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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

星枝

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 つぶらやくんは、「星枝」なるものを見たことがあるかな?

 その名の通り、無数の星をその中にたたえる枝のことで、人によっては夜空に溶けこんで一部になったかのような姿に思えるという。

 しかしそれはあくまで夜間に重なり、枝そのものもまた自らの力で光を放てるものだったときに観測できるパターンのひとつにすぎない。

 中には、暗闇できらめく光としての星ばかりでなく、昼間に黒ずんでしまう格好で目立つ星の姿もあるようだ。美しさという点では今ひとつに思えるかもしれない後者だが、意味の重さとしては勝ることがしばしばだという。

 少し前に地元で聞いた話なのだけど、耳に入れてみないか?


 今から数十年前。この星枝が大量に観測されるときがあったのだと、祖父が語ってくれた。

 星枝は、ほとんどが自然に発生するもの。その神秘的なよそおいも手伝って、太古には占いの材料とされることもあったそうだ。

 しかし、長く付き合いを続けていくうちに、地元の人々は星枝の発生条件をある程度把握できるようになっていった。


 俗に「ハレ病」と呼ばれている。

 地元近辺をのぞくと、ごく限られた地域でしか見られない風土病の一種とみなされているそうだ。

 名前の由来は二つ。

 一つは体中に腫れがあらわれてしまうこと。どこにぶつけるでも、虫に食われるでもなく、赤い隆起がぽつぽつと肌に浮かんでくる。

 もう一つは、そのような状態になった人間が、晴れの日を迎えた際に、ふと姿を消してしまうこと。ふらりと、出かけるようにしていなくなるばかりじゃあない。ちょっと目を離した間に、まるで手品をしたかのごとく一瞬でいなくなってしまう。

 病の存在はずっと古くから知られていたものの、対処に関しては長いこと不明のままであり、当時の人々にとっては天命としてあきらめるよりない状態にあったという。


 それが星枝との関連性が見えてきたことにより、状況が変わっていく。

 星枝の発生は、そのままハレ病のきざしと読み取ることができたものの、星枝そのものに手を加えることによってハレ病をある程度まで防げることが可能になったんだ。

 その際、使われるのは石鹸。それも馬や牛の脂を用いて製造される動物性のものだ。

 これらに、ぐっぐっと指を押し込んである程度の時間そのままで待機。人の皮脂を微量ながら含ませることで星枝へ対する準備ができあがる。

 その石鹸を、枝に現れた斑点のごとき星たちひとつひとつへ塗り付けていくんだ。

 星枝は一本見つけると、半径1キロ以内にまた同じような枝ができていることが多い。それらを地区ごとに練り歩きながら探していき、石鹸を塗り付けていって星をすべて消してしまう、というのが流れだそうだ。

 くだんの数十年前は実に数十キロの範囲内で、星枝たちがとびとびの状態で見つかった。地域ごとに声掛けがされて皆が石鹸を塗り付けていくことがあったのだとか。

 過去の事例を見ても、ここまで規模が大きいものはまれ。対処そのものも100年近くぶりということで、大わらわだったのだそうだ。

 当時、子供だった祖父も参加したとのことだけど、いい思い出ではない。


 石鹸を塗るにあたり、注意することがある。それは体に、特に腕に腫れが見られるものは参加するのを控えたほうがいいというものだ。

 腫れはハレ病の兆候であるとともに、呼び込みのもとになる。なので作業にたずさわるのは避けるべきである、と。

 だが祖父の住まっていたところの近所のおじさんが、石鹸を塗る作業の最中、腕に腫れをこさえてしまったとのことなのさ。

 どこかへぶつけた様子などもないのに、半そでだったおじさんの右腕に突然現れた赤い皮膚のでっぱり。それは祖父の見ている前で、たちまちおじさんの腕全体へ水玉模様のごときかっこうで数を増やしたこと。

 そして次の瞬間、おじさんは夜空になった。

 おじさんの四肢、胴体、頭……体中の何もかもがプラネタリウムで見る、夜の空たちのごとく宇宙と無数の星々を映すレンズとなったように思えると、おじさんの姿はぱっと消えてしまったんだ。


 それが祖父の見た、ハレ病の姿だったのさ。

 星枝はそれから新たに観測はされていないそうだけど、できればあのようなことは二度と起こらないでほしいと、祖父は切に願っているのだとか。

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