大鷲
--大鷲--
あらすじ:朝礼前ののんびりとした朝。
--------------------------------------------------
隊長さんを先頭に王子様とご子息様それに私と、ゾロゾロと歩いていくと、広場にはすでに大鷲討伐隊が並んでいる。
王子様が、あーたら、うーたら、朝礼演説をすると気合いを入れて転移の魔方陣へ行ってしまった。
校長先生の話よりは短い。
討伐隊の後ろに付いて転移の魔方陣をくぐると、オラシオンと3班の夜警の人が待っている。
オラシオンの陶器の様な肌を撫でなると、魔道具なのに目を細めてなついてくれる。オクサレ様は芸が細かい。
そのままオラシオンに魔石を与えて魔力を補充する。満タンOK。
普段はこのままオラシオンを連れて開発室に帰って行くのだけど、今日は大鷲との戦いを見学する予定になっている。
と言うか王子様のお守りだ。
戦場から少し離れたところにオラシオンのバリアを張って、転移の魔方陣と王子様を護りつつ双眼鏡で観戦。
討伐隊長さんに懇願されたんだよ。
「あの人すぐに前に出たがるんですよ。護衛に人を割きたく無いのでお守りしてくれませんか?」
これでかなりオブラートに包んだ表現だと思う。いつも隊長さんは苦労していたからね。
王子様が5階の村を抜け出してダンジョンの攻略に行ったりするので、連れて帰ってきているのを何度も見た。
討伐隊が戦いに備える中、安全な距離を取った見学場所まで移動する。足元は起伏に富んだ岩が並んでいて歩きにくい。
かといって大鷲から隠れられるほどの大きな岩は少ないので、砂壁が無いと大鷲から逃げるのは大変そうだ。
見学は場所は25階へ上がる階段からある程度離れていて、すでに仮設基地が出来ていて転移の魔方陣も設置されていた。
イザと言うときはここから逃げる。
しばらくすると閧の声と共に大鷲に矢が射かけられた。矢は大鷲には当たらず第一射は避けられてしまった。
大鷲は天井近くまで飛び上がり矢が届かなってしまう。
「もっとクロスボウを用意すれば良かったですね。」
「次は増やしてみても良いかもな。だが、飛び回っている敵に矢を当てる事が難しいから、今日は予定通り持久戦だ。ヤツもずっと飛び続ける訳にはいくまい。」
「小型の鳥にはポーラや投網が有効でしたからね。期待したいのですが。」
ご子息様がため息を吐く。
ポーラは紐の両端に錘を付けた道具で、投げて脚や体に絡めて動けなくする。
どこかで狩りに使われている武器だけど、マンガ知識なので詳しくない。使えれば良いのだ。
投網は魚用の物を使っているけど、ポーラと同じく獲物を絡めとる。
投げ方にコツが要るので王都から来た兵士でも漁師の息子だと言う人しか上手く扱えない。彼いわくポーラの方がよっぽど使いにくいらしい。
「大きなポーラは飛ばないから難しいだろう。投げ槍に期待だな。」
大鷲はかなり大きい。止まってる状態でも2階建ての建物くらいは有りそうだった。
小さな、それでも腰ほどくらいの大きさのある、鳥のモンスターには有効でも、大鷲には普通のポーラや投網ではからめとることが出来ない。急いで大きな物を作ったけど重くて遠くに投げられそうにない。
かと言って王子様の期待する投げ槍も数が少ない。
ちなみに、毒蛾の時は後ろから投げた剣が薄い羽根を引き裂いたらしい。
「やっぱり次は夜襲をかけましょう。長引いては皆の士気にも関わります。」
「だから、夜襲だと万が一の場合逃げられないだろう!足場が悪すぎる。」
「相手は鳥ですよ。夜間飛行なんて出来ないんじゃないですか?」
「真夜中でも大鷲に近づくと反応したらしいぞ。鳥は夜目が効かないなんてのは通じないかも知れない。」
そうこう話している間にも大鷲と攻略班の戦いは続いている。
砂のトンネルから顔を出している兵士に向かって大鷲が急降下をかける。
狙われていない兵士から槍や矢が飛ぶけど、中々当てられないし、当たっても丈夫な羽に弾かれて有効打にはならない。
大鷲からしたらもぐら叩きをしている気分になるかもしれない。何ヵ所かに設置されているトンネルから頭を出す兵士を狙う。
お互いに有効打が無く時間が過ぎていく。
大鷲もずっと飛び続けるられる訳では無いようで、天井から伸びた止まり木で羽根を休めたりしてる。
あの止まり木は誤算だった。見落としていた。
夜間もあそこに止まり続けたら、負けないにしても、戦いがさらに伸びてしまう。
大鷲もご飯を食べるのかな?飢え死にしてくれれば助かるんだけど。
あるいは仕切り直しをして、クロスボウの改良やバリスタみたいな大型兵器を考えても良いかもしれない。
大鷲を倒さなければ次の階へ進むための門も開かない。
何十回目の攻撃か、大鷲が急降下してくる。
兵士が矢を射る。
そろそろ残りの矢の数を気にしなければいけないとか、考えていた瞬間。
急降下してきた大鷲が体勢を崩した。
チャンス!とばかりにトンネルに隠れた冒険者が槍を持って躍り出る!
矢も無くなって、焦っていたのかもしれない。
大鷲の姿勢は大きく崩れて地面スレスレまで墜ちてきている。冒険者は大きく槍を振りかぶって、そのまま振り抜く!
大鷲は器用に身を捻って槍を避けると、岩の大地を一蹴りしたついでに冒険者をその鋭い爪で引っかける。
冒険者は槍を振り抜いた態勢のままで、逃げられない。
このままでは、彼が大鷲にやられてしまう。
--------------------------------------------------
次回:さらわれた『冒険者』




