表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/8

キャッシュフロー創出とエクスクルーシブ契約

辺境領に、最初の収穫の時が来た。


ジャガイモ畑は、予想を遥かに超える豊作となった。


「すごいぞ!」「こんなに芋が獲れたのは初めてだ!」「これで冬を越せる!」


領民たちは、文字通り「飢えからの解放」に歓喜し、エリアナへの信頼は絶対的なものとなっていた。


領民代表(村長)にジャガイモの管理(分配と貯蔵)を任せ、エリアナは、もう一つの「収穫」に向かっていた。


秘密の区画で収穫された「銀霜草」。それは、白銀に輝く、魔力すら感じるような美しさだった。


原材料マテリアルのまま売るのは三流のやることだ)


エリアナは、秘密裏に設けた工房で、自ら加工に着手する。


(加工し、『高付加価値商品』にしてこそ、莫大な利益キャッシュが生まれる)


前世の薬学知識を総動員し、彼女は銀霜草から高純度の「エッセンス」を精製した。


それは、既存のどのポーション原料よりも強力な回復力を秘め、あるいは、既存のどの高級化粧品よりも肌を活性化させる、「魔法」のような液体だった。


精製された「商品」のサンプル(小瓶)を前に、エリアナは次の戦略を思考する。


(リスクアセスメント(危険性の評価)を開始。この品質なら、莫大な利益を生む。だが、王都アルフォンス経由で販売すればどうなる?)


(答え:不当な税(搾取)か、最悪の場合、利権そのもの(プロジェクト)を強奪される)


(リスクヘッジ(危険回避)が必要だ。販路は、王国の影響が及ばない『隣国』の商人ギルド一択)


数日後。エリアナは、領地の境界線で、隣国の「商人ギルド」のトップ、ヴォルグと秘密裏に接触していた。


ヴォルグは、歴戦の商人だ。抜け目なく、利益の匂いに敏感だが、今は目の前の「追放された地味な令嬢」をあなどりきっていた。


「追放された令嬢殿が、何の用だ? 冷やかしなら帰ってほしいが」


ヴォルグの侮った態度に、エリアナは一切動じない。


彼女は単刀直入に「取引ビジネス」を持ちかけ、精製した「銀霜草エッセンス」の小瓶を提示した。


「……なんだ、これは? 香水か?」


ヴォルグが小瓶の蓋を開けた瞬間、その目の色が変わった。


小瓶から放たれる尋常でない品質(あるいは魔力の密度)に、商人としての直感が警鐘を鳴らす。


彼が懐から鑑定道具ルーペを取り出し、その一滴をあらためた時、驚愕きょうがくに目を見開いた。


「ば、馬鹿な! この純度は……! 王都の最高級ポーションの原料の、数十倍……いや、百倍近いだと!?」


ヴォルグは興奮し、エリアナに掴みかからんばかりの勢いで叫んだ。


「いくらだ!? いくらでも買う!? 言い値でいい! それを全て寄越せ!」


エリアナは、その手を冷静に制した。


「ヴォルグ氏。私は単なる売買をしに来たのではありません。『独占販売契約エクスクルーシブ・コントラクト』を提案しに来たのです」


「……独占、だと?」


(買い叩き(スポット購入)はさせない。継続的なキャッシュフロー(現金収支)を生む『仕組み(スキーム)』を作る)


エリアナは、冷徹なビジネスマンの顔で告げた。


「この『銀霜草エッセンス』を、隣国内で独占的に販売する権利」


「その代わり、王国アルフォンスへの完全な秘匿ひとくと、莫大な契約金、および、売上の30%を当方こちらへ」


ヴォルグは、エリアナの提示した「市場の独占」という、商人として最大の利益を生む提案に、即座に飛びついた。


「……悪魔か、あんたは。いや、女神か。よかろう! その契約、飲んだ!」


契約は成立した。


莫大な「現金キャッシュ」の第一弾が、辺境領にもたらされる。


領民たちは、見たこともない大金(金貨の山)に沸き立った。


だが、エリアナはその「軍資金」を、冷徹な目で見つめていた。


(キャッシュフロー(現金収支)は確保した。だが、この事業プロジェクトを守る『セキュリティ』が、まだない)


彼女は、領民代表(今や彼女の右腕だ)を呼んだ。


「この金で、領地のインフラ整備(第二期投資)と、優秀な『傭兵』の雇用を開始します」


「傭兵、ですか?」


「ええ。名目は『領地警備隊』。ですが、集めるのは他国で『訳アリ』となった、実戦経験豊富な元・騎士団の猛者もさたちです」


王国アルフォンスの介入(絶望的な状況)という、予測される最大のリスクに向けた、「私設軍隊」設立という次なるプロジェクトが、静かに始動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ