ようこそ、ミライ大学へ。
メイキョウ地方のワード区、まるで宮殿を連想させるような大きな建物、人々が和気あいあいとしながらも集団や個人で次々と入っていっている……。
『ミライ大学』はこの第二の地球上、トップクラスの成績を誇る国立大学だ。合格率は僅かの8%であり、偏差値は『第二の地球』上の大学では高く、数多くの医師や教師、そして、天才科学者がこの大学を卒業している……。
また、同じ設立者が、『ミライ学園』と呼ばれる学園も設立されており、こちらも偏差値が平均よりも高い成績を誇る為、初等部からエリート学園と呼ばれている。
そんなエリート大学の前に、女子大学生がテキパキと歩いて行った……彼女は大学3年生の『朴澤 叶羽』、幼い頃から厳しい環境で育てられ、習い事ばかりの生活を送っていた……宿題が終わったら、次に英会話教室、放課後は剣道を週に4~5回と……叶羽は真顔でそんな日々を送っていたのだ……。
そして、本日は1週間前の定期試験の順位が発表される日だ。学生たちは皆、職員室前にある掲示板の前に集まり、それぞれの名前を探していた……『やったー』と嬉しい声と、『え~~?!』と悲しむ声が複数と交わる中、大学3年生の中では驚きの声が隠せなかった……。
「一位は……また朴澤かよ?!」
「ええ?! あのテスト、難しかったのに……特に物理が……」
大学3年生の間では、高得点を叩き出した、叶羽の方に視線を集めた……。
「いえ……当然の結果ですので……しかし、まだまだ私はこれで満足してはいけない気がするんです……」
「相変わらずだな……でも、休むことも大事だぞ?」
「はい、それは承知の上です。会長も好成績を叩き出しても、そう簡単には満足しなかったと思います」
そう、何を隠そう真面目な叶羽は日々の積み重ねにより、見事ミライ大学の学生自治会の副会長を務めている。
それは、一年前……彼女が学生自治会の副会長に立候補した頃だった……校舎の周辺にある木が黄色く染まっている時期の中で、演説や宣伝などの活動を一生懸命に取り組んでいた。彼女は大学1年生の頃から学生自治会に所属していたが、本来ならば学生自治会長を狙っており、候補者として参加する。しかし、投票により敗北して副会長として立候補した。
見事、投票に勝ち取った……つまり、現学生自治会長の名前は『明坂 夕菜』……叶羽よりも一つ上の先輩である、現在は大学4年生の学生だ。
――「清掃! 大学内の美化週間をこれまでの倍に増やそう!」
――「活動! 学生自治会の挨拶活動に練習をするべきかと思います!」
彼女も大学1年生の頃から学生自治会に所属しているが、性格は叶羽と違い堂々としており、言葉遣いが傲慢に感じていた……最初は『あの人が、役員になったら、まずいんじゃないか』と静かに距離を置いていた……。
そんな、諦めた表情をしながら食堂に向かう、和気あいあいとしたグループ同士で楽しくランチを満喫していた端に叶羽は健康のいい、肉野菜炒め定食を頬張る……ゆっくりと食べていた叶羽の横に、会長となった夕菜が隣の席にゆっくりと腰を下ろした。
「叶羽、焦る必要はない……」
「あっ……夕菜先輩……いえ、会長……おめでとうございます……」
「感謝! 皆の期待に応えるように、精々と努力するぞ!」
夕菜は堂々とした笑顔を見せた後、すぐに表情を変えて、叶羽の顔色を伺う……。
「叶羽……会長になれなくて、ガッカリすると思うが、見事に副会長を務めることが出来ただろう?」
「おっしゃる通りですが……私は、『ミライ大学』の秩序維持をどうにかしようと、必死に歩み続けました……しかし、惜しくも会長にはなれず……」
「誤解! 学生自治会は、役員一人一人の力でこの大学をよりよいものとする組織だろう? 叶羽にはまだ足りないものがある……! それは、『楽しさ』だ……秩序維持も立派なことだが、それに偏ると厳しい校則だと疑われてしまうだろう? この社会は、何事もバランスは大事なのだ! そして、この大学が大好き……それも一つの理由だ……私は会長となったが、『個人』の目標としては最初の一歩だ……これからの事に備えられるように、色々と準備していきたいと私は思う!」
「会長……そんな風にお考えでしたか……確かに、私は習い事ばかりで『楽しい』と感じたことはあまり考えず、真面目に生きる事が全てだと思っていました……ありがとうございます、私も副会長として皆様を、そして会長も支えたいと思います」
叶羽は夕菜の考えを聴いて、微笑みが戻ってきた……今まで正々堂々としており、ただ理由もなしに学生自治会長を務めている訳もなく、しっかりとミライ大学の事や人々の事を責任を持って考えてくれている、彼女も真面目な人だと悟っていた……叶羽はこの会話にとって、習い事や、サークル活動で大忙しの叶羽にとっては、かなり貴重な休息の時間だった……。
そして、時は流れ、桜が全て散り、木が緑一色となった時期での学生自治会室に、役員全員が机に資料を置いている中で、向かい合っているのだった……そして、会長の夕菜は大声でこう話す。
「開幕! 学生自治会による定期会議を開始する!」
夕菜は次々と、大学で起こっている問題や解決策についてなど、的確かつ真剣に話していた……そして、会議終了の締まりに落ち着いた感じでこう話した……。
「皆に重要なお知らせがある」
役員は真剣な表情で夕菜の方に視線に向けた。
「速報! 私は、別の学園に長期留学することとなった!」
「えっ……」
「場所はエンシマ地方で、『ミライ学園』の新たなる姉妹校の『フィア・バード学園』だ!」
夕菜は正々堂々と、『フィア・バード学園』の画像をモニターに映し出した。まるで、新型の建物を連想させる構造で、最近開校した学園らしい……。
あまりにも唐突すぎる展開で、叶羽は目を丸くしながら話していた……。
「そんな……! これまで歩み通してきた、学生自治会の未来は……そして、誰よりもこの大学を愛していた貴方が、どうしてここを離れるのでしょうか……」
「学生自治会は、我々の力でこの大学をよりよいものとする組織だろう? しかし、私は学年自治会を務めて来年でもう四年を経とうとしている……これからの時代は、若造の力がだんたん必要になっていく……これまで会長の座を歩み通せたのは私の実力のみではない、皆の協力があるからこそ、ここまで歩み通せたのだ」
「しかし、私も副会長としての実力は自分でもまだまだだと思います」
「なぁに……あくまでも留学だ……転校するとは一言も言ってない。会議は通信で行うが上、そちらに緊急事態が発生したらすぐさまに戻る。私がこの機会を決めたのは理由があるのだ……何度も言った通り、若造の力が必要な場面が増えるのだ。『少子高齢化』は『第二の地球』内でもどんどん進んでいく、このままでは更に未来では、ウイルスによる侵攻抜きとしても滅亡の危機に陥ってしまうだろう。だから、私は少しでもその危機を回避し、様々な方向で物事を見ていきたい。これが、大きな理由だ……叶羽も諸君らも、十分頑張ってきた事を私はよく知っている。しばらくの間、私が端末越しの会議となっても、ミライ大学の『これから』を守り通す事は可能だと私は信じている」
夕菜は情熱の眼差しで手を胸に当てながら、強くも温もりを感じる声で話していた……叶羽は、腰に充てていた刀を両手に持ち、真剣な声で誠意を示す。
「わかりました……会長がおっしゃるのなら、この『朴澤 叶羽』は……刃に誓い、学年自治会を導く『矛』となってみせましょう……!」
「うむ! 叶羽、引き続き副会長として皆を導いてくれ! 他に意見がある者はいるか?」
夕菜は意見を聞くも、反対の声は一切出なかった……こうして夕菜は長期の間、エンシマ地方の『フィア・バード学園』に留学することとなったのだ。
この思い出を胸に刻み、およそ一週間、学生自治会の会議にウイルスである、『バグ・ブルズ』の群れの目撃情報がワード区付近にて、声が挙がったのだ……そして、昼間のミライ大学にホールが現れ、中から牛のような姿が一直線になりながらミライ大学に突進していた……! 叶羽はそんな群れの前をものともせずに、刀を持ちながら構える……。
「この学園の未来を潰す者は……許しません……! はぁ!!」
叶羽は、『Typeの力』の一つである、『Light』タイプの力を蓄えていき、バグ・ブルズの群れに対して、刀を一気に振りおろしていった!
「ブモォォォォォ!!」
バグ・ブルズの群れは、うめき声を発しながら因子となっていった……叶羽は、刀を筒にしまいながら夕菜の顔を思い浮かべる……。
「我々、学生自治会はミライ大学の『これから』を守り通して行きます!!」
――「叶羽副会長……? ぼんやりしているなんて、珍しいですね……」
「あっ、流花さん……すみません、昔のことを思い出してしまいました……」
叶羽は、ふと我に返ると、学生自治会の書記の『青春 流花』が、目の前に話しかけていた……叶羽は会長である夕菜との出来事を思い出して、ふと思い出したのだ……。
気がつくと、周りが冷ややかな空気になっていたのだ……。
「なんであの人、職員室前にいるの……?」
「すっごい目つき……ご機嫌斜めそうだから近寄らない方がいいよ……」
学生達の視線は、ピンク髪の男子大学生に向けていた……両手をポケットに入れながら、周りを見下しながら歩いていた……。
そのピンク髪の男子大学生は、叶羽と目が合い、機嫌が悪そうに近寄ってきた……。
「あ~~学生自治会の堅物メガネ……叶羽と言ったか……? 学生自治会の副会長さんが、この不良学生になんか用かよ?」
「貴方は1年生の『平良川 隆則』君ですね? 全学生から態度が良くないと苦情を出されています……『服装の着こなしが悪い』、『食べ方が汚い』と風紀委員会の学君にもさんざん注意されていましたよね?」
「チッ、めんどくせぇな。あの、近所のじじい並に口うっせえ風紀委員さんに耳がタコになるぐらい聞かされてたぞ。でもなぁ、俺のようなヤンキーにばっかり気にかけてねぇでよぉ、他の学生にも気にかけておくべきだと思うぜ?」
「そうですか、確かに一点過ぎた事は反省いたしますが、貴方も言われたことをしっかり守った方がいいと思います。学君もあなたのことが心配で言っているかと。もし、それでも拒むようでしたら、一つご提案させてください」
叶羽は、人差し指を数で表しながら、堂々とした声で、隆則にこんな提案をする。
「学生自治会長が貴方の視線を向きました。貴方さえよければ……学年自治会に一役買ってはくれますでしょうか……?」




