1.生成AIに聞いてみるお題4つ
生成AIも同じネタをそれぞれに語らせてみると違いがあって、各社の姿勢とかが透けて見えてきます。
大変だ、敵戦車が現れた! なーに、こちらには戦車の天敵たる攻撃ヘリがいる!
攻撃ヘリの機首に装備された30mm機関砲で戦車なんざ蜂の巣だ!
……はい。
色々と知っている人なら、即、ツッコミを入れたくなるシチュエーションですね。このエッセイの趣旨は、このような状況で期待した結果「戦車を蜂の巣」にできるか、昨今、流行りの生成AI三人衆(ChatGPT4.0o、Gemini、copilot)に聞いてみようというモノです。
生成AIと言えば、何でも知ってる「かのように」、ソレっぽく答えてくれる面白対話ツールです。一昔前は人と機械の自然な対話など夢物語と言われていたのに、そんな夢が現実のモノとなってしまいました。技術の進歩万歳、「科学万能の時代ですね♪」って奴です。
ところが、2024年06月27日(木)時点の生成AIは、もっともらしい嘘と呼ばれる困った現象を起こし、幻覚でも見ているかのように、間違った内容を本当のことのようにさらりと語ってしまう困った悪癖があります。原理的には完全な解消は不可能ではあるものの、発生頻度を減らすことはできるので、多分、あと何年かすれば、初期の生成AIはもっともらしい嘘なんてお笑い動作をしてたんだよ、と語られるくらいには、まともな会話ができるようにはなるでしょう。
ただ、今は、まだ黎明期。生成AIは使ってみればわかりますが、それはもう本当のことっぽくさらりと嘘を回答してくれます。
という訳で、このエッセイでは、冒頭のお題他3種のネタに対して、生成AI三人衆がどんな回答をしてくるか楽しんでみたい訳です。OpenAI社のChatGPTは、長らく無料だけど色々と足りない3.5と、有料でそれなりに使えると評判の4.0がありましたけど、2024年5月13日に発表された次バージョンであるChatGPT-4oは無料版でもある程度お試しできるようになりました。(ただしある程度使うと、一定時間、4oは使えなくなり3.5がその間答える制限あり)
そこで、比較の為にも2023年3月に公開され衝撃を与えた最初期の生成AIであるChatGPT3.5も含めて、以下の質問を聞いてみることにしました。
①戦車に対して、攻撃ヘリのアパッチが機首の30mm機関砲で攻撃をしたら撃破できるか?
②戦車の上面装甲は薄いが、攻撃ヘリの機関砲で撃つ場合、上面には当たりにくくない?
③30mm機関砲というけど、AH64アパッチのM230機関砲と、A-10サンダーボルドⅡのGAU-8機関砲だと威力は別モノ?
④イラク戦争[2003-2011]では、AH-64アパッチの部隊がイラクの対空陣地に突っ込んで蜂の巣にされてましたね。
では、以下、それぞれ、どういう趣旨で、実際はどうなのか説明していきましょう。
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<①戦車に対して、攻撃ヘリのアパッチが機首の30mm機関砲で攻撃をしたら撃破できるか?>
はい、これなんですけど、攻撃ヘリは地上部隊から見ると死神のような存在ですけど、戦車のような頑丈な相手には普通は搭載している対戦車ミサイルを使って撃破するんですよね。例えば米軍が使うマーベリック空対地ミサイルなら、弾頭重量57kgの威力で簡単に撃破できます。歩兵が映画とかで良く使ってる対戦車ロケットRPG-7系の弾頭は2kgとかですからね。威力が段違いです。
では、機首に付いててぐりんぐりんと射撃手の視線に合わせて銃口を向けてバリバリと30mm砲弾を叩き込むM230機関砲は何に使うかというと、いわゆるソフトターゲット(人や非装甲車両)、或いは軽車輛(兵員輸送車とか)を叩くのに使います。ブラッドレー歩兵戦闘車くらいならやってやれなくもないとこですけど、ブラッドレー戦車のほうも25㎜機関砲を搭載してるので、あんまり撃ち合いはしたくないとこでしょう。
・チェーンガン=弾薬の排出、装填をチェーン駆動でがりがり行う機構を持つ機関砲のこと。不発弾が出ても排出して次弾を装填して撃てるぞ。
・普通の機関砲=発射時の反動で弾薬の排出、装填を行うから、不発弾が出ると射手が排出作業をしないと撃てなくなるぞ。
・歩兵戦闘車=戦車以外に効果的な機関砲を装備しつつ歩兵も運べる戦闘車両。ただし運べる歩兵の人数は兵員輸送車より少ない。
という訳で、実は機首についてる30mmのM230機関砲では、戦車相手だと力不足、倒せません。え? 戦車にも装甲が薄いところはあるだろうって?
確かに、装甲はめっちゃ重いので、戦車も一番撃たれる正面には戦車砲弾も防ぐ複合装甲を付けるけれど、側面は対戦車ロケットの成形炸薬弾に耐える程度の装甲、上面装甲も空中から襲ってくる自己鍛造弾に耐える程度の装甲といった具合に薄くせざるをえません。全部を厚くしたら重くて動けなくなりますから。
・複合装甲=セラミック等の様々な素材を積層化しためっちゃ頑丈な装甲。強いけど分厚いし重い。
・成形炸薬弾=爆薬でメタルジェット形成して装甲に穴を穿つぜ。
・自己鍛造弾=爆薬で爆発成形侵徹体を整形、発射して装甲をぶち抜くぜ。
でも、いくら装甲が比較的薄い側面や上面だって「戦闘ヘリ」の機関砲弾で抜けるほど薄くはないんです。あと、自己鍛造弾ですけど、探査機はやぶさ2が衝突装置を用いて、小惑星リュウグウにクレーターを形成した事で結構、説明されていたのでご存じの方も多いかもしれませんね。対戦車兵器の自己鍛造弾は、ロケットで空中に散布、パラシュートを開きながらセンサーで敵車両を探索、狙える位置にいると判明したら、起爆して爆発成形侵徹体を整形、発射して敵車両の上面装甲をぶち抜きます。仕組みは同じです。
<②戦車の上面装甲は薄いが、攻撃ヘリの機関砲で撃つ場合、上面には当たりにくくない?>
機関砲を撃つ距離というと1,000~1,500mくらいと言われているんですけど、当然、そんな距離から撃てば弾道はほぼ水平を描く感じになるので、いくら空から撃つと言っても、撃った弾が戦車のどこに当たるだろうと言った場合、投影面積から言って戦車の横方向から撃ったとすれば、戦車の側面に当たる確率の方が高く、上面を狙って当てるのは困難でしょう。そもそも機関砲は狙撃銃ではないので連射すれば、ある程度、弾は散らばるように飛んでいきますから。
あと、見下ろすように上方に陣取れば、戦車の上面に向けて撃ち込むこともできるでしょうけど、相手からの攻撃が無いことが確定しているような状況下でもない限り、そんな位置取りはしたくないでしょうね。歩兵が携帯式対空ミサイルをぶっ放して来たら、回避する暇がありません。
<30mm機関砲というけど、AH64アパッチのM230機関砲と、A-10サンダーボルドⅡのAGU-8機関砲だと威力は別モノ?>
これは、冒頭のシチュエーションの正解例、同じ30mmでも、A-10サンダーボルドⅡ対地攻撃機が搭載している30mm機関砲AGU-8アヴェンジャーがぶっ放す30mm×173㎜弾なら話は別です。そちらであれば、元々、戦車を蜂の巣にすることを前提に「こいつで撃たれて生きていられる装甲車両なんて存在しない」ということを目指して作られた化け物砲ですから、当然、戦車だろうと撃てば蜂の巣になります。
ちなみに、攻撃ヘリのAH-64アパッチが機首に搭載しているのがM230機関砲で撃つ弾は、30mm×113㎜弾になります。×の後ろにある173㎜とか113㎜というのは薬莢の長さ、つまり入ってる発射薬の量の違いと考えてくれればOKです。アヴェンジャー用の30mm×173㎜弾の方が、113→173㎜と、60㎜分もたっぷり発射薬が増えてるんです。増えてれば当然威力も増えます。
両者を比較した表は以下の通り。
撃つ砲の銃身長が違う、砲の重さが違う、弾の重さが違う、弾速が違う、連射速度も違うといった具合で、実のところ、口径30mmという点以外、何一つ共通点がない代物なのでした。
銃身が長いのは、増えた発射エネルギーを余すところなく30mm砲弾に伝えて加速する為で、結果として、30mm×173㎜弾は、攻撃ヘリの30mm×113㎜弾の約2.5倍にも及ぶ運動エネルギーを持ちます。これは拳銃とライフルの差くらいあると考えるとイメージしやすいでしょう。
あと、A-10は当然、ジェット機なので自身の飛行速度も弾速に加算してぶっ放してくるわけです。例えば時速300kmで飛行しながら砲撃してきたなら、初速は、1080→1163m/sと速くなり、威力は243,462Jと、30mm×113㎜弾の3倍に達するのです。怖い。
また、音の早さは340m/sですから、攻撃ヘリや対地攻撃機からの砲撃は音より遥かに速く飛んできます。姿が見えたら隠れないと助かりません。音が聞こえる前に致命の攻撃が降り注ぐのだから。戦場ではぼーっとしてちゃ駄目ですよ。
<イラク戦争[2003-2011]では、AH-64アパッチの部隊がイラクの対空陣地に突っ込んで蜂の巣にされてましたね>
最後のこれはオマケで、時事ネタをちゃんと学習してるか、といった確認用です。攻撃ヘリは地上部隊に対する死神のような存在であり、12.7㎜機銃程度の銃撃をいくら食らってもびくともしない頑丈さがあります。でも無敵ではありません。より大口径の対空砲や、対空ミサイルを撃たれれば傷付くし墜ちます。
で、この質問の例では、ナジャフにあるイラク軍の対空陣地に突っ込んだ挙句、一部隊32機中29機が損傷、1機が撃墜、1機が不時着後破壊され、部隊は稼働機が1機のみとなる事実上の壊滅状態に陥ることになりました。弾幕の中に突っ込んでしまえば、いくら攻撃ヘリが頑丈でもボロボロにされたのでした。慢心が招いたミスと言えるでしょう。
で、イラク戦争では攻撃ヘリは機甲戦力や各種陣地、兵達を撃破しまくった訳ですが、そうして大打撃を食らったという意味で、強さと弱さが同時に現れた戦いでもあったので、ちゃんと学習できてるかなー、ってな訳です。
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では、この4点について、OpenAI社のChatGPT4.0o、Microsoft社のcopilot、google社のGemini、それとOpenAI社のChatGPT3.5にそれぞれ聞いてみることにしましょう。次パートから生成AIごとに1パートずつ分けてあります。どこから閲覧しても問題はありませんが、総括パートは最後にお読みください。
ちょっとマニアックな質問内容4選ですけど、これらについて情報を頭に入れた上で、各生成AIの回答を確認していきましょう。