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地味な悪女(プロジェクト)の完了報告(ざまぁ)

「撤退だ! 全軍、撤退せよ!」


辺境領。補給が完全に尽き、兵士の士気も崩壊した王国騎士団が、ついに敗走はいそうを開始した。


騎士団長は、一度も城塞都市に傷をつけられず、ただ飢えに苦しんだ末の撤退という最大の屈辱に、顔をゆがめていた。


城塞都市の城壁の上。


エリアナと、私設軍隊の隊長が、遠ざかる敵軍を冷静に見送っていた。


「……本当に、勝ってしまいましたな。ボス」


隊長が、畏敬いけいの念を込めて呟く。


「一度も、剣を交えずに」


「ええ」とエリアナは頷く。


「これでプロジェクトの『リスク(王国軍)』は排除されました。次のフェーズ、クロージング(事後処理)に移ります」


——王都。貴族院。


騎士団の敗退。王国の経済崩壊(銀霜草ショック)。そして外交的孤立(信用の失墜)。


全ての「敗戦処理」のため、緊急会議が開かれていた。


激昂げきこうした貴族たちが、玉座の前のアルフォンス王子と聖女リリアベルを吊し上げている。


彼らもまた、ポーションや化粧品の利権で莫大な損害を受けた「被害者(債権者)」だった。


「こ、こうなったのは! あの『地味な悪女』が私を裏切ったからだ!」


アルフォンスは、往生際おうじょうぎわ悪く叫ぶ。


「そうですわ! 悪女が民を扇動し、富を独占したのです!」


リリアベルも、涙ながらに責任転嫁を試みる。


だが、エリアナが流した「情報ファクト」で「真実(アルフォンスが理由なく侵攻した)」を知っている貴族たちは、もはや騙されない。


「「「黙れ!!」」」


老齢の公爵が、怒りに震えながら杖を突き立てた。


「我が国の『金の卵を産むガチョウ(辺境領)』を、私怨しえんで殺そうとしたのはどこのどなたか! その愚行のせいで、我々がどれほどの損失を被ったと!」


アルフォンスとリリアベルは、「国を傾けた大罪人」として、全貴族の満場一致で、その地位と全財産を剥奪はくだつされ、王都から追放されることが決定した。


完璧な「ざまぁ」の完了だった。


——そして、辺境領の執務室。


王都の「クーデター(アルフォンス失脚)」の報告と、貴族院からの「正式な使者(懇願)」が、エリアナの元に届いていた。


「どうか、王国われわれをお救い願いたい! 『銀霜草』の輸出を再開してはいただけないだろうか……!」


必死に頭を下げる使者に、エリアナは冷静に「独立も可能ですね」と前置きしつつ、より「合理的えげない」な提案をした。


「独立はしません。代わりに、王国を『支援』しましょう」


彼女が提示した「支援(買収)条件」は、二つ。


一、王国が今回の侵攻で浪費した「戦費(借金)」は、すべてエリアナ(辺境領)が肩代わりする。


二、その「担保」として、王国の「財政管理権」および「全交易の独占権」を、辺境領エリアナが永久に掌握する。


王国に、この条件を飲む以外の選択肢はなかった。


「追放された悪女」は、この瞬間、王国の「最大の債権者(事実上の支配者)」となった。


これにて、プロジェクト『地味な悪女と新規事業』は、完璧に完了コンプリートした。


——数年後。


かつての「最果ての辺境領」は、大陸随一の「商業都市」として目覚ましい発展を遂げていた。


領主の執務室で、次なる「新規事業プロジェクト」の計画書をレビューしているエリアナ。


彼女は、もはや「地味な悪女」とは呼ばれていない。


大陸全土から、畏敬いけいを込めてこう呼ばれていた。


「辺境の経済聖女」と。


(さて、次のプロジェクトは、大陸横断鉄道の敷設(インフラ整備)ね。まずはアセスメント(現状分析)から開始しないと)


多忙な執務に追われる彼女の顔には、充実した笑みが浮かんでいた。


その頃。


発展した商業都市の外れにある、広大な「銀霜草」の畑。


大勢の日雇い労働者たちに混じり、泥だらけで銀霜草の収穫(手作業)をしている、二人の男女の姿があった。


「……疲れた。リリア、お前のせいで、私はこんな……」


「まぁ、アルフォンス様こそ! もっとテキパキ働かないと、今日のパン(日当)も貰えませんわよ!」


疲れ果てたアルフォンスとリリアベル。


二人が、かつて自分たちが奪おうとした「富の源泉」を、自らの手で収穫し、日銭を稼ぐ。


それが、彼らの「その後」だった。

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