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『DIABOLOS』  作者: 神威
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Orympos 〜オリンポス〜

此処(ここ)』とは異なる次元の世界。

〜オリンポス〜

その世界の遥か遠き(いにしえ)

豊かな緑の大地。

透き通る水の流れ。

果てしなく広がる青の空。

見る物や触れる物。

それらは様々な色や音に彩られ、美しい旋律を奏でる。

其処に住む人々は当たり前に自然を壊す事無く共存している。

この世界に在る全てのモノは神が与え、オリンポスの王が守ってくれている『大切な贈り物』なのだと。

もちろん、争いなどない。

誰かと。何かと。戦う。

その概念自体が存在しない。

皆が家族であり、友人であり、愛する人である。

人々の顔には笑みが溢れ、穏やかでゆっくりとした(とき)を刻んでいく。


『至高の楽園』


まさにその言葉に相応しい、誰もが一度は憧れるであろう世界。


其処に住む人々はその楽園が永遠に続くと信じて疑わなかった。

いや…

『どんなに素晴らしい世界も、いつかは壊れ滅んでいく』

それ自体を考える事さえなく日々を生きていた。

『光』の裏側に必ず在る『影』が少しづつ、でも確実に侵蝕し始めている事に気付かずに…



オリンポスの中心部にある空中に浮かぶ白き光を放つ宮殿。

宮殿の中央にある王の間の玉座に一人の女性が座っている。


オリンポスの女王、ガイア。

長い金の髪。金の瞳。

白く透き通った肌と同じ白く長い神衣を(まと)っている。華麗な細工を施し、中央には碧く輝く宝石があしらわれる白金の首飾りを着けている。

それは王の証である首飾り。


首飾りの宝石を指先でなぞりながら、美しい顔には暗く憂いの表情を浮かべている。

ガイアの前には片膝を付いたまま控える二人の人物。

一人は白銀の髪に碧い瞳の男。

オリンポス唯一の軍を率いる将軍、ソリドール。

もう一人は黒の髪。薄紫の瞳と額に紅きチャクラを持つ女。オリンポス史上最高と謳われる魔道師、レア。

二人とも白い革の軍服に似た上下に長いマントを羽織っている。

長い髪は彫刻を施した揃いの髪飾りで後ろに束ねている。


俯く顔にはガイアと同じ様に憂いを浮かべている。

「やはり、避ける事は出来ないのですね…?」

ガイアが静かに口を開く。

レアは顔を上げると真っすぐにガイアを見る。

「彼らは日毎に力を増しています。オリンポスの結界を破り侵入してくるのは時間の問題です」

ガイアの口から溜め息が洩れる。

「私達に残された時間は僅かだという事ですね?」

「彼らには話し合いや譲り合いというモノ自体が存在しません。もはや戦いは避けられぬかと」

「ソリドール。その場合、軍は応戦するだけの力を持っていますか?」

ソリドールもまた真っすぐにガイアを見る。

「我々は秩序を守るという名目で作られた形だけの軍。それでも軍に所属する者達はオリンポスでは強き者達ばかり。彼らの軍に対抗出来うる力は保有しています」

ガイアは憂いの表情を濃くして呟く。

「しかし…彼らに勝てる程の力はない…」

王の間に重苦しい沈黙が流れる。

「我らは争いを好みません。だからこそ戦いを経験した事がない。戦いだけが生きる道としてきた彼らに私達は勝てる可能性がない…」

ガイアの言葉にソリドールが立ち上がる。

「ガイア様、それでも私達は負ける訳にはいかないのです。諦める訳にはいかないのです。このオリンポスを守る為にも」

ソリドールの強い口調にレアも立ち上がる。

「勝てぬかもしれない。だからと言って、初めから諦める事も逃げる事も出来ません。だからこそ我らは、己の出来る限りの力を尽くします」

二人の決意に満ちた言葉を受け止めガイアは静かに頷く。

「私が初めから弱気では民が不安に襲われる事になる。戦う事がもはや避けられぬ運命なら受け入れましょう。負ける為ではなく、勝つ為に…」

二人は頷く。

「では、直ちに準備に取り掛かって下さい。しかし、まだ民には悟られぬ様に。不安は乱れを呼び込みます。良いですね?」

ガイアは控えたままの他の側近達に命じる。

慌ただしく王の間から下がっていく側近達。

そして二人に向き直り優しい笑みを称える。

「貴方方も今は充分に休養を取り、来たるべく戦いに備えてください」

「有り難きお言葉。では失礼します」

二人は深く礼をし、王の間を後にする。



一人残されたガイアは外に広がる庭園に視線を移す。

「全ては私が犯した過ちの結果…そのせいでこれから多くの血が流れる…罪を背負うべきはこの私一人だというのに…」

深い悲しみを称えた瞳はこれから起こる戦いを見つめていた…

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