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Royal Crystal  作者: 碧流
Ⅰ:JewelCrysis
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STONE:3 運命を覆す者 -fortune counter-

「これを進化させる事が出来たら、お前に力があるって事だ」

「はい~~~~!?」

レルの頭の中は?の嵐だった。

ユキは中央に行き、そこに刺さっている剣を指した。

「これが『スターダストソード』。これを進化させて『フォーチュンソード』にしてみろ」

「武器って今使ってるものじゃ駄目なの?」

「確かに使い慣れた剣の方が多少は強いだろうが、魔力も無いと使いもんにならないだろ……」

「それもそっか……で、進化ってどうするの?」

「うーん……ボクが思うに、それに魔力をこめれば良いんじゃないかな?」

「魔力をこめる、か……」と、突然視界が暗くなった。

「あれ、明かり切れちゃった!?………皆?」

返事が無い。

「ユキ?シルビア?……フィル!?」

やはり返事が無い。何かあったのだろうか。

不安で焦る彼女は、とりあえず手元の剣に魔力をこめてみた。

「えいっ………あれ?何も起きない……」

「無駄だよ」

「え?」

近くから他の3人のものではない、男の声がした。

しかし明かりが無いので姿さえ見えない。

声のする方へレルは問う。

「あなたは誰?」

「君はそれを進化させる事は出来ない……決して」

レルの質問を無視し、男は言った。

「どういうこと?」

「君はその剣を進化させる事は出来ない…そう運命が教えてくれている」

「な、そんな事ある訳が…」

「あるよ。だって僕は神だから。何でもお見通しさ」

「神なんて居る訳ない。そんなのデタラメに決まってる」

「嘘じゃない。僕はレイ・エメラルド、君を監視している」

「な、どうして私の名前を………!?」

「神だからさ。何でもお見通しって言ったじゃないか」

「じゃあさっきのも本当に……!?」レルは困惑した。

「本当だよ」

「………嘘だ」

「何故そう言い切れる?」男は尋ねた。

「私はそんなのに縛られる筋合いは無い。万が一あったとしても、何とかして断ち切ってみせる」

「強がらなくても良いんだよ」

「後悔したくないんです」

「そう……だったら君が本当に運命を覆せるのか、見届けてあげる」

「勝手にして下さい………運命なんて、私には関係ない!」

すると突然、レルの視界が開けた。



「どうした?いきなり立ち尽くして」

ユキがレルの顔を覗き込む。

「あ!?………あぁ、大丈夫」

「無理しないでね?」

「ありがと、シルビア……じゃ、行くよ」

彼女はありったけの魔力を剣にこめた。

「はぁぁぁぁ!!!」

すると、剣が光り出し、見る見るうちに外見が変わっていく。

「これは………『フォーチュンソード』じゃねぇか!!すげぇ!!」フィルが叫んだ。

その様子を見るなり、一同が驚いた。

やがて光は収まり、剣はさっきと見た目が変わっていた。

「進化……させれた?やったぁ!!」

「おめでとう、レル!これでテストはクリアだね!!」

「うん、皆のお陰だよ!!ありがとう!」

「いや、ボクはそんな…えへへ」

シルビアも喜んでいる。

「お前には力があるみたいだな……これからはその剣で戦えよ」

「………うん!」


そして、世界の狭間からその一部始終を見ていた神が一人。

「本当に運命を覆すなんて………いや、彼女は既に運命を覆していたのか……?」

彼は考え込んだ。

(まさか、彼女は運命を覆す存在……「フォーチュン・カウンター」なのか?)と。



地下祭壇から戻った私達は、夕食を終え、床につこうとしていた。

「此処が私達の寝る部屋?」

「そうだよ。ボクとレルがこの部屋、ユキとフィルは隣の部屋。特にこの二部屋はロイヤルフォース専用になってるから豪華なんだ」

「へぇぇ……」言われて私は気が付いた。

確かに他の部屋とは趣が違う。

その上、家具や調度品まで高級な作りになっていた。

「じゃあボクは下の段で寝るから、レルは上の段で寝てね」

「はーい」

「ところで……」

「?」

シルビアが何か言おうとしている。

「どうしたの?」

「いや、さっきのレルのフォーチュンソード、凄かったなぁと思ってさ」

「え?私が元々持ってる武器とそんなに変わらないよ?」

「ボクにもそういう力があればいいのになぁ………」

「どうして?」

「ボクが何で『ボク』って言ってるかわかる?」

突然難しい質問をされた。

「それはちょっと……わかんないな」

「あのね……皆を守りたいからなんだ。ロイヤルフォースの皆とか」

ふと、シルビアの実家について気になったので質問してみた。

「そっか……そういえばさ、シルビアの実家って何処なの?」

「ん……それは…」

この質問はまずかっただろうか。

もしや、両親が居ないとか…

「ごめん、言いたくなかったら良いよ」

「レル……この際思い切って言うね。ボク、この英国の王女なんだ」

「ふんふん、王女…って、えぇ~~~~~~~~っ!?」

「しっ。声がでかいっ」

「ごめんっ」

これには驚いた。

まさかシルビアがお姫様だったとは…。

正直言うとてっきり田舎かどこかの出身だと思ってたのに……。

「ボクの名前のミドルネームの『E』は、代々王女に受け継がれる『エリザベータ』のE」

「ほぇぇ…!!」

ミドルネームにそんな意味があったなんて。

「で、こっからは皆には内緒だよ。実はフィルが持ってる紅のジュエル、あれ元々ボクのだったんだ」

――――フィルがシルビアのジュエルを持ってるって?

「なんであげちゃったの!?勿体無い…」

「実は昔、ボクが一度城から脱走した時にフィルに助けてもらってさ……そのお礼にあげちゃった。あの時はまだジュエルの重要性も知らなかったし」

「その後は?」

「結局兵隊達に捕まっちゃってお父様の雷が落ちたよ……けど、フィルの説得で」

「両思いになった………と?」

「うん…親公認でね。お父様も話せば分かってくれた」

シルビアがもじもじし始めた。

「だから誰にも言わないでね?絶対だよ!?」

「はいはい」相槌を打っておく。

「じゃ、ボクもう寝るね」

「うん、おやすみ」

「おやすみー」

まさかシルビアにそんな過去があったなんて……。

彼女の性格からして信じられなかった。

でも、こんな裏話が聞けたなんてラッキーだなぁと思いながら、私は寝た。

明日は一体どんな一日になるんだろう?今から楽しみだ。


次の日。レルにとってこの学園で初めての授業が始まる。

しかし授業内容は新学期早々テストであった。


「テストぉ!?聞いてないよ!!」

草むらに寝そべっていたレルは突然大声を出した。

「って言われても…皆春休み中に勉強してるからさ……?」

シルビアがレルを諭す。

が、転入生のレルは勿論そんな話は一切聞いていない。

転入が急過ぎたので対処のしようが無かったのだ。

という訳で、レルはぶっつけ本番でテストに望む事になった。



「テストっていっても簡単だよ?国語と算数と理科と社会と魔術だから」

「は?国語?まさか……」

「そ。日本風に言うなら英語だね。英国に住む以上英語くらい使いこなせなきゃ」

「英語なんて単語しか分かんないよ!!」

転入する前にレルはソレイユから英語の手解きを受けていたが、単語程度しか理解出来なかった。

「無理!英語無理ー!!外国人怖いー!」

「何で外国人が怖いのさ…?てかボクも外国人…」

「シルビア達は良いけど他は無理!だからダメー!!」

「そんな所で駄々こねても仕方無いだろ。いい加減腹決めてテスト受けろよ」

「ん?その声は……」

ユキが上から目線で腕を組み、レルを見下ろしていた。

すると草むらに寝そべっていたレルの首根っこを掴み、無理矢理教室に引きずって行くのだった。

「ほら行くぞ」

「うぅ……テストなんか嫌いだぁーーーーーー!!!!」

「レル………頑張れ」

シルビアは呆れていた。


レルは筆記(英算理社)の問題用紙と答案用紙をもらい、それを見るなり絶望した。

(なにこれぇ………)

しかし白紙の答案を出すより何か書いた方が当たるかもしれないので記号問題は全て記入した。


そして筆記試験終了後。

ランチを食べ終わり5時間目に突入する直前の昼放課に、レル達ロイヤルフォースは席で駄弁っていた。

そもそも何故席で会話出来るかというと、4人の席は教室の窓側後方に偏っており、レルとユキが一番後ろで相席、シルビアとフィルがその前で相席になっていたからである。

「お前テスト中ずっと考え込んでたよな」

「これでもわかんないなりに頑張ったんだよ」

「割と粘った方じゃない?」

「此処は日本程ゆとりじゃねーから筆記は難しいんだよ。まともに出来るのはせいぜい魔術ぐらいじゃね?」

「うぅ……そんなにボロクソ言わなくたって」

レルは肩をすくめた。


リーンゴーン……


チャイムが鳴ると同時に、皆は整列し運動場に出た。

魔術のテスト内容は、かつてレルが大惨事を引き起こした………魔術の発表だった。


(そんな………)

レルの顔がみるみる内に暗くなってゆく。

昨日昔の事を思い出し、二度とそんな事はしないと胸に誓ったのではないか……

そんな思いは彼女の中からとうに失せていた。

出席番号順に魔術を発表し、レルの出番が迫ってくる。


(……またあんな事になるんじゃないか)

(………また、親友を失くすんじゃないか)

(また………居場所を失うんじゃないか)


レルが過去のトラウマに襲われていた、正にその時。

「なんとかなるだろ」

背後でユキが呟いた。

どうやら彼なりに気遣っているらしい。

「………え?」

彼女は驚いていたが、彼の言葉で正気を取り戻せた様だった。

やがてレルの出番が来て、彼は今まで見た事が無い魔術を目の当たりにした。


「よく出来たな」

「……………」

「まだ何かあるのか?」

「いや……………」

「?」

「ありがとう……―――ついでに、ごめん」

レルに言葉をかけられたユキは、内心戸惑いを隠せなかった。


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