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『DIABOLOS』  作者: 神威
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Prologue2

‐2006 female Y‐


舞い上がる砂埃。

高らかに鳴り響く金属音。

雨の様に降り注ぐ無数の弓矢。

四方から聞こえる怒号。泣き声。祈りの言葉。


『私』は少し小高い丘から眼下に広がる戦いを見つめていた。


人の姿をしている者。

そして、異形の者。

両者が互いの命を奪い合っている。

だが…どう見ても異形の者達の方が優位にある。

異形の者達は皆、全身を覆う黒のローブを纏っている。

顔には無表情の白の仮面。

振り下ろされる剣や斧。

その餌食となり、ただの肉塊に変わり果てた人の姿をした者達。


【ここは地獄…?】


『私』は目前の惨劇に目を逸らす。

すると、逸らした視線の先にまだ幼さの残る少年の姿が写った。

【ここに居ては危ない!】

『私』は少年の方へ駆け寄る。

すぐ前にいる少年を抱き抱えようと手を伸ばす。

しかし、伸ばした手は虚しく宙を切る。

【なぜ?】

もう一度、手を伸ばす。


結果は…同じ。


少年は泣いている。

祈りの言葉を繰り返しながら。

眼下の戦いを泣きながら見つめている。

まるで『私』の姿など全く見えてはいないかの様に。【私が見えないの?】

尋ねてみるが返事はない。

姿が見えないだけではなく、声も聞こえていない。

【…!ダメ!!】

突然、少年が戦場に向かって走り出して行く。

咄嗟に後を追う。

止めようと何度も手を伸ばすが捕まえられない。

【ダメ!!戻って!!】

叫んでも止まらない。

少年は落ちていた剣を掴むと、背を向けている敵に斬り掛かっていく。

【……!!】

気配に気付き、白の仮面が振り向く。

向かい合い一瞬の恐怖に身動き出来なくなった少年を異形の者が見下ろす。

仮面越しだが、それでも分かる。


明確な『殺意』

他者を殺す事への『快感』

酔い痴れる『甘美』


迷わず振り下ろされた剣は少年の左肩を切り裂いていく。

溢れ出す血液。


【やめて!!!】


『私』の声を無視して二撃目が振り下ろされる。

砕ける骨の音。

異形の者の剣が少年の頭蓋を捕らえた。 

無惨にも原型を留めていられなくなった躰が乾いた地面に崩れ落ちる。

足元に広がっていく濃い紅の波紋。

裸足の足に触れる、生暖かい感触。

満足そうな笑いを浮かべ見下ろす異形の者。



【許さない!】


不意に『私』の中に込み上げてくる憤怒。憎悪。

少年の手を離れた剣を両手で握り締める。


【許さない!!!】


両手に力を込め、剣を振り下ろす。

しかし、見事に剣で受けとめられてしまう。

それでも『私』は負けじと剣を振り回し斬り掛かる。


飛び散る火花。

ぶつかる度に鈍い衝撃が腕から全身へと伝わっていく。


【なぜだ!?まだ子供だったのに!なぜ…】

「なぜ、殺したのか?」異形の者が初めて口を開く。

【……!!!】


「私の声が聞こえるのか?」

『私』の代わりに『私』の疑問を声にする。

あまりの驚愕に躰の動きを奪われる。

「私には見えている、聞こえている。お前の姿、声。そして…」

少年の死を前に冷静さを失った『私』の思考が一斉に回り始める。

「触れる事も出来る…」

立ち尽くす『私』の頬に触れる冷たい掌の感触。


【ど…う…し…て…?】


混乱。


「なぜなら…」

異形の者がゆっくりと仮面を外す。

まるでスロー再生の様に。


【……!!!】


外された仮面の下に現れた顔…


「私はお前だからだ…」


口元には残虐で歪んだ笑み。濁った暗い瞳。


それは紛れもなく『私』の顔だった…



叫びに近い声を発しながらベッドから飛び起きる。

全身を伝う冷たい汗。

激痛に上がらない頭を手で支える。

ベッド脇のサイドテーブルにある時計に目をやる。時刻は午前3:00‐


「またか…」

重い躰を必死に起こし、室内にある小型の冷蔵庫に向かう。

ミネラルウォーターを取り出すと一気に流し込む。

喉を通る水の冷たさに少しづつ躰と頭が冴えていく。


昔から繰り返し見る『悪夢』

戦争の夢だとは分かるが、そこにある真意は分からない。

ただただ気味の悪い『悪夢』

お陰で私は常に寝不足の状態だ。


夢なんか見ずにただ眠りたい…


知人の医者に睡眠薬を処方してもらい服用していた時期もあったが、効果は全く得られず薬に頼るのも諦めてしまった。


「逃げられない夢ってやつか…」

不意に出た独り言に苦笑しながら閉じられたカーテンを開ける。

窓の外には全てを飲み込んでいく様な漆黒の闇。

じっと見つめていると、あの白の仮面が現れそうな感覚になる。

再び乱暴にカーテンを閉め私はシャワーを浴びる為、寝室を後にした。



静寂に包まれる寝室。

微かに開いているカーテンの隙間から、紅い満月が輝いていた…

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