表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『DIABOLOS』  作者: 神威
4/24

Prologue1

‐2006 male S‐


僕は唄う。

貴方への愛を込めて…


僕は、唄う。

狂おしい程の、貴方への愛を込めて。


手を伸ばせば届く場所に居る筈なのに…

どんなに手を伸ばそうとも届かない貴方へ…


ありったけの想いを託して。

今日も僕は…声にならない貴方への愛を唄う。


ただ、貴方の為だけに…



午前2:00‐

防音設備が完璧に整えられたプライベートルーム。

中央に置かれた白いグランドピアノに向かい、翔は鍵盤を無心に弾いていた。

流れるメロディーはどこか(はかな)気で寂しいバラード。

翔自身の作曲で、あえて歌詞は付けられていない。

この曲が好きだと言ってくれた『あの人』が歌詞は必要ないと言ったせいである。

『あの人』の為だけに創られた曲。

だから翔はその意向のままに歌詞を付けずにいた。

どちらにせよ、歌詞を付ければ内容は一つの想い一色になってしまう。

そうなれば『あの人』はこの曲を好きだとは二度と言ってくれないだろう。

それが分かっているからこそ、メロディーだけのままとなっている。



翔はふと鍵盤から顔を上げる。

ピアノに寄り添い、翔をじっと見つめる女性。

白い肌に長い黒髪。

女性は優しい笑みを浮かべている。



貴方は僕がピアノを弾く時、いつも傍にたたずみ優しく微笑んでいる。

貴方はゆっくりと手を差し出す。

僕は鍵盤に置いた手を貴方に向かって伸ばす。

だが、僕の指は虚しく宙をかすめる。

いつもと同じ。

いつもと同じ『幻』


現実の貴方は決して僕に優しく微笑んではくれない。

手を差し伸べてはくれない。

痛いほど理解している筈なのに…


僕は眠れない。

現実から眼を背けてしまいたい。

だから、ずっと眠っていたい。


だけど…幻よりも現実に微笑む貴方を見たい。

矛盾・絶望・希望・ジレンマ・愛情・憎悪。

入り交じる様々な想いと葛藤しながら。

僕は結局、今夜もピアノに向かっている。

眠れない永い夜が明けるのを待っている。



厚いガラスの窓越しには紅い満月が輝いていた…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ