度はフィルがチョキで一人負け。

「ちきしょー」

遂にレルとユキの一騎打ちになった。

ただのから揚げ争奪戦なのに、皆が固唾を呑んで見守る。

「最初はグー!ジャンケン…」

するとそこに、

「あ、おいしー」

何者かが現れ、最後のから揚げをつまみ食いしてしまった。

「あぁ?!最後の一つだったのに!!」

「誰だ!」

「あぁ…ごめんごめん。美味しそうだったからつい食べちゃった。じゃあね」

それは良く見ると先程まで探していたランだった。

「ランーーーー!?」

「追いかけるぞ!」

「ちょ、ま、待って!」

そして7人は会計するのも忘れ一目散に飛び出して行った。

一人だけそれに気付いたトーマは冷静に料金を払い、こう述べた。

「おいおい、追いかける前にまず金払おうぜ?」

しめて一万円だった。

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