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Royal Crystal  作者: 碧流
Ⅰ:JewelCrysis
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STONE:4 来たるべき災厄 -secret weapon-

その後、彼はレルに話があったので、校舎隣の時計塔まで連れて来た。

「何ここ……」

英国三大巨塔の一つに数えられる、学園の中心にそびえ立った、凝った飾りの巨大な塔。

その迫力はいつ見ても凄まじい。

勿論、初めて来たレル本人にとっても同じ事が言えるらしく、開いた口が塞がらない様だった。

「英国三大巨塔の一つ、時計塔。あんまり人も来ないし、話しやすいかと思って」

「話って?」

「上に登ってからだ」

そして彼らは螺旋階段を登り、「時の鐘」が釣り下がった屋上に来た。

広がる青空、英国の町並み。

清々しい空気が、彼らの間を通り抜けていく。

爽やかな春風だった。

そしてレルが感嘆の声を漏らす。

「すごっ……」

「『時の鐘』だ。仏国が60年前に姉妹国の印に寄付してくれた」

「じゃなくて、この景色だよ!学園にこんな見晴らしの良い所があったなんて」

彼女は歴史よりも景色の方に感動したらしい。

爛々と輝く彼女の瞳は、遊園地に来た子供のように輝いていた。

その瞳にたじろぐ少年が一人。

「ところで、話って?」

レルの言葉でふと我に返り、ユキは慌てて言葉を返す。

「あ?あぁ、あのな、これからお前はロイヤルフォースの本当の仕事をする事になる」

「本当の………仕事?」

「ロイヤルフォースの本来の任務は、違法ジュエルやクリスタルの回収と世界平和の維持だ」

「それがどうかした?」

「この間、その世界平和を脅かす、違法ジュエル…『黒水晶』が現れたんだ」

「黒水晶………?」


違法ジュエル・黒水晶。

それは突如街の中に現れ、黒い「オーラ」を街中に広げると共に人々のクリスタルを奪って取り込んでいく凶悪なクリスタル。

どうやら古代魔術によって創られたものであるらしく、通常の魔術ではまるで太刀打ち出来ない。

それを回収するにはロイヤルフォースの力が必要なのだという…


彼は違法ジュエルが創られる経緯を話した。

本来クリスタル…心とは一人に一つ存在するが、稀にそれを持たない者が居て、そういう者達が事件を起こしていること。

そして彼らロイヤルフォースもまた、クリスタルではなくジュエルを所持し、特殊な力が使える事を確認した。

「それは後からジュエルを手に入れた私にも手伝えることなの?」

「もちろんだ。ただ、俺達の力だけで解決しないといけない」

「手伝いくらい大人に頼んでもいいじゃん!どうして私達だけでやらなきゃいけないの?」

「それは俺達が『ジュエル』の所持者だからだ」

「じゃあジュエルを持たない大人は手出し出来ないとか、そういうこと?」

「その通りだ。黒水晶は古代魔術によって創られているから、ジュエルの所有者か神でもなければ触れる事すら出来ない。…だからお前は、此処に呼ばれたんだ」

「…今まで3人でやってこれたんじゃないの?なんで私まで……」

「確かに、お前が来る前もオレ達3人が違法ジュエルを回収してはいたが……ジュエル所有者、候補者は判明次第この学園に転校する事になってるんだ」

「つまり、私はジュエル所有者だって判明したから、此処に呼ばれたって事?」

「そうだな」

「ふーん………」

レルは考え込んだ。当初の転校理由と話が食い違っている気がする。

しかし一人で考えても結論が出ないので、諦めた。

「…じゃあ事件解決中の間、学校はどうするの?」

「正式に手続きを取れば公欠出来る」

「嘘でしょ!?」

「本当だ。嘘ついてどうする」

いくらロイヤルフォースが特別待遇を取っているとはいえ、まさか公欠まで出来てしまうなんて。

半ば信じられなかったが、流石に文句を言ってられる状況でもなかった。

「…解ったよ、やるよ。シルビア達もこの事知ってるんだよね」

「当前だ。メンバーなのに知らなくてどうする」

「それなら良かった。じゃあ………」

「?」

「今度は私の話を聞いてもらおうかな」

レルはずっと気になっていた疑問をぶつけてみた。

「私の記憶違いじゃないなら、私達、3年前に日本で会った事あるよね?」

しばらくの沈黙の後、彼は答えた。

「そうだ」

「あんたはあの時、私に碧のジュエルを託して去ってったけど…このジュエル、返さなくて良いの?」

「いや、俺はこの学園にジュエル所有者を集めるのが仕事だっただけだ。もうそれはお前の物で構わない」

「そっか…、で、あんたはロイヤルフォースで何を目指してるの?」

「強くなることだ」

「え………」

十分強そうな感じなのに……

「俺にもっと強くなってほしいって、ヨシュアおじさんが言ってたんだ」

「ヨシュアさんて…前に言ってた……?」

「そう、この学園の理事長。そして、俺の命の恩人」

「命の恩人?」

「あぁ。おじさんは俺が小さい頃、捨てられていた俺の事を拾ってくれたんだ」

「捨てられていた……?」

「あぁ。捨てられた以前の記憶が無いから、何故捨てられたのかは解らないが」

「つまり……記憶喪失ってこと?お母さんの顔も覚えてないの?」

「そうなるな……でも、悲しくは無い」

「どうして?」

「俺の周りには皆が居る。そのお陰で、淋しくないからな」

「満足………してるんだ」

「住めば都っていうだろ?お前もその内慣れるさ」

(住めば都、か。確かにそんな気もしてきた。)

「ところでさっきの仕事の件だけど…」

「何だ?」

「本当に私達の今の力で勝てるの?」

「まず俺達の力を強くする『秘密兵器』を取りに行く必要がある」

「どこまで?」

「この学園の隣にある姉妹校、『エターナル学園』までだ」



放課後、私達は全員召集されエターナル学園に乗り込む事になった。

けど、秘密兵器って一体誰が持ってるんだろう……?

「着いたぞ」

「でかっ!!!」

大きい………!エトワール学園と同じくらい大きい…………!

ていうか学園全体でどれだけ大きいんだよっ!!

「で?どこに秘密兵器があるの?」

シルビアがユキに聞く。

「まぁ待て、まずは付いて来い」

そう言われ、私達は螺旋階段を使って約地上30Mの3階まで登り、ある教室に案内された。

そこにはなんと私達と同じ、6年Sクラスがあった。

「6年Sクラス?クラス名も一緒なの?」

「まーな」フィルが答えた。

「姉妹校だからクラスも同じだし、クラス同士でたまに合同授業もやったりするんだよ」

「へぇぇ~…」感心するレル。

「で?秘密兵器ってのは結局誰が持ってんだ?」

「あそこにいる3人だ」

よく見ると、教室後方に女子2人と男子1人が居る。

「左側の紫色の髪がナナ、真ん中のゴーグルかけた奴がミハイル、右側の茶髪がリュリ。その3人がクロスナイツだ」

3人は私達に気付いたのかこっちにやってきた。女子は2人共身長大きい…

と、私が二人に気圧されている間に

「よ、ミハイル。『秘密兵器あれ』取りに来た」

「あれか…。ちょっと待ってろ」

ポケットを探るミハイル。

「レルは初めてだったよね。挨拶しなよ」

シルビアが後押しする。

「う、うん…。えっと…初めまして、私はレイ・エメラルド。レルって呼んでもらえる?」

「レルって言うの?初めまして。エトワールに来た子だよね?私はナナ・アメジスト。よろしく」

「私はリュリ・ピンクトルマリン。分からない事があったら何でも聞いてね」

「俺はミハイロフスキー・トパーズ。名前が長いからミハイルって呼んでくれ」

「分かった」

皆優しそうな子達で良かった…ひとまず安心。

「おっ…これだ。ほら」

ミハイルがポケットから取り出したのは、月の形のロケットと星型のペンダントだった。

「これが秘密兵器・三種の神器…の内の二つだ」

どこからどう見てもただのアクセサリーだ。

一体これでどう戦えっていうんだろう?

「戦闘時にこれを使えば『憑依武装』が使える」

「ひょうい…ぶそう?何それ」とレルは聞いた。

「憑依武装ってのは……つまりぃ…」

フィルが答えようとし

「お互いの力を一つに合わせることだよ」

シルビアが答えた。

「―――え?」

……全くもって意味が分からない。

「試してみた方が早いんじゃない?」

「え?試すって………憑依武装を?」

「ユキ、手伝って」シルビアが協力を促す。

「仕方ないな……」ユキが渋々答えた。

「頑張れ、レル!」

「レルちゃんなら、きっと出来るよ」

ナナちゃんとリュリちゃんが後ろから声援を送る。

私は半ば自棄になっていた。


「憑依武装、発動!」


ユキがそう叫ぶと、それに呼応するかの様にロケットとペンダントが輝きだした。

そしてユキの体が光の粒子に変わっていく。

そして、私は一瞬の内にその光を纏っていたのだった。

目をつぶっていたので何が起きたのか分からなかったけど……。

すると次の瞬間、

「成功だね!レル」

「…………え?」

服を見ると、何故か外見が変わっていた。

白を基調とし、青いラインが入った服装で、まるで騎士のような出で立ち。

おまけに、なんとなく違和感を感じる。

「レルちゃん、眼鏡無い方が目が大きく見えるよ」

――眼鏡?そうだ、眼鏡が無いんだ!!

フレームの枠が無いとなんとなく気分が落ち着かない。

そして何より不思議だったのが、

(レル、調子はどうだ?)

…頭の中から聞こえてくる声。

(その声は………ユキ!?)

(分かるか。なら良かった、解くぞ)

ユキに一方的に憑依武装を解かれてしまった。

「二人共凄い魔力だ…」ミハイルが感心する。

「凄いも何も!今のは一体…」

「憑依武装」みんなが口を揃えて言った。

今のが本当に秘密兵器なんだろうか?

「これが『来たるべき災厄』に対する手段だ」

ミハイルは続けた。

その昔、この学園に二人の少年少女が居た。

なんでも彼らはこの三種の神器の力を借り、世界の脅威に立ち向かったんだとか。

しかしある時2人が行方不明になり、未だに消息が掴めていないという。

結局その後継者達もなんらかの理由で行方知れずとなり、神器は長い間封印されてきたが、来たるべき災厄に対抗する唯一の手段である為に封印が解かれ、代表でミハイルに持たされた…のだそうだ。

ちなみに三つ目の「太陽のネックレス」は何者かに持ち去られたらしい。

「という訳だ。その強さなら大丈夫だろう…」

「何の根拠があってそう言えるのさ?」

私の反論を無視してミハイルは星の方を私に、月の方をユキの手元に預けた。

「勘………だな」

ふと、聞きたかったことを思い出して質問してみる。

「そういえば…クロスナイツって普段どんなことしてるの?」

「ロイヤルフォースの影武者とか」

「影武者なのに3人?もう一人は?」

「それは……」ミハイルが顔をしかめた。

「あ、また今度話すね。それより……」

リュリちゃんが話を逸らした。何かまずかったのかな?すると…

「今さっき、黒水晶のオーラが街に広がったって!」

シルビアがトランシーバーで聞いたソレイユ先生からの伝言を皆に伝える。

「本当か!?急がないとな…………皆、支度しろ!」

「ちょ、どこ行くの?」

「何言ってんだ!オーラの正体を突き止めに行くんだよ!あとミハイル達は学園の警備と後援よろしく!さ、お前も来い!」

いきなり腕を掴まれ引っ張られていく私。

「ちょっとぉ~~~~~………」



「レル、すごく楽しい子だったね」

「だよね。レルちゃんか……あの子が例の……」

「そう、運命を覆す者かもしれない奴だ」

「悲しい目に合わないと良いけど………」

3人はフォースが帰った後、彼女の身を案じていた。


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