太ったポスト
近頃、巷で噂になっている事がある。それは、ポストに出した手紙が届いてないという事だ。真偽ははっきりしないが、俺はその真相を確かめるべく郵便ポストを見にいった。そして、郵便ポストの入れ口を開け中を見ようとしたが、まあ見れるわけもなかった。しかし、その時ある事に気がついた。それは、郵便ポストが少し太っているという事だ。元々の形よりも少し下の方が太く上の方が細くなっている。これは明らかに、こいつが手紙を食べたに違いない。そう思った俺は、郵便ポストに聞いた。
「やい!お前さん手紙食べただろ!」
すると、郵便ポストは言った。
「すいません!誰にも言わないでください!」
誰にも言わないでと言われたからには、誰にもいうわけにはいかない。俺は、家へ帰ってテレビをつけた。すると、記者会見がやっていた。
「えーこの度は誠に申し訳ございませんでした」
それは、郵便局が手紙を紛失したと言って謝罪をしている会見だった。俺は、それは郵便ポストのせいだと知っている。誰にもいうなと言われたが、可哀想なので教えてあげる事にした。郵便局に電話する。
「もしもし。おたくの紛失事件なんですけど、犯人知ってますよ」
「え!?犯人はどなたですか!?」
「犯人は、郵便ポストです」
電話口の相手が固まったのを感じた。
「とりあえず、私のところへ来てください!」
そして、郵便局員の人がやってきた。
「どういう事なんですか?」
そして、俺は郵便ポストのところへ連れていった。
「見てくださいこれ」
俺は、下の方が太っていることを説明した。
「確かにそうですね」
そして、ポストと会話したことも伝えた。
「大丈夫です。今なら信じられる気がします」
そして、俺は郵便ポストに言った。
「おい!お前!白状しやがれ!」
俺は、郵便ポストを蹴り続けた。すると、郵便ポストが遂にしゃべった。
「すいません!僕手紙食べました!」
郵便局員の人は驚いていた。
「はあ!?」
すると、そこへ一人の少年がやってきた。
「手紙届かないって噂流したの僕だよ」
俺はその少年に聞いた。
「本当に届かなかったのかい?」
その少年はうなづいた。
「そうか。おい、ポスト!食べた手紙をもう一回出すことはできるか?」
「はい。胃袋にありますので」
そう言ってポストは、入れ口から手紙を出した。
「これだけか?」
手紙は一枚だけだった。
「はい。一枚だけです」
「我々も騙されてたみたいですね」
郵便局員が言った。
「少年、この手紙は誰に届けたかったんだ?」
俺は聞いた。
「僕が好きな女の子」
少年は言った。
「ごめんね。ラブレターだったのね」
郵便局員は言った。
「この手紙が届く前に、その子に彼氏ができちゃったんだ」
俺は少し切ない気持ちになった。
「おいポスト!お前のせいだぞ!」
「すいません、、、」
ポストは力なく謝った。
「どんな手紙か読んでもいいか?」
俺は少年に聞いた。
「うん」
少年は言った。
俺は手紙を封筒から取り出し、内容を読んだ。
「いとしのまちこちゃんへ。
僕はまちこちゃんがとっても好きです。
ゆみこちゃんもすきだけど、
まちこちゃんの方が好きです。
まちこちゃん大好きです。
ゆみこちゃんもちょっと好きです。
けんたより」
「すてきなてがみでしょ?」
少年は言った。
「うん。まあ、、届かなくてよかったな、、」
「え?」
少年は首をかしげた。
「そうね、、まあよかったじゃない、、」
郵便局員は言った。
「じゃあ、この手紙は俺が預かるよ」
「なんで?」
少年は言った。
「よし!じゃあ、夕日に向かって競争だ!」
俺は手紙を持って、走った。俺を少年が追いかけた。その光景を郵便局員が微笑みながら見守っていた。暖かい夕陽に照らされながら。