実験
--実験--
あらすじ:気圧の説明難しい。
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最初に用意したのは腕の長さほどのガラスの注射器。
先端の針のある部分は指の太さくらいの筒状にしていて、シリンダーにはシリコンゴムを付けて有る。これで圧力のコントロールをするわけね。
次に大きなボウルくらいの漏斗を用意した。口元はやはり指先くらいにしてある。
他には、ガラスの注射器と漏斗の先の口に合うような栓をシリコンゴムで作って、その間を繋げる管を用意する。
あとは、ガラスのお皿とガラスの団扇。
全部、クリスタルの魔法で作ってある。勇者の魔法は便利だね。
部屋に戻ると侍女さんが暖炉に火が起こしてくれていた。
「では、まず風を送って火を強くしてみましょう。」
ガラスの団扇を使って王子様を扇ぐ。
「寒いぞ!俺に風を送る必要は有るのか?」
「これで風が送られてる状態と言うのを体感するためですよ。」
いや、嘘だけどね。やってみたかっただけ。
ついでに他の人も扇ぐ。
「なるほど、風がきますね。魔法的な力を感じませんね。」
おお、ご子息様は意味の無い行為を説明してくれている。
次に机の上に板を敷いてガラスの皿を置き、暖炉から炭を取り出してお皿の上に載せる。
「この炭に風を送ると火が強くなります。」
ヘランちゃんに団扇を渡して炭を扇いでもらう。
「へえ、確かに赤く燃える部分が広がるわね。」
侍女の人や鍛冶屋さんでも似たような事をやっているはずだから、やらなくても知っているかと思っていたんだけど、意外と知らないものだね。
皆が試している間に次の用意をする事にする。大きな漏斗と注射器をシリコンゴムの栓と管で繋げる。
「それじゃ次に、ヘランちゃん、この瓶の底に手を入れて見て。」
底の空いた瓶の下に手を入れて貰い注射器のシリンダーを一気に押し込む。
「わあ、風が出るんですね。」
「そそ、じゃあ、この瓶を炭に被せて風を送ったらどうなるか解るわね。」
「火が強くなるのね。」
「試して見ましょう。時間が立つと火が消えてしまうので早めにね。」
ヘランちゃんに注射器を持たせて瓶を炭に被せる。ヘランちゃんが注射器のシリンダーを押し込むと火が強くなるのが見える。
「じゃあ、次はシリンダーを引っ張って見て。」
1度瓶を上げて被せ直してからヘランちゃんにシリンダーを引くように教える。
火が弱くなる。
「ふーむ。シリンダーを押し込んだ時が空気が濃い状態で、シリンダーを引いた時が空気が薄い状態なのだな。」
「そう言う事よ。ついでにもう1つ実験をするわ。ちょっと手を貸して。」
注射器からゴム栓を外すと王子様の手にあてがう。そして、シリンダーを引っ張った。
「イテテテテ!痛い。」
「良く見て。腕の皮膚が引っ張られているのが見えるでしょ?」
「ん、ああ、解った。解ったから離してくれ。」
王子様は涙目で懇願する。
「つまり、この皮膚の状態が耳の中でも起こって居るのよ。」
「ああ、痛いほど良く解ったぞ!痛かった。」
「今はかなり空気が薄い状況を作ったからね。24階はもっと空気が濃いハズよ。」
「ああ、解った。」
まだ涙目で、手をさすっている王子様はの代わりのように、ご子息様が尋ねてきた。
「対策は有るのですか?」
「耳が痛くなるのは耳抜きと言う方法で何とかなるわ。あとは耳栓も使えるかもしれないけど、音が聞こえないのも問題かもね。でも、1番の問題は空気の薄さね。高山病という病気を引き起こすかも知れないの。」
「高山病?高い山でも同じ事が起こるのですか?」
「地面から離れれば離れるほど空気は薄くなるわ。私の居た世界では高い山に登る時の注意としても空気の薄さと高山病の事を学ぶわ。それでも今回みたいな急激な気圧の変化はあまり無いわ。」
飛行機に乗ったときくらいかしら?と言う言葉は飲み込んでおく。
飛行機を造れとか言われたら面倒じゃん。
「高山病と言う病なら治癒や浄化の魔法で治るのではないですか?」
この世界では怪我も病気も大体は魔法で治る。汚れだろうが毒だろうがバイ菌だろうがウィルスだろうが浄化されてしまうのだ。
「たぶん無理ね。原因は空気が薄い事よ、他の病とは違って足りない事が原因よ。病状の緩和は出来るかも知れないけど、それも止めた方が良いわ。」
病状が出るのは危険信号を伝えるためだ。下手に緩和すると悪化する。
「対策としては2つあるのよ。1つは体を少しずつ慣らして行く方法。もう1つは空気の入ったボンベを持っていく方法。」
「慣れるものなのか?」
「一応はね。そう言われているわ。でも、戦えるほどになるか解らないの。山登りする位は平気だろうけど、全力での激しい運動が出来るかどうかね。」
「となると、ボンベとやらを作るしか無いのか。」
「慣らすにしても少しずつ山を登って何日もかけて慣らして行くのよ。24階みたいに、いきなり気圧が変わると慣らすのは難しいと思うわ。逆にボンベは風の魔法で軽量化できると思うから現実的かもね。」
テレビで何日もかけて慣らしていた、それでも高山病にかかっていたりする。
「じゃあ、ボンベを作ってくれ。」
「だよね。そうなるよね。少し時間がかかると思う。あ、でも耳抜きは必須スキルになるから練習して置いてね。」
元の世界なら一言で終わる説明が終わった。長かった。
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次回:『ボンベ』を作ろう。




