大収穫
「そうだよなあ…」
鑑定士は神妙な顔つきでうなずく。
その表情をみて、赤髪の女性は何かを察する。
「もしかして、踏み倒す方法があるっていうの?
…そういえばそのピアス。なんだか闇魔法のオーラを感じるわね…まさかそのピアスが?」
カウンターの上に置いてあったピアスに目を向ける。
これ以上隠すのは無理だな…と諦めた鑑定士は白状する。
「…ああ、そのまさかだ。
この二人がダンジョンボスからドロップしたそうだ。」
こんにちは~とハレが笑顔で挨拶し、その隣でレインもぺこっと頭を軽く下げる。
「あら、お若いのに優秀ね…。」
「ああ、実際優秀だよ。最近結成して2年そこそこでAランクまで行ってるわけだからな。」
鑑定士は嫌そうな顔で実力を認める。
「2年で!?それはまたスピード昇格ねえ。
あ、そういえば10年前にも異様に昇格が速いパーティがあったような…」
その言葉が出た瞬間ハレの笑顔が固まり、眉をピクッとさせる。
空気が少しピリつく。
レインがこの話はまずいと話を変える。
「あ~それで鑑定士さん、ピアスはおいくらで買い取っていただけますか?
魔導書も良ければ買い取っていただけるとありがたいのですが。」
「おっとそうだったな。…よし、二つ合わせて金貨175で買い取ろう。どうだ?」
「分かりました。それでお願いします。いいよね、ハレ?」
声をかけられて我に返るハレ。
「あ、ああ…。えっと、あと諸々頼める?先に外出てるな。」
「うん、分かったよ。」
ハレは店のドアを開けて外に出て行った。
赤い髪の女性はそれを見送って、気まずそうに問いかける。
「私、あの子に何か気に障ること言っちゃったかしら…?」
「ああ、えっと、気になさらないでください。
さっき言ってた5年前のパーティなんですが、ちょっとした因縁がありまして。」
「あら、そうだったの…悪いことしちゃったわね…」
「いえいえ。
それより、魔導書の解読ありがとうございました。おかげで想定よりかなり高く売れました。」
「いいのよ~、初めて見る魔導書で私も興味深かったわ。
今度はうちの魔法屋にも寄ってね。」
「はい、是非。」
レインはカウンターで鑑定士と今回の買い取りの契約書を書く。
そして、鑑定士から金貨の入った袋を受け取り、店を後にした。
魔法屋の女性と鑑定士はまだ何か話しているようだった。
外に出てハレを探す。
ハレは人目もはばからず腕立て伏せをしていた。
思ったより元気そうだ、と少し笑ってしまうレイン。
「ハレ、お待たせ。これでご飯行こう。」
金貨の入った袋を掲げて見せる。
「おお~!今日はパーッとやりますか!」
――――――――――
~酒場~
売買契約書
「アンデッドカンパニー」
金貨100枚
「魔導書・闇」
金貨75枚
2枚の契約書がレインの手元にはあった。
「マスター、ビールお代わり!」
「はいよ~!」
いつの間にか一杯目を飲み干し、次のビールを注文していた。
「で、ハレ。当分の生活資金は稼げたわけだけど、どうする?」
「ん~装備の新調もしたいし、しばらくこの街に滞在しようかな。
そうだな、一週間後に出発しよう。」
「わかった。じゃあ一旦各々での行動だね。」
「おう!何はともあれ今日は…」
「おまたせしました~ビールです」
「飲むぞ~!!」
「おうおう、上機嫌だなハレ!
何かいいことでもあったか~?」
近くの席で飲んでいたスキンヘッドが近づいてきて、ハレに話しかける。
「お~マックス!今回の遠征が大成功でな!」
「そうかそうか。新進気鋭のAランクパーティ様の冒険譚、ぜひ聞かせてくれよ!」
「はっはっは、仕方ねえな~!」
酒が入ってご機嫌なハレは今回の旅路を、楽し気に語った。
レインはそれを子を見守る親のような表情で聞いている。
いつの間にか周りに人だかりができて、皆が時折突っ込みを入れながら話に聞き入っている。
そして、気分が良くなったハレは「今日は俺のおごりだ~!」と高らかに宣言。
店の外まで響くオーディエンスの歓声が上がるのだった。




