第二話 襲撃
ちょっと短め・グロ表現ありますのでお気をつけを
村から煙が出ているのを見た俺は、釣り道具を放り出し、一目散に走り出した。
じいちゃんやばぁちゃん、村のみんなは大丈夫か。
それだけが気がかりだった。
木々の合間を縫い、近道で走ること十分弱。
俺の村は、鬼に襲われていた。
一緒に遊んだあの子の家も、男衆と筋トレした集会所も、ほとんどの建物が燃えていた。
そして、視界の端には。
血のような汚い赤色をした。
二本の角を頭から生やした。
醜悪で、残忍な笑みを浮かべた。
「鬼だ」
鬼がいた。
俺はどうしていいか分からなくなり、とりあえず家族の無事を確かめるため、家に走った。
家に着くと、家の前で鬼とじいちゃんが戦っていた。
「じいちゃん!!」
俺は叫び、じいちゃんに走り寄った。
その時だった。
じいちゃんが、バッサリと鬼に斬られた。
しかし、じいちゃんは立ち上がった。
そして、鬼の心臓に刀を一突きし、鬼が倒れ込んだのを確認すると、血を吐いて倒れ込んだ。
「じいちゃん!じいちゃん、起きて!」
必死に呼びかけるも、じいちゃんの目からはどんどんと光が失われていく。
「ばあさんを…守れなかった。桃太郎…お前は山に逃げろ…」じいちゃんは今にも消え入りそうなか細い声で、俺に喋りかけた。
「じいちゃん!死なないで、じいちゃん!」
じいちゃんは最後に笑みを浮かべると、
「頑…張、れ。ももたろう…。」と呟いた。
じいちゃんの腕が、ぽとりと垂れ下がった。
嗚咽をこらえながら、俺は山へと走った。
しかし、悲しんでいる場合ではなかった。
後ろから、心臓に刀が突き刺さった鬼が追いかけてくるのである。
恐怖と悲しみと後悔で頭がおかしくなりそうだった。
「待ァァて小僧ゥゥッ!食いィ殺してやるゥゥ!!!」
血まみれの鬼が、絶叫しながら追いかけてくる。
かなり鍛えていたつもりだったが、瀕死でも鬼の足は速く、もう少しで追いつかれそうだった。
その時。ふと、木の根に躓き、倒れてしまった。
それを好機と見た鬼は俺に飛びかかり、腹を切り裂いた。「ガァッ!!!」
声と、血、が一緒に出てきた。
いたい、痛い、イタイ。
腹を抑え、泣きながら後ずさる俺。
それをニタニタと笑いながら見つめ、歩み寄ってくる鬼。
死は、もうすぐそこまで迫ってきていた。
その時だった。
急に鬼がブルブルと震えだしたのである。
そしてそのまま、背中を向けて逃げていった。
意味がわからない。しかし、助かったのも事実だ。
ふと、鬼には何が見えたのか気になり後ろを振り返った。
俺の後ろには、鳥居と酒瓶が祀られた小さな祠があった。