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武器屋の勇者様 ~ 祝福を受けたハズの女子高生の空回り奮闘記  作者: 61
5章:王子様の道具 ~勇者にならないために~
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22階

--22階--


あらすじ:村おこし会議をした。

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10日後、攻略班が22階にたどり着いた。


怪我やアクシデントは有ったけど順調だね。多少の怪我は治癒の魔法で治ってしまう。


吹雪で動けない間は5階の村に戻って雪ウサギでバーベキュー大会をしたりして楽しんでたし。


最大の敵だった大猿も、初めて死骸(しがい)がダンジョンの外に運ばれて、領主様をはじめ大勢の街の人が見学にきて大変だった。


今までは荷物になるから皮だけしか見れなかったのよね。


だから、2日くらい攻略を止めてお祭り騒ぎだった。


砂嵐対策?


バーベキューの準備や大猿騒ぎで手一杯だったよ。それに新しいアイディアなんてそうポンポン生まれて来ないわよ。


とは言えどうにかしなければならない。


攻略班が10階~20階を進んでいる間にいくつか王子様たちと考えてる。基本的には吹雪と同じだけど。


風を避けるための砂壁の魔道具に、夜営の時のための砂のシェルターの魔道具。


21階のカマクラみたいに、レンガをたくさん焼いて拠点を作る準備もしてある。


窯を建ててレンガを焼いたのだけど、今では5階の村の新しい家造りのために使われている。


木のログハウスばかりだった村が、レンガ造りの家にバージョンアップされているのよね。


砂塵対策のマスクとしては、21階の吹雪対策と同じペストマスクみたいなのを使うつもりだ。


これでも埃っぽかったら、空気を取り入れるクチバシの所に布やコットンを詰めて見る予定だ。



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転移の魔法陣を通り抜けると、22階は激しい砂嵐が吹き荒れていた。


砂嵐は緩急(かんきゅう)は有るけれど、止むこともなく吹き続ける。


教えてくれた冒険者は、何の装備も持っていなくて21階に長く居る事が出来なかったらしい。だから、もしかして止む時間があるかもしれないけど。


オラシオンのバリアから素手を出して見ると、とっても痛い。痛いで済むだけマシなのかも知れない。


吹雪の時と同じようにマスクの性能を試してみる。今度は前よりも長い時間をかける。


すぐに解るような傷はつかなかったので、ホッとする。



「よーし、砂壁を作ってみるぞー!」


冒険者の1人が叫ぶ。


長い塀のような砂の壁を作り、進む方向に何枚も延ばして行く作戦だ。


魔道具の数が足りないのでずっと繋げていけないから、後ろから順に回収してまた一番前を伸ばしていく。


「モンスターの反応は無いぞ。大丈夫だ、やってくれ!」


懐中電灯型の探査の魔道具で周囲を確認していた隊長さんが声を上げる。


最初の1枚がオラシオンのバリアの前に立てられる。心配していた、風に(あお)られて砂壁が倒れることはなかった。


「よーし。次、出てみるぞ。」


革で固めた服装をした冒険者が、命綱を付けて砂壁の影に飛んで入る。壁が有るにも関わらずバサバサと革の服がはためき散らす。


「風下にも壁を建ててくれ!」


砂嵐の中の冒険者が体を縮こまらせて絞り出すような声でなんどか叫ぶ。


マスクと砂嵐で冒険者が大声を出しても聞き取りにくい。


「これでどうだ!?」


兵士の人が3人くらいが通れる幅で、2枚目の壁を建てる。


「大分楽になった。ありがとう。」


冒険者は、そのまま壁叩いたり蹴ったりして安全を試してから戻って来た。


「どうだった?」


王子様が感想を聞く。


「出来れば屋根も欲しいですね。直接砂が当たらなくても風が巻いて入って来るので息苦しいです。」


「こんな感じにトンネル型にすれば良いですよね?」


砂地に絵を描きながら意見を言ってみる。


「それだと、繋ぎ目の部分が弱そうだな、外に壁を作るか。」


「後ろ側も蓋をすれば風が入らなくて良さそうですが。」


「作業性が悪いだろ、風が巻かないくらいトンネルを長くしてしまえば良いんじゃないかね。」


「そうなると明かりが欲しいですね。けっこう暑いので松明よりも下の階で使った照明の魔道具が使いたい。」


「服の中で風の魔法を使ってたんですよね?」


扇風機の付いた作業着のように、熱中症にならないように服の下で風を起こすように提案していた。


「ああ、ありゃダメだ。服がかさ張って余計に風に(あお)られちまう。」


トントン拍子に悪い点が挙げられ、同じスピードで改善案が出てくる。


「それじゃ、アマネにはトンネルの魔道具を開発してもらって、その間は22階の観測だな。嵐の途切れ目が有れば言うことは無いが、出てくるモンスターを出来るだけ発見して習性をつかんでもらいたい。」


王子様も兵士も冒険者も、そして私も、最近はこのダンジョン攻略を楽しんでいる。


ちなみに、砂嵐観測班の皆様からのお土産は虫型モンスターだった。


王子様が嬉々としてサソリ型のモンスターを持ってきてくれた。



食べないってば!



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大きなサソリ型のモンスターをお土産に貰ってから攻略はかなり進んだ。


硬い皮からそぎ落としたお肉は硬くて美味しくなかった。


だから、蟻型のモンスターとか蟻地獄型のモンスターとか、百足型のモンスターとか、お土産はもういいです。


夜間に砂嵐が止む時間を見つけたらしく一気に進み、苦労しながらも上の階への階段を護る大きなサンドワームを倒してしまった。


砂の止む夜の間に砂壁を地面に敷いて戦ったらしく、いつの間にか5階の村の広場に巨大なイモムシが横たわっていた。


(たお)してから掘り起こすのに3日かかったらしい。


さて、とうとう23階だ。


見てきた冒険者の話だと緑の毒の霧に包まれていて、マスクと浄化の魔法が無ければ危なかったと言っていた。


逆に言えば、マスクと浄化の魔法だけで先に進めた。進んでしまった。


3日もあったのに、私のダンジョン23階は1歩も足を踏み入れることなく終わった。



相談くらいしなさいよ!



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次回:のけ者にしたんだから当たり前よね『謝罪』



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