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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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謝罪

--謝罪--


あらすじ:23階の攻略は気が付いたら終わっていた。

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「だから、謝っているだろう。いい加減に機嫌を治せ。」


23階の階段の守護者は大きな()だったよ。大きな羽の毒の鱗粉を撒き散らし、強風であおって、とてもとても手強かったらしい。


緑の羽が綺麗で玉虫のような虹色の光沢が有った。死んでも黒く光る眼は宝石のようだった。


得意げな王子様が自慢していたし、昨日、死骸も5階の村の広場に届けられていたので知っている。


というか、死骸を見て23階の攻略が終わったことを知ったんだけど。


この蛾の退治も砂壁の魔道具と浄化の魔法で切り抜けたらしい。もう、私なんか要らないんじゃないかな。


私の開発室で奥様とヘランちゃんが見守る中、王子様とご子息様が必死に謝っている。


「最近は夜ばかり攻略させていたから、おまえに連絡するタイミングが無かっただけだって。」


23階は巨大なシダの葉が(しげ)っていて林になっていた。その林を抜けると、大きなスライムの湖があって、湖沿いに歩くと湖面を緑の毒霧が舞う、それはそれは幻想的な光景が観れたらしい。


けど、ここを夜に攻略する意味がない。暗いだけじゃない。道を間違えたらスライムの湖にドボンだよ。


22階は砂嵐の止む夜に攻略するのは解るんだけど。


「おまえも見てきたんだろう?」


ええ、ヘランちゃんと一緒に観光してきましたわ。ポクリポクリとオラシオンが歩く度に舞いあがる緑の毒霧。マスクが無ければ死ぬ世界。風の谷を思い出すフレーズの世界を堪能(たんのう)してきました。


本当はミル君と行きたかったけど、12歳という年齢制限を特例として許されている彼を連れていけなかった。そのうちデートに行きたい。


でも、見てきた事と、攻略に参加できなかったのは別の話。


一緒にダンジョンを攻略する喜び。与えられた疎外感。それに怒りを感じているんだ。


「えへへ、アマネ様。また、デートしましょうね。」


ヘランちゃんの甘い笑顔。そう、ヘランちゃんの温もり。


タンデムシートにしたオラシオンの私の後ろに乗って、恐る恐る、けどしっかりと私に抱きついて来て押し付けられる2つの膨らみ。


柔らかい温もり。


って、違う!百合の花は咲かないし、咲かせない!


「解ったわよ。いいわ。今回は許すわ。」


かれこれ1時間ほど謝ってくれたんだ。そろそろ許してあげよう。一応は王子様だし。


そして、次の攻略に行き詰って泣きついてきたのが原因だったとしても。


「おお、ありがたい。で、早速だが、24階の怪異なんだが、解ったのか?」


切り替えが早いな。まだ反省が足りなかったのかも知れない。


24階の怪異。


24階に着いたとたんに耳鳴りがして頭が痛くなり、吐き気を(もよお)す。人によっては気絶してしまう。


24階から降りて23階に戻ると症状はよくなって、治癒の魔法も効き始める。


けど、24階に入れないので完全に攻略班の足が止まってしまった。


攻略班に死人が出ているワケでもないので23階の散策のついでに私も24階を試しに覗いてきた。


24階に出る扉をくぐる時に透明な膜があるような違和感があって、通り抜けると強烈に耳が痛くなった。ただ、身に覚えのある痛さだった。


「気圧の差ね。たぶん。」


耳抜きしたら良くなったし、松明の火が小さくなったりしたし、間違い無いと思う。


「気圧とはなんですの?」


いざ説明するとなると、何と言っていいのか迷う。


「んー説明するとなると難しいわね。前の世界と同じと仮定して大雑把に話すわね。今、私たちが空気を吸っているのはわかるかしら?」


私の前置きに王子様、ご子息様、ヘランちゃんそれに奥様の4人は(うなづ)く。


よかった、空気から説明するのは骨が折れそうだ。


「この空気の濃さを気圧と呼ぶの。」


4人が一斉に首を傾げる。


「紅茶に砂糖を入れると甘くなるわ。紅茶に砂糖をもっと沢山入れるわね。もっと甘くなるわ。その時、紅茶に入れた砂糖が濃いって言うでしょ?」


「つまり、砂糖が空気と言うわけだな。」


「そう、砂糖の量が増えれば砂糖が濃いと言えるわ。空気の量が増えれば空気が濃いと言えるわ。人間にはある程度の濃さが必要になるの。逆に薄いと息がしにくくなる。空気が少なくなっているんだからね。」


目の前に置いてあるティーセットを見て濃さの説明を思いついたので、すこし違うと思うけど。


「しかし、息苦しくなる前に耳が痛くなったぞ。空気が薄いと言うこととは違うのではないか?口に入るもので耳が痛くなるのはおかしくないか?」


「あくまで分かりやすそうなもので例えただけ。それに、すぐに呼吸に問題が出るほど薄くなかったんじゃないかな。それか、耳の痛さで気にしていられなかったのか。でも、実際に松明の火が小さくなっていたから空気自体は薄いはずよ。」


「松明の火が関係有るのか?」


「火が燃えるためにも空気が必要なのよ。火を起こす時に風を送ったりするでしょう?火に空気を送って薪が燃えやすくするために。」


「となると空気が薄くなるとなぜ耳が痛くなるのだ?」


「耳の中には鼓膜(こまく)と言う膜があって、その膜の外側と内側の空気の圧力、濃さが違ってしまうと、濃い方は押すように働いて、膜は薄い方に押し出されてしまうの。その分耳が痛くなるのよ。」


また、4人そろって首を傾ける。


私も上手く説明できている自信が無いし、ヘランちゃんなんかは火と空気の関係のあたりから目が死んでいる。


私も上手く説明できる自信がない。



「判りました。実験しましょう。」



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次回:『実験』うまく出来るかな?



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