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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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逡巡

--逡巡--


あらすじ:ドラゴンは倒れた。

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ドラゴンは障壁を張っていても音を認識していた。つまり、障壁は音を通過させる。だから音を使って鼓膜なり、脳なりを揺さぶれると思ったんだ。


ダメだったら最後の手段の爆弾魔をやるつもりだったのだけど音だけで済んでよかった。


まぁ、爆弾でも用意するものは同じだ。


最初から普通の爆弾でも良かったんだけど、天井崩れるかもしれないし、オラシオンのバリアで守れるとは思うんだけど。


自分の近くで爆発するなんて怖いしね。


オラシオンのバリアも音を通していたから当てにならないしね。


「やったのか?」


さっきフラグについて注意しておけば良かった。


王子様が恐る恐る尋ねてくる。


「気絶しているだけみたいよ。」


元々スタングレネードには殺傷能力は無い。魔法でクリスタルの剣を作りながら答える。


「はい、止めはお願いね。」


「俺がやるのか?」


「ドラゴンキラーの栄誉を上げるわ。これで文句をなく貴方が英雄よ。私がやるより良いと思うわ。良い国を作ってよ。」


「お、おう。」


一介の村娘がやるより王子様がドラゴン退治の英雄になった方が人に対する説得力が有ると思う。虎の威を借る狐より、虎の言うことの方が説得力が増えるという事だね。


私には表に出て政治的なやり取りをする気は欠片もない。めんどうくさい。


それに私には王子様がドラゴンを倒すための武器を提供したという事の方が大事だし。


武器屋のお嫁さんとしてはね。


「しかし、ドラゴンを殺してしまって良いのだろうか?」


「今さらね。」


「ドラゴンを説得して、ドラゴン語を教えて貰ったり出来ないだろうか?祖父の言うように仕える魔法が増えれば民の生活も楽になる。」


「でも、もう一度同じことが出来たとして、私達が生き残れるとは限らないのよ。」


もう、スタングレネードの在庫は残っていない。


残りは普通の爆弾だ。


まぁ、魔法陣を改造してスタングレネードには出来るけど。


「…仕方ないのか?」


「他の国の勇者がドラゴンを倒しているのでしょう?ここにいるドラゴンもきっと森の人に魔法を教えたドラゴンじゃないわ。」


予想でしかない。


言葉が通じなかったドラゴン。


ドラゴン語で話しかけても喉を鳴らすだけだったドラゴン。


ドラゴンブレスと突進しかしてこなかったドラゴン。


知性の有るようには見えなかった。


「しかし、ドラゴンであることは間違いない。勇者が倒したドラゴンの絵を見たが、そっくりだった。」


「このドラゴンは魔法を使っていなかったわ。」


ブレスは使っていたけど、魔法を自由に操れるなら風の魔法で向かい風を吹かせたり、土の魔法で足場を悪くしたりできたはずだ。


いや、森の人と共存するような知性の有るドラゴンなら、魔法を使わなくても、もっと色々な手段を使って足止めをしただろう。


このドラゴンは、ただ暴れていただけ。


だから、私は知性の無い大猿と同じようにしか思えなかった。


人同士の戦争は嫌だけど、暴れる動物ならモンスターでしかない。害獣だよね。


私の言葉に、王子様がクリスタルの剣を握りなおす。


近付いてもドラゴンは起きて来なかった。王子様はドラゴンの首の柔らかそうな場所を選んでクリスタルの剣を刺し込んで行く。


ズブリ。


音がすると剣先がドラゴンの首に吸い込まれて行く。ドラゴンの断末魔の悲鳴が上がる。


不思議な事にクリスタルの剣が赤く染まっていく。


血が這うようにクリスタルの剣を登って行き、綺麗な赤いクリスタルの剣に変わっていく。


「何これ!?」


「さあ?」


急いでもう1振り剣を作って刺してみる。今度は変化がない。血も出ない。


伝説の通りならトカゲと同じ場所に心臓があるだろうと、心臓に刺して見るけど赤くはならない。


「まあ、良いわ。その剣にだけドラゴンの魂が宿ったとかそんな所よね。」


適当な事を言ってその場に倒れた。


「そんな適当で良いのか?」


「私にはその剣が何であっても関係ないわ。私達に剣先が向かない限りはね。」


ドラゴンの聖剣が出来ようとも、1本だけなら私の知った事じゃない。


「こんな現象は聞いたこともない。きっと(いわ)れの有る剣になるぞ。」


「良かったじゃない。その剣が有れば他の国への発言も強化できるんじゃない。」


ドラゴン退治の勇者が居たぞ、よりドラゴンの魂を吸った剣が伝わっていた方が解りやすい。


それでも、浄化や治癒の魔法を教えてくれた聖女様に敵うか知らないけど。


「お前は使わないのか?」


「ご褒美だけ弾んでくれれば良いよ。」


「変なヤツだな。」


ダンジョンも攻略したし、もう自分から戦う理由なんて無い。それに、どんなに良い武器があっても私は武器屋さんだ。売らないとお金にならない。


これからも身を護るための道具は作ると思うけど、争いのタネになりそうなドラゴンの聖剣なんて持っても良いことが無さそうだよね。


「疲れた~。」


ひんやりとした石畳が火照った体に心地いい。


「ああ、疲れたな。ありがとう。」


王子様が優しい。


体力も魔力もかなり使ってしまった。何より長い戦いが終わって気が緩んだ。


「お前のお陰で助かった。何と礼を言ったら良いのか。」


「貴方がドラゴン退治の英雄。平和な国を作ってね。それだけで良いから。」


そっぽを向いて答える。


私は『猫の帽子屋』の勇者様。


救国の英雄にも、世界の救世主にもなる気なんてまったくない。


ミル君のための勇者様で有れば良いんだ。


ミル君のお嫁さんになれれば良いんだ。


王子様に恩を売って、後はミル君とのんびり武器屋をやっていければ最高だ!



入り口をふさいでいた壁が下がり、閉ざされていた鉄の扉が開いた。



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次回:討伐の後に『後始末』



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