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Royal Crystal  作者: 碧流
Ⅰ:JewelCrysis
8/18

STONE:8 砂嵐 -race of dezzart-

砂漠の道は割と単調で平坦な道が続き、序盤は各自さほど差が大きくなる事は無かった。

だが………

「砂嵐だっ!!」

「何っ!?」

突如、4人の前方に巨大な砂嵐が現れた。

砂漠なので予想される事態ではあったが、このアクシデントがレースの勝敗を大きく左右するのだった。

全員砂嵐を避けて回り道する間に、順位が変動したのだ。

現在のトップはユキ、次にシルビア、続いてフィル、レルの順だった。

「食べ放題は俺がもらった!!」

「そうは行かないよ!絶対ボクの物っ!」

シルビアがユキを抜き、大きく引き離す。

「油断大敵だよー?」

「やるか?よし、受けて立つ!」

後部から二人の様子を伺うフィルとレル。

「かなり引き離されてる……」

「俺はシルビアから貰えば良いやぁ~…」

戦意喪失するフィル。フェザーボードも徐々に減速していく。

「そう?ならお店に着いた時に全部食べられてなきゃ良いね!」

減速すれば店に着くのも遅くなる事に気付いたレルは、フィルに忠告した。

しかし、それが命取りだった。

「うぉ、そりゃ困る!やっぱ前言撤回すっぜ!!」

フィルが再度加速する。

「あ~~~~~~っ!」

今更自らの過ちに気付いたレルだった。

「うそ、私ビリじゃん…」

とは言ったものの、ここで挫折すればますます差が広がってしまう。

のんきに弱音を吐いている暇も無いのだった。

「よし、今度こそ本気出してやるんだから!!!」

この暑い中砂漠を全速力で走り去るスピード狂が、そこに居た。



一方、エトワール学園理事長室にて。

「まぁ!一体何処ほっつき歩いてたのよ!?」

ソレイユがまるで母親の如くヨシュアを叱る。

「もう、どんなに心配したか……結婚式も挙げなきゃならないのに」

「ごめんよ、ソレイユ」

「ひっく、えく……」

大人気なく嘘泣きするソレイユだった。

「にしても、そんなに時間経ってたっけ?」

「そうよ、私がレルちゃんを日本からこっちに連れて来てから、いくら経ったと思ってるのよ?」

「いくら?」

「三週間よ三週間!分かる!?」

「なんだ、その程度か…春休み中には終わらせる予定だったんだけど、ちょっと急用が入ってね」

「急用って何よ!本気で心配してたのよ」

つくづく女って鬱陶しいよなーとか思うヨシュアだった。

「でも、無事にレル君を連れて来れたじゃないか」

「貴方に言われた事だもの。失敗する筈無いじゃない」

「ご苦労様。そうそう、僕は君の知らない間も見守ってたんだよ」

「いつの間に…ってそれストーカーって言うのよ?」

「違うよ、君じゃなくてレル君。フォーチュンソードの試練の時、彼女はことごとく運命を変えたんだ」

「そう…私には皆目見当もつかないわ。あんな小さな体で運命を変えてしまうなんて。ひょっとして貴方、何か知ってるんじゃないの?」

「ん?今は秘密にしておくよ」

「何よ、教えなさいよー!!」

「やだね。ふふふふ……」

二人は仲睦まじく追いかけっこをするのであった……。



「引き離されてからそんなに経ってないから、今ならまだ逆転出来るかも………」

レルはまだ希望を捨ててはいなかった。

アクセル全開で砂漠のど真ん中を猛スピードで突っ走る。

それは近くを通りかかったラクダも目を丸くするスピードだった。

「万が一負けたら悔しいし、そろそろ奥の手を使おうかな」

そう言うと彼女は右手に剣を召喚した後、空にかざし呪文を詠唱する。

竜巻トルネード!!」

詠唱後剣の柄から竜巻が出て、彼女はフェザーボードごとその風の流れに乗った。

竜巻で滞空しながら進む戦法を取ったのだ。

「本当は魔力大量消費しちゃうからあんまり使いたくないんだけど…まぁ、この際しょうがないっ!」

上空から3人を追尾し、様子を伺いながら竜巻を進ませる。

「これなら…………勝てる!」

彼女は自身の勝利を確信した。



「そういえば貴方、婚約指輪はどうしたの?」

ソレイユがヨシュアに聞く。彼の指には何も嵌っていない。

「あぁ、それなら」と彼は机の引き出しから小さな宝石箱を取り出した。

「ほら」

「まぁ、そんな所に…」

「傷が付いたり、失くしたりしたら困るだろう?」

「そうね。流石に失くすことは無いと思うけど…」

それを聞き、彼女は安心した。

(本当は嵌めるの面倒臭いからだけど言わないでおこう………)

ヨシュアは心の中で呟いた。

「で、結婚式はいつにするの?」

突然ソレイユが聞く。

「そうだな……まずこの黒水晶の件が片付かないと……」

「あ!」

突然彼女が思い出した様にヨシュアの顔を見る。

「皆を手助けしに行きましょうよ。これでも一応世界の危機なのよ!!」

彼は一瞬呆れた様に嘆息してから、再度真面目な顔つきに戻った。

「それは出来ない。これはレル君達で解決しなきゃならないんだ。国連も警備隊も皆オーラに捕まっちゃったし」

「でも誰かが行かなきゃ、あの子達が……」

ソレイユも負けじと食い下がる。

「これは彼女達で解決すべき試練だ。僕らの手出しは無用なんだよ」

「え?」

「僕らが今出来る事は彼女達をゴールに導く事ぐらいなんだよ」

「そんな……」

そして二人は窓の外を見た。



レルが乗った竜巻は丁度ユキ達が居る地点を通過していた。

「お先にー」

「させるか!」

「えっ」

ユキが竜巻の目めがけて銃弾を撃つ。

縦断は見事に命中し、竜巻はやがて力を失いただの空気に戻った。

それ故に、レルは高速で地上に落下していく。

「わぁぁああぁぁ…」

「トップは俺だ!」

「いいや、ボクだ!」

「ちげぇよ、俺だぜ!」

真っ逆さまに落ちるレルを尻目に、3人が揉める。

そしてフィルは勝負に出ようと魔術を発動した。

通行止(レールロック)!!」

呪文と共に、3人の目の前に地中から巨大な岩柱が姿を現した。

それは幾つも重なって強固な壁となり、3人の前に立ち塞がる。

「いっそココで道連れにしてやるぜ!」

「ここでそれ!?やり過ぎだよフィル…」

シルビアがぽかんとする。

「仕方無い、ドリフトだ!」

「待ちなよ…」

「ん?」

後方から恐ろしい殺気が立ち上る。

「食べ放題は私の物だよ!!」

「げっ」

3人の隣を高速で走り去り、いちはやく岩柱のカーブに突っ込んだのはレルだった。

その場の誰もが彼女は柱に激突すると思われたが…

「これがドリフトってやつだぁぁぁ!!!」

彼女は微妙にフェザーボードを浮かし、滑らかに重心移動させ、カーブを……曲がりきった。

「何ーーーーーーっ!?」

むしろ激突しかけたのは3人の方だった。

「がっ」

「ぐっ…」

「あ」

「食べ放題は美味しくいただくよ♪それじゃお先にー」

「く、くっそぉ………」

3人は走り去るレルの背中を見つめるしかなかった。


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