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風の匂い

作者: 秋葉竹


 


この盆地の西の山の

てっぺんから吹く風は

なぜか大昔の野生の匂いがする



とおい異国のオレンジ農園に

水をまくホースにさす

錆びどめオイルのいい香り


ではなく


三千マイル走り続けた

大陸横断列車のせんとう

その機関車のエンジンルームのなか

たべたハンバーガーの

トマトとレタスに

かけたごま油ドレッシングの

ちょっと香ばしいいい香り


ではなく


駅前の歩道橋でやってる

俺さまなうたうたってるボーカルの隣

今夜は長髪でかみふりみだし

たまのあせはじきとばしながら

かき鳴らしてるアコースティックギターの

ピックのせいしゅんの

焦げくさいいい香り


ではなく



そんな風は吹き

吹き

吹きおろしつづけ

なぜかみのまわりで親しいひとが死ぬ

死神の異名を

硬い両手でにぎりしめた

わたしの闇のなか


キリキリ

ミシミシ

勇気を突き刺す鋭さで

吹く

吹き

吹き抜け過ぎ

つづける


わたしは乗り遅れないように

けんめいに風の匂いを

ほおばって

かみくだき

かみしめて

あすの予感のよって立つところを知る



この盆地の西の山の

てっぺんから吹く風は

なぜか大昔の野生の匂いがする



はるかむかし

無知蒙昧な「はじめにんげん」

その荒々しく身悶える雄叫び

二足歩行の「えんじん」の吐く強く熱い息

そんな風景をみたのに忘れた

クールな風の

なれの果ての匂いなのかもしれない








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