特攻
--特攻--
あらすじ:王子様が役に立たない。
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ドラゴンの周りをくるくる回っていたオラシオンのスピードを早めて速度を出していく。
「うわぁぁぁぁああ!!!」
王子様が五月蝿い。
「オラシオン!突撃!」
オラシオンを特攻するように姿勢を変えて、もう一度加速を加える。呼応するかのようにドラゴンも鎌首をあげてブレスの姿勢を取り始める。
「カマイタチ!」
ドラゴンの首をめがけてカマイタチを連射する。今までの傾向からドラゴンは貯めた何かを吐き出すように炎を吐き出す。首を狙って何かを貯めきれないように連打する。
首も障壁に護られていて効果が無いかも知れないけど。
ドン!ドン!ドン!
みるみるまに大剣の魔力が減っていく。ドラゴンは鎌首を上げたまま下ろせないから、一応効果が有るようだ。
「うわああああ!」
王子様が後ろで五月蝿い。抱きつくな!
大剣を横に構える。
この攻撃はオラシオンのスピードが力の源になるから、オラシオンの力に負けないように大剣の柄の端と端を握り込む。
少しでも強化するためにクリスタルの魔法で大剣を覆うと、軽量化の為に空けた孔にもクリスタルが詰まって行き『猫の帽子屋』の文字が埋まりキラキラと輝き出す。
ドラゴンも腕を振るい翼を振るいカマイタチを避け始めた、その首から振り下ろされブレスが吐き出される!
「オラシオン!跳んで!」
炎を避けるように緩い弧を書きながら走っていたオラシオンが跳ぶ。王子様が静かになった。狙うのはドラゴンの首。横に身を捻って大剣を振りかぶる。
王子様が邪魔。
「ライトニング!」
交差する瞬間に大剣に仕込んであるスタンロッドの魔方陣を起動させ、さらに追加で雷の魔法も発動させながら全力で切りつける!
ガッキーン!
手が痺れる。
我慢して雷の魔法に力を注ぐ。
バチバチと大剣と障壁が弾けるように鳴る。
手が持たない。
急いでクリスタルの魔法で大剣とオラシオンの鞍の間を繋ぐ支えを作る。
少しでも力を分散させたい。
支えが出来た瞬間、ドラゴンの魔法障壁を切り裂く!
ゴッキーン。
ドラゴンの鱗に大剣が当たると、腕から力が抜けて手が滑った。
障壁と鱗の隙間。そのちょっとした隙間でわずかにクリスタルの支えと手に緩みが出来てしまった。
大剣が弾かれて後ろに飛んでいく。クルクル、クルクル、回っている。
そして、手の届かない遠い所まで飛び去ってしまった。
オラシオンは着地して、勢いを殺しながら駆けていく。
手は痺れたままだ。
パカラン、パカラン、パカラン。
オラシオンの足音がゆっくりとなり、元の速足に戻ったことを知らせてくれる。
「ったーい。」
やっと声が出せた。
「やったのか!?」
いや、それフラグだからっと言うのは止めておこう。ロクな結果になら無いし、結果は十分理解している。
とりあえず両手に治癒の魔法をかける。
「いや、ダメだったよ。」
「ダ、ダメだったって、オイ!!」
王子様がドラゴンの方を見る。
「眼が光ってるぞ!真っ赤だ!すごいスピードだ!追いかけてくる!」
彼の視線を追うと、ずっと同じ場所に居たドラゴンが言う通りに眼を真っ赤に光らせて猛スピードで走ってくるのが見える。
「オラシオン!逃げて!」
慌てて命令する頃にはドラコンは羽ばたき飛び上がろうとしている。
オラシオンが走り去った後にドスンと巨体が落ちてくる。
しばらく鬼ごっこが続いた。
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パカラン、パカラン、パカラン。
オラシオンが悠々と走って行く。
ドラゴンとの鬼ごっこは圧倒的に勝利した。ドラゴンが飛び回れる程の高さが無いことが幸いした。
その分赤く光る眼が近くまで迫ってきて恐かったけど。大きく開けられた口に鋭い歯と垂れ流される涎。しばらく夢に出てきそうなくらいに恐かった。
「で、どうするんだ?」
「いや、貴方も考えてよ。」
「バカ言うな!弓矢が効かない時点でオレには何の手も無いぞ!」
まあ、そうだけどさ。
当てにされるだけだと言うのは何となく気分が悪い。あんたが王子様でしょ!と言いたくなる。
「さっきは良いところまで行ったから、ヴィッセル様を降ろして、剣を回収して今度は上から切り下ろすのはどうかな?オラシオンの加速と、重力の加速が使えると思うし。」
王子様、王子様と心の中で言い続けている彼の名前はヴィッセル様だ。呼びかける時はちゃんと呼ぶ。面倒くさいから心の中では王子様だけど。
「ちょっと待て!俺の安全は?」
「無いよ。オラシオンから降りてもらうし。」
「いや、俺の安全も確保してほしいのだけど…。」
「王子様を降ろさないと、高さが出ないから。」
「2段ジャンプだっけか、あれを使って!」
王子様が必死だ。
「えー、アレ意外と魔力を使うのよ。今もかなり使っちゃったし極力温存したいわ。」
「見殺しにするのか!?」
「がんばれ!」
パカラン、パカラン、パカラン。
良い笑顔で伝えたんだけどな。
彼の顔は真っ青になっている。
「冗談よ。」
「じょ、じょうだんか、冗談だよな。ハハハハハ。」
スッごい乾いた笑顔だった。
私だけに考えさせようとするから少しムカッとしてただけだよ。
上から切り下しても、オラシオンの体重が使えなくなるから効果は薄れると思うし。
「まあ、さっきは最後に手がすっぽ抜けなければ良かったんだけど。」
障壁からドラゴンの鱗まで少し距離が有って、その隙間に気を取られて手が弛んで大剣を手放してしまった。
一生懸命に開こうとしていたドアが反対側からいきなり開かれて、たたらを踏むような感じ?
『ぼくのかんがえたさいきょうのぶき』の魔晶石の魔力もほとんど無くなっているだろうし、オラシオンから降りて大剣を回収している間にドラゴンに襲われたら何もできない。
なので、あまりオラシオンから降りたくない。
「次の手段を用意するわ。ヴィッセル様はドラゴンを監視していて。」
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次回:殺傷性は無いから『討伐未遂』




