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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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討伐未遂

--討伐未遂--


あらすじ:特攻は失敗した。

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「次の手段を用意するよ。」


そう言って腰に着けたポーチから魔力結晶を取り出す。この場で魔道具を作るつもりだ。揺れが少ないオラシオンだから出来る芸当だ。


「何を作るつもりだ?」


ドラゴンの方を見ながらチラチラとこちらを見てくる。たまにブレスを吐くので厄介だ。


「シェルターよ。ああ、お腹が空いたなら後ろのバッグにホットドッグが有るわよ。お茶を淹れた水筒も有るから適当に飲んで良いわよ。」


「要らん!と言うか、俺を降ろす前に荷物を降ろせよ!んで、シェルターで何をするんだ?」


「避難所かな。」


「俺のか?」


王子様が泣きそうだ。イジメすぎたかな。


「オラシオンごと入れる様にするわよ。」


作ろうとしてるのは、オラシオンが入れるような大きな砂壁だ。出入口も無くして山の中をくり貫いた形にするつもりだ。


薄めに作って何重にもそれを重ねる。


王子様から手元が見えないようにして予備の魔晶石にドラゴン語で文字を刻む。


基本は砂のトンネルの魔道具なので、形を指示する場所だけ魔晶石を入れ替える。


クリスタルの魔法で魔道具の形にして魔石の入る場所を作り、オラシオンの首元に括り付けたポーチから魔石を取り出して中に入れる。


「オラシオン、ごめんね。オヤツを使わせてもらうわ。」


それはイザと言うときにオラシオンのオヤツになる予定だった魔石だ。


出来上がったシェルターの魔道具を腰のポーチに入るとパンパンに膨れ上がってしまった。


「ヴィッセル様、少し目を(つぶ)っていて欲しいのだけど。」


「バカ言うな!この状態で目を閉じれるか!?」


「お願い。」


しおらしくしてみる。


オラシオンのおかげでドラゴンブレスも当たらないし、少し位は大丈夫だよね。


「いや、ダメだ。」


拒否された。


こうなったら実力行使だ。


「フィオ。ヴィッセル様の目を隠して!」


オラシオンの鞍から青白い妖精が飛び出してきて王子様の目を塞ぐ。


オラシオンのヘルプ機能、フィオは優秀だ。オラシオンの事だけじゃなくナビゲーションまでしてくれる。ついでにモンスターの位置まで教えてくれる。


実態が無いので大したことは出来ないけれど、目隠し位はしてくれるだろう。


要するに私の手元が見えなければ良いのだ。


小さな体で大きく手足を広げて、顔を近づけようとする王子様を攻撃する仕草をしたりしている。


その間に腰の後ろのバッグから女神様の魔導書を取り出し、1つのページの魔方陣を少し書き加えて魔導書をオラシオンのオヤツ入れにしまった。


書き加えたのは私の魔力放出に合わせて一斉に起動する魔法陣。


投げつけたら起動するはずだった魔法陣を、トントンツートンと言ったリズムの魔力を感じると起動するようにした。


「フィオ、ありがとう。王子様、左後ろのバックからラッパの絵の描かれた袋を取り出して、中の物をドラゴンの方に投げつけて!全部!当てなくて良いから!オラシオン!もう少し近付いて!」


「おい!今のは何だ!?」


文句を言いながらも体を捻ってガサゴソと袋を取り出してくれる。


「オラシオンのオプションよ。」


そう言えばフィオの説明はしていないなと思いながら適当に答えた。詳しく話している場所でも時間でもない。王子様も追及してこなかった。


袋の中には30個程のボール型の魔道具が入っている。今、魔導書の魔方陣を書き加えた魔道具だ。それを王子様は投げていく。


「全然届かないが良いのか!?」


「当たるとは思って無いわよ!」


馬の上でしかも腕の力だけで投げているのだ。それでも私が思った以上に近くまで飛ばしてくれる。


ドラゴンの気を引いて投げた魔道具に気をとらせないために、私は予備のショートソードに仕込んだカマイタチを撃ちながら答える。


「全部投げたぞ!」


「オラシオンを止めたら、ドラゴンに背を向けて伏せて目を閉じて耳を塞いで口を開いて、全力で体全体に治癒の魔法をかけて!オラシオン!ドラゴンから離れて!」


「ああ、なんで口を開くんだ?」


ドラゴンに向けて飛ばした魔道具が壊れたら作戦は失敗だ。説明している時間が惜しい。


「なんでもよ。あと、これを耳の中に入れて、魔力を通して。」


シリコンで出来た魔道具の耳栓を渡す。魔力を通せば中で膨らんでくれる。


投げつけた魔道具が多そうな場所を選んでオラシオンを止める。王子様が伏せて治癒の魔法をかけ始める。足音が小さくなったのが解るかの様に暴れていたドラゴンはゆっくりと、こちらを振り返る。


「オラシオン、バリア!」


オラシオンにバリアを張らせて、その中にさっきの砂壁の魔道具を起動させると、私達とオラシオンを囲むように砂が盛り上がってくる。


最後にドラゴンの瞳が赤く輝いたのが見えた。


私も彼に指示したように伏せて目を閉じて耳を塞いで、さっき王子様に見えないようにして王子様の投げつけた魔道具を起動させる。


魔道具の正体は音と光の爆弾。


以前、ダンジョン内ではうるさすぎて使うのを止めたスタングレネードだ。


ダンジョンの中をすごい音がこだまする。


耳をふさいでいる手を通り抜けて、耳栓をも通り抜けて聞こえてくる。


鼓膜が破れないように治癒の魔法をかけ続ける。


体が震える。


そして静寂。


「フィオ。外の様子はどう?」


恐る恐る尋ねると、フィオが首を振る。


「動いている?」


その言葉に首を縦に振る。


「ありがとう。」



砂の障壁を解除するとそこにはドラゴンが倒れていた。


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次回:倒すべきか否か『逡巡』



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