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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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後始末

--後始末--


あらすじ:ドラゴンを殺した。

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兵士や冒険者が部屋に入ってきてドラゴンを見上げている。こうしてみると見上げなければならないほど大きい。2階建てか3階建ての建物くらいありそうだ。


「殿下。これはいかがいたしましょうか?」


「もちろん、持ち帰るぞ。鱗一致枚残さずにな。」


今まで討伐した大きなモンスターたちも全部持ち帰っていたのだから、やっぱりそうなるよね。


大きさ的にそのままでは魔法陣に乗らないので分解をしなきゃならない。


横倒しになっているドラゴンの亡骸に剣を刺しては革を剥ごうとしている。


「殿下。辺りの探索を終えました。我々の入って来た鉄の扉とは別の扉がありましたがいかがいたしますか?」


「なに?そんなものは無かったはずだぞ。」


ドラゴンを倒す間中この部屋をぐるぐる回っていたのだ。いくらドラゴンに集中していたとはいえ、そんな目立つものは無かったと思う。


「私達がドラゴン退治をしている時は無かったわよね?なら、ドラゴンを退治したから現れたのかしら?」


「そう言う事になるな。いきなり現れる不思議な扉の話は聞いたこともないが、次の階層に行くための扉かも知れない。」


「どうする?すぐに見に行く?」


「いや、見張りだけ立てて今日はドラゴンを運ぶことに専念しよう。正直、今日はもうクタクタで新しい問題に取り掛かる余裕なんて無いからな。早く帰ってゆっくりしたいよ。」


王子様は馬の後ろでスタングレネードを投げただけだから疲れていないでしょと言いたいけど、私に脅されていたから気疲れしているんだろう。


戦いが終わった高揚感とか、そう言うのも無いんだろうな。


もちろん、私も疲れたから早く帰って寝たい。


これで、もしも次の階層が有ったりしてドラゴンより強い敵とか出てきたらしんどい。



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半日が過ぎた。


ドラゴンが解体され少しづつ運ばれていく。


少し離れた場所に机と椅子が用意されてゆっくり眺める事ができるようになった。


ヘランちゃんのいつものティーセットだ。


「もう一杯お茶はいかが?」


ヘランちゃんが尋ねてくる。


このお転婆さんはどこにでも来るようになった。魔法陣が運び込まれてドラゴンが退治された報告が5階の村に届くとすぐに来たので、今日も村まで遊びに来ていたのだろう。


「ん、もう良いかな。ありがと。」


こんなダンジョンの奥深い場所で立派な食事もご馳走になった。


わざわざ料理人まで連れてきてドラゴンステーキとか言ってお昼ごはんにしたのよ。


大トカゲの丸焼き焼いたのより歯ごたえがあって、なかなか美味しかった。


ワイワイと皆で解体していく様は見ていて楽しくもある。


何と言うか文化祭の気分?生き物の解体なんて見て楽しいと感じる女の子もどうかと思うけど、ここまで来た達成感とかが手伝って可愛そうだとか思えない。


この世界に来てトカゲも何度も食べたし。



「これで大手を降って王都に凱旋(がいせん)できますわね。」


ヘランちゃんが新しく淹れた紅茶を(もてあそ)びながら王子様に言った。


「22階を攻略できただけでも快挙だったからな。25階までくれば歴史に残るだろう。しかも勇者しか成し遂げていないドラゴン退治のオマケつきだ。」


「今回も勇者の手助けは有りましたけどね。いくらトドメを刺したとはいえ、神馬様がいなければ難しかったのでしょう?」


ご子息様が答える。


「ああ、だが本当にドラゴンを倒せるとは思っていなかった。」


「良かったのですか?ドラゴンを倒してしまって。」


「仕方ないだろう。出入口は閉ざされて攻撃をされていたし言葉も通じなかった。倒さなければ死んでいたのは我々だろう。そう言えば最初にアマネは何を喋ったのだ?」


しまった。王子様の前でドラゴン語で話していたのを忘れてた。また言い訳しなきゃ。


「王子様と似たような事ですよ。ただしドラゴン語で。」


「やはりドラゴン語が使えるのか?」


「女神様の力で、この世界の言葉は全て解るらしいよ。文字は書けないけど。」


最後の砦「文字は使えないから魔法には使えない」を発動させた。念のため考えておいてよかった。


魔方陣を使わないと魔法が使えない世界なので、文字が書けなければ魔法を使えない。


普通の文字だって読み書きできない人がいるんだからおかしくないよね。


「やっぱりドラゴン語が解るんじゃないか。女神様の力だとは言え、簡単に記憶の操作などできるものなのか?」


「そうですよ、ホントは文字も書けるんじゃないですか?」


「いや、女神様の力で、この世界の言葉が解るようにしてもらえてるだけだから、女神様の力ってすごいのよ。昨日まで喋れなかった言葉が自由に喋れるようになるのよ。だから、出来なくすることだってきっと簡単な事なんだよ。」


慌てて答えるけど、めちゃくちゃ怪しまれている。みんなの顔が疑惑であふれているよ。


「まぁ良い。そう言う事にしておいてやる。ではあのフィオとか言うのは?」


別にフィオの事は隠していたわけじゃないので簡単にオラシオンの機能のひとつだと説明をする。


「それより、どうやって王子様がドラゴンを倒したのか考えましょ。さすがに気絶したドラゴンにとどめを刺しただけとかじゃ、みんなが納得しないでしょう?」



王子様がオラシオンを操って剣を振り回し、私が魔道具でサポートしたような感じで話が造られた。


有り得なさそうな話だけど、なにかあれば神馬オラシオンがすごかったことにすれば良いんじゃない。


激戦の末、音の魔道具で気をそらし脚を切りつけて、首に止めを刺しに行く。


最後に止めを刺すときの葛藤(かっとう)を大げさにアピールするようにした。


嗚呼(ああ)、このままドラゴンを(たお)してよいのだろうか、ドラゴンと共存する方法は無いのだろうか。いや、ドラゴンはオレたちの言葉に耳を傾けてはくれなかった。オレはダンジョンを攻略すると決めたんだ。何が行く手を(はば)もうとオレは絶対に攻略しなければならない!」


まるで歌劇かドラマのようにカッコイイセリフを作る。


誰が一番カッコイイセリフが作れるか争うように作る。


ご子息様とヘランちゃんと巻き込んで台本を作るようにワイワイ話していると楽しかった。



まるで文化祭の様に。



ああ、高校の文化祭出れなかったんだな。



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次回:性癖の話じゃない『新しい扉』



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